法螺ぁぁな女 9「あの頃」の中田青渚、西田尚美、そして松浦亜弥

 

コワ過ぎる昨今の日本映画を「9本」紹介することで完結!!

なんで2021年度劇場公開の「あの頃」で自分で勝手に決めつけ2000年以降の日本のホラー映画選を最後にしたいと思います。他にもオーディション [Blu-ray]とか十三人の刺客<Blu-ray>通常版とか候補があったんですが、「オーディション」はつい最近ではレンタルでも一切見つからなかったし、DVDも買えない鑑賞不可能だった状況、もう一本はリメイクの時代劇で昭和東映版の十三人の刺客 [DVD]もエグさが凄いですから諦めました。ついでに言うと9本にしたかったのは苦痛の9本という意味合いで決してベスト9というわけではなく敢えて言えばDEATH/です9と呼びたいぐらい、それにおそらく「あの頃」のスタッフはこの映画が代表作っていわれるとかなり嫌がる方々がいそうなんで、まあぁ、いいかなって。

10年ぐらい経っただけでは・・・

いまだ当事者たちにはいろんな面で気持ちの整理がつかないんでは、という気が映画終了後にしました。先ずオープニングの主人公つるぎみきと(松坂桃李)が所属するバンド演奏シーンとBGMに流れる「サルビアの花」の歌声の自信がありそうにもないのにどこか暢気な感じが忘れられないし。原作は2014年に出版されたコミックエッセイですが映画のつるぎみきとさんのモデルはあくまでもプロのベーシストできっとご自身で歌っているのでは?(少なくとも松坂桃李さんのボーカルには聞こえませんでしたが違ってたらゴメンナサイ)。つるぎ氏の実話をエッセイストの犬山紙子さんの夫さまが漫画にしたと思われます。で、映画ストーリー紹介しますと、主人公のつるぎはバンドのドラムがリズム感ゼロなのにベースの腕が良すぎてリードボーカルに嫌われてバンドをクビになってしまいます。バンドは駄目だしアテにしていた大学院の試験にも落ち、卒業後の進路のめどがまったく立たなくて凹んでいた矢先、大学友人の佐伯(木口健太)が「つるぎが好きそうだと思って」と渡された松浦亜弥のCDに度はまりし近所のCDショップで松浦亜弥のCDや関連グッツを探し回っていただけで、CD店員のナカウチ(芹澤興人)に誘われ、あれよあれよいう間に大阪の阿倍野で伝説ともいえるハロプロファンサークルの一員になってしまったのです。ここまでの件が私にはまったくもって謎としか思えないイージーさなのですが、面白い遊びを見つけてしまった青年もしくはおっさん達の勢いと楽しみ方がもの凄い・・ホントに大阪って訳分からないって感心してしまいました。つるぎのファンサークル加入に際にやたら絡んできたのが中核メンバーのコズミン(仲野太賀)なのですが、彼がもう一人の主人公であり、物語後半における悲劇のヒーローでもあるのです。

日本の若者にとってのファムファタール(宿命の女)がいっぱい

日本映画の男性の主人公にはファムファタールにあたる女性という存在は昔から稀少なのですが、疾風のように登場してつるぎやコズミン達の運命を激変させる女性が数人登場します、とはいってもロマンチックな恋愛要素がない・・のが諸行無常感を呼び、私にはドラマチックで面白かったです。近年恋愛青春映画の旗手として注目されている今泉力哉監督の映画だと思うと複雑な気持ちに陥るファンは多いとは思いますがっ。

まず一人目の女性はハロプロサークルの中でただ一人彼女持ちのイトウ(コカドケンタロウ)と一緒にサークルに顔を出す靖子(中田青渚)。イトウから靖子さんを取り上げようとする謎のストーカーに追われるようになった段階で段々と楽しいアイドルサークル活動に影が差しやがてサークル崩壊のきっかけになるのでした。その経緯が語られるのもコワいですが、出演キャストの中では40代と思われるコカドさんが圧倒的にサークル内でも小僧然としていて10代の中田さんを連れていても情けない学生カップル振りがとにかく板に付いて自然なのに驚きました。ストーカーに靖子さんを諦めてもらうのにコズミンは奔走するのですが同時に「靖子はイトウではなく自分とつき合うべき」と主張するなど、些か図々しい・・・でもそのコズミンの姿が痛々しく変化する終盤近くには震えます。私仲野太賀さんは淵に立つで始めて存在を知ったせいか、かなりとんでもないエゴ丸出しの腹黒い演技でも、シニア層が「今どきの若者にしては珍しい何か感心なところがある」て思いそうな日本の古風な兄ちゃんらしさが、やっぱり強いなって気がしました。だから彼が貫く「青春時代は恋愛に賭けるモノだっ」な姿勢が打ち砕かれていく様は辛いかもしれません。先行する日本の青春映画では キッズ・リターン [Blu-ray]を思い出しますが、コズミンを巡る女性たちは皆優しいのに彼を救うことだけは誰にも出来ないのが哀しいですね。

片やつるぎの方はというと、大学の後輩(片山友希)に軽く失恋するぐらいですが、それにしても松浦亜弥の存在を知り彼女の握手会で本人に会っただけで黄金の記憶として舞い上がってしまうつるぎのような青年の場合だと異性にときめいても偉大な先達アーチストとして賞賛と羨望を強く感じ過ぎるタイプなのでした。おまけに音楽の仲間内ならまだともかく松浦亜弥のコンサートで偶然一緒になった高校教師の馬場(西田尚美)とアイドル談義をしているだけで、勇気もらっちゃった俺も頑張ろうってハッピーになるぐらい頭の中はどこか音楽中心、やりたい事中心です。一日知り合っただけの女性に運命を少しだけ変えてもらって独り感謝する・・・どうも日本の男性にとってのファムファタールって薄くても良い気がしてしょうがないんですが、駄目なのかしらん。

21世紀にもなった大阪で行われたアイドルファンの若人たちの「講」

そおぉ・・なんですよ、ディープな日本文化に興味のある皆さん。私は当時の参加者大喜びで大阪の阿倍野で楽しく開催されていたという事実に心を打たれ驚きを覚えてしまいます。メンバーのロビ(山中宗)や西野(若葉竜也)らも含め彼らにとっては昔はよくTVでやっていた内輪のプライバシー暴露のバラエティーやら若者向けのラジオ番組の公開放送の物まねに近い、ショボいかもしれないけど楽しいから良いじゃんな催しものだった筈なのですが・・・私自身も大手メディアがこの手のコンテンツ制作がら手を引いた後、このような現象が2000年代に起きたということに考えさせられました。この映画自体が日本の2000年代のカルチャー現象に関してかなり貴重な証言に今後なっていくと思います。「あの頃」のような映画は日本映画でもっと必要になって製作しなくちゃいけなくなるのは間違いない筈。