トンデモ悪女伝説11 「TAR」のケイト・ブランシェット

 

芸術の為なら何でもやっちゃう女に明日はあるのか

まず映画冒頭の主人公リディア・ター(ケイト・ブランシェット)に観客が感じる第一印象の中にはいくら何でもやり過ぎでしょ50超えたぐらいの人で自己研鑽の為にここまでヤル人いるの?てのがあると考えます。映画全体がまるっきりヨーロッパの映画のようですがところどころでハリウッド映画特有の無茶とご都合主義一歩手前の楽観主義に溢れているのが痛快っちゃ痛快な気がしましたが、それにしても、ね。ついでに云うと私は映画冒頭のターに傲慢さは感じませんでした。真摯で芸術大好き熱心なあまりお節介なくらい親切な女じゃん。(私の感覚がおかしいのでしょうか、でも学生時代の同級生でもコレくらいの娘いましたけど)私自身が彼女に対してちょっとアレだな感じたのを敢えてあげると、同業の指揮者であるカプラン(マーク・エストロン)に対してあっさりと自分のアイディアを打ち明けてマウントを取る行為かな。男女限らずかなりいけ好かない優等生のやり方ですが、女性だから本当に男に媚びているようにも喧嘩を売っているようにも見えて不安になります。音楽大学の授業のシーンや彼女の講演の長いシーンを尊大な女と感じる人達は「芸術、創造に於ける正義とは」な問題をずっと真面目に考えている人間をよく知らないのではないでしょうか。ちょっと前の映画のセッション [Blu-ray]に登場する鬼教授は芸術における正義が暴走しているキャラクターですが、彼と比べてもリディア・ターは人格者と言って良い。

 

リディア・ターに罠を仕掛けるのは陳腐な奴ら・・・だからこそ恐ろしい

映画冒頭のシーンからターにストーキングをする若い女性のグループのメール描写がありそれで一見彼女がモラハラ常習の権力者だという印象が観客に強烈に焼き付けられるのですが、じゃあそんなターに執着する若い女性グループは何者?若手のクラシック奏者達か?いいえ彼女らはそんな人達ではありませんあくまでも「謎めいた烏合の衆」です。ターの自宅があるベルリンに戻ると、家内でターのスコアが盗まれたり自宅のメトロロームがイタズラされたり謎の騒音が仕掛けられたりしてターの精神状態が徐々に追い込まれていきます。この辺の描写は私自身が2022年までに結婚指輪を含めて宝飾品が盗まれたり戻ってきたり私や息子の郵便物と銀行通帳と洋服の数々が盗まれたりしたのを思い出して身につまされましたから自然に理解できました。最近では経済目的で空き巣に入るのではなくヘイト行為に近いという傾向が世界的に広がっているのでしょうか。「ター」で登場する若い女性達は指揮者志望でアシスタントのフランチェスカやロシア出身の新鋭チェロ奏者のオルガなどいますが、彼女らはどちらとも素直に音楽のキャリアを追求したい人間でターの事も出来れば尊敬したいと思っていた。それでも彼女らはストーカー集団が仕掛けるスキャンダル工作に巻き込まれるのを恐れてターからは結局離れていくのでした。いくらターがカミングアウトしたレズビアンでも若い女性達のロールモデルにはなれるとターも女弟子達の双方も信じていたのに・・・この辺は働いて社会的地位を向上させたい女性達にはホラーめいて映るかもしれません。

 

それでもターは負けない、より芸術の高みを目指すだけ

演奏家や指揮者によっての音楽の違いや個性を見いだすマニアックなクラシック音楽ファンは「次に登場する天才はどんな人物でどんな人生を歩むことだろう」という想像にふけるのが楽しみなのでしょうか。監督トッド・フィールドが考え抜いたが考える最強の指揮者みたいなのが映画のヒロインのリディア・ター。おかげで気弱な日本の青年が「ター」を鑑賞してもターが美男子なのか美女なのか区別が付かず、映画のラストのターの姿にショックを受けやしないかと心配になるくらい。ターがベルリンの交響楽団の常任指揮者から外されて、抗議の殴り込みに行くシーンは騎士の決闘のようでカッコいい。そこに転落する驕慢な女性の姿を私は感じませんでした。

 

それよりも私が行く末を心配になってしまった登場人物はターのパートナー関係をスキャンダルによって終にしたベルリン楽団員のヴァイオリニスト、シャロン(ニーナ・ボス)の方です。シャロンもまた超絶技巧の脚本の中で綿密に設定された女のなのですが最初の登場段階から酷い更年期状態で娘の世話もあまりきちんと出来ていない様子なのに娘のことは放任主義。ターの方が娘と一緒に居る時間があまり無くとも娘の学校生活の様子を気にしていじめっ子の同級生をやっつけようとする。ターは家族の中で父親と母親の両方の役割を担おうとしています・・・何故そんなことが可能なのか?それは言い換えるとシャロンがより完全な意味で母性を獲得する機会をターが横取りした結果なのですが、シャロンは自分の安定したヴァイオリニスト奏者のキャリアと音楽性を手に入れる為にあっさりとターに譲ってしまい、気にもしていないのです。またトッド・フィールドはシャロンがターと別れても「きっと巧くいくだろ彼女は〇〇だけじゃないもんね」と軽くシーンで表現してしまうので、私はちょっとその点には頭を抱えてしまいました。ターは最終的により音楽家として深化していく為にもうレズビアンに戻ることはないだろうし高齢初産のリスクもないので家庭婦人としての顔を持ってもさほど苦労はしなそうです。対してシャロンは今後男性との結婚を了承しないと駄目で次の女性パートナーも許されず、キャリアの上昇や安定も下手すると娘の養育権も取られてしまう可能性がありそうです。やっぱり男性の映画監督なので「俺の正義の中では駄目な女」にはかなり厳しいみたい。特に米国の映画監督は厳しいかな。今回ブログ内容を考えているウチについサスペリア [Blu-ray]と比べてしまいましたが、男性のヒーロー願望の限界と悲しみを描いた「サスペリア」と違って「ター」はあくまでもヒーロー道一直線です。ケイト・ブランシェット様とティルダ・スウィントン様がよく似ているから偶々思い出した・・・だけではないと思ってます(笑)。

 

 

2022年に観た新作映画 5

 

最後に面白かった日本映画を語るよ

日本映画の表現の幅を広げる為に奮闘している映画です、そこが2022年公開の他の日本映画と比べても突出していました。だから観客受けも良くヒットして「何だか解らないけど面白い」という映画評を集めた作品。主人公のライター(稲垣吾郎)が冒頭から喫茶店で時折水の入ったガラスのコップを日の光ですかして眺める・・・といういかにも文学青年ぽさが抜けきれない行動を繰り返すシーンが登場しますが、お洒落表現としてやっているわけではありません、むしろ主人公のそして映画製作者の苦闘に表現だったりします。ストーリーとしてはウンザリするところが多々アリ、特に不倫をする主人公の親友が全く現役アスリートに見えないなどの不満もありなのですが、最後に登場人物の一人が「不倫なんてクソだな」と発言するのでスッキリしました。主人公は1度だけ短編集の小説を出版したきり小説家としての筆は折ってしまい、そこが編集者の妻(中村ゆり)との確執や男女のすれ違いを生んでいるというのが映画のキモです。妻に愛人がいても怒らない夫・・・というのも夫自身の思い込みに過ぎないというのも表現されてますので安心してください。しかしながら日本映画で都市生活者の生活を軽妙に描くのがかくもこんなに難しいのかという事に思いをはせるとため息しかでないです。

 

宮沢りえさんの代表作になることは必至で、窪田正孝さんにとっても映画賞取ったのはこの映画の演技も対象になったかも。政策秘書窪田正孝)の役割とか彼自身の矜持とかを理解できると映画の中の代議士事務所の在り方や秘書達(小市漫太郎、内田滋、草川直弥ら)の行動パターンも解ってきます。惜しむらくは唯一の女性秘書(内田滋)が世襲の候補者川島有美(宮沢りえ)に対して同性なのに同情がやや足りない様子な事、内田さんの演技も良かったので惜しい。その方がリアリティがより増したかもしれません。

 

気の毒なことに観客の手応えを感じた一般試写会のせいで都心部の映画館では興行時間がレイトショー中心にされちゃいました。かなり構成もまとまっており野球を知っている人も知らない人も楽しめる作品、野球をやっている米国の人でも充分鑑賞に耐えられると思います。部活動ゆえに丸刈りされてしまう若者たちの姿は理不尽でexoticなのかもしれませんが、同年代の学生の中でも最も運動能力の高い連中が野球部のみに集い野球というゲームの枠内でのみシノギを削る姿はGlobalに狂気を感じるからです・・・そして全力で青春をかけてしまう高校生が大好きな日本人の感性(元ロッテの里崎さんみたいな人、映画に特別出演しています)も感じられる映画でした。

 

「甲子園に花束を」と同様に本屋大賞を取った原作小説がかなり優れており、想像した以上に映画向きのストーリーだったんだなと感心しました。水墨画というかなり地味で観念的な映像表現になりそうな素材だと観る前に想ってたんですが、横浜流星三浦友和江口洋介、清原伽耶、といった面々がそれぞれ水墨画にのめり込んでいる姿は全く浮き上がらず、芸術をモチーフにした映画として成功してました。むしろ家族をいっぺんに無くしてしまった主人公の悲しみの方向性がリアル過ぎるが故に皆の想像の先を行っている為なのか映画スタッフが飲み込み咀嚼していくのにとても苦労した脚色の感じがしました、それが惜しいです。主人公の青年が家族の死に向かい合う中で年少の妹の死に一層のショックを受ける姿やまるで我が身に起こった出来事ごとくパニクりトンチンカンな支援をし続ける親友(細田佳央太)も自然な感情の発露だと先ず踏まえてストレートに芝居を作っていけばさらに爽やかな映画になったと想いました。

 

2022年に劇場で観た映画 4

 

ドリームプラン [Blu-ray]

2022年に観た映画だってのが忘れてしまうぐらいに

劇場で鑑賞する際にも鑑賞直後にアカデミー賞発表がありウィル・スミスは見事アカデミー賞主演男優賞取ったのに一悶着でなんか外野の映画ファンの私らまで疲れてしまいました。映画企画製作段階からそんなに色々あってウィル・スミスはイライラしていたのでしょうかって勘ぐってしまったぐらいです。日本では公開スクリーン数が少なくて探すのに苦労しました。どうもウィリアム姉妹の父親である主人公(ウィル・スミス)の鬼コーチぶりが一般試写会で不評だったのでは。でも劇場には多くの女性、それも既婚女性が沢山観に来ていました。2022年の初夏から夏にかけて日本の映画ファンに人気だった英国映画のボイリング・ポイント/沸騰 [Blu-Ray]で、単館ロングランで沢山の人が口コミで観に来ていました。日本人の大好きなレストランが舞台のグルメものでビジネスもの。映画序盤に意地悪な公務員のレストラン衛生チェック(コロナ渦まっただ中だからさ)の描写や猛烈型の主任シェフ(スティーヴン・グレアム)の休憩中の行動が奇っ怪でした、おそらくウィスキーのビンに薄いミルクティーを入れてがぶ飲みしていると思われるのですが・・・何だか終盤にはほ乳瓶のように見えてきました。

パリ13区 R-18版(字幕版)

パリ13区 R-18版(字幕版)

  • ルーシー・チャン
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カンヌパルムドールかグランプリが悩んだけど

DVDを挙げるのはコッチ↑にしました。グランプリのTITANE/チタン [Blu-ray]は鳴り物いりで始まったロードショーが2週間で全国的に打ち切りに。驚きましたが、数ヶ月後で早稲田松竹名画座で観られただけでも東京の人々にはラッキーだった。ヒロイン役の(アガト・ルセル)は熱演でしたが、ホントに痛々しくも愚かすぎる人物像なんで観ていて頭が痛くなりそう。彼女と激突する消防署長のヴィンセント(ヴァンサン・ランドン)の行動も頑固といおうか男としての心身のプライドを賭けた狂気がすさまじく女性は体力的には男性に叶わない分、聞き入れてもらえない我が儘があるんだと理解できない今どき若い女の馬鹿さ加減に震撼した映画でした、ほぼ内容はそれだけの映画なんですが、懇切丁寧にその旨説明するだけで強烈かつ難解になるんですよ、やんなっちゃうくらい。対する「パリ13区」は何だか暢気で楽天的な映画かも。パリへやってきたボルドー出身のノラ(ノエミ・メルラン)とボルドーに残った彼氏よりも台湾移民のエミリー(ルーシー・チャン)やアフリカ系のカミラ(マキタ・サンバ)たちの方が自分達の出身コミュニティのアイデンティティより新しいフランスの融合に苦労しないで適応しているということ、それがノラの身に起きた悲劇の大元であり彼女は周囲のパリの人々の力を借りて何とか心の傷を治していく過程を映画は描いています。でもさすがに心の傷だけじゃ済まなくて彼ら彼女は最後ひっくり返っちゃうんですが。ボイリング・ポイント/沸騰(字幕版)と「TITANE」と「パリ13区」はコロナ渦以降の映画として医学的に啓蒙したいような共通点がありましたので続けて3作の映画観られてのはラッキーでした。

 

マイク・ミルズ監督では以前に20 センチュリー・ウーマン(字幕版)を観た事があるのですが、今回はA24スタジオが製作だったからなのかいわゆる「繊細な人々が集うホームドラマ」には全く思えず、主人公(ホアキン・フェニックス)の妹で甥ジェシー(ウディ・ノーマン)の母がカリフォル二アの年代ものの住宅が気に入ってしまった挙げ句何故だか家族中がポルターガイストの被害に遭ってしまっているのに気がつかない様子なのが私自身にはコワかったです。そんな母親の状態を「急に精神的に極度の不安定要素を抱えた夫と夫婦の問題に敏感に反応して苦悩している息子を支えて理性的に耐えている賢明な女性」とゆう感想を持つ人を不思議に思います・・・(そんなような映画評のコメントをどっかで聞いたもので)でも、そんな呪いに立ち向かう為に全米を縦断してガッツで乗り越えようとする伯父と甥のコンビの姿を描いた映画のラストは爽やかで二人とも頑張ってって思いました。

↑は今年(2023年の夏)に来日コンサートがあるのですが、チケット取って観に行きたいんですけど、案の定ネットの先行予約は全く機能しません。もしも行けたら後日は発表します。(2023年7月14日現在チケット予約には成功しましたがチケット発券に失敗しました。PCで発券事項を確認後にハッカーが侵入したようでiPhone画面からのバーゴード決済以外は無理になってしまい事実上受け取りが困難になってしまい、チケット受け取りの権利を消失したようです。)思いの外スパークスブラザースは日本通で日本のサブカルファン、カリフォルニアの竜の落とし子と同じくらい池上遼一画伯のファンだということが映画でも伝わってきました。

 

 


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↑の映画は性的マイノリティにかこつけた10代カップルのデート映画だろ💢と憤慨する方、特に男性が多いかもしれませんがその手のノン気男性こそほっとする部分が終盤在りますので映画のストーリーやラストに拘らず観て欲しい青春映画でした。

 

2022年に劇場で観た映画 3

 

映画公開が延びて良かったかもしれない

映画制作中にコロナ渦が始まり劇場公開が延期されたためなのかあまり公開前の宣伝が活発でなくて功を奏したのか、平穏無事にファンが映画館に集まりリピート鑑賞も可能だった気がしました。他の日本映画ではこの後一般試写会で盛り上がったのにその結果が都心部ではレイトショー興行だけとかとんでもない現象が起こりましたし。SFなんでヒステリックにウルサイ映画観客にとっては内容に突っ込むところが一見無さそうなんですけどこれより少し前に公開された「大怪獣のあとしまつ」なんてのは私観たかったんですが見損なってしまいおまけに各酷評がすごくて引いてしまい未だに鑑賞できません。6月に観たバブル (集英社文庫)も映画館にはネトフリで観て気に入ったらしい若い女の子たちが数組いて、アニメが特に好きでもない女性たちこそ気に入り、アニメファンにも高評価を得られそうなSFファンタジーだったのにネットの評判が悪くて残念でした。

 

 

一部のファンが熱狂し、都内では再上映しました。大ヒットの「RED」と同様にアニメでライブを観たいという衝動が映画観客の間に起きたのが2022年の特筆すべきトレンドです。実在するアーティストのにライブ映画を観たい私としてはどうしてもその点が解せなくて「RED」も夫と息子の二人で観に行ってもらったぐらい。「犬王」は物語に残酷性があり人間の深い業によって最後の最後に悲劇が起きます。でもアーティスト同士、またお前と一緒にやりたいんだよねでさらっと終わる。これでストンと若い観客を納得させる構成は素晴らしいと思いました。そして「バブル」や「犬王」のあとに、

 

ナニも考えずにゲラゲラ笑いながら楽しんだのが↑のミニオンズ。Mr.グルーというキャラクターのおっさんが今イチ理解できなくて今までミニオンズのシリーズ観た事なかったんですが、今回はグルーのちびっ子時代のエピソードということでミニオンズって奴らが何のために何のカリカチュアライズなのかが一発で分かったので一切の屈託や疑問にも囚われることがなく阿呆で脱線するミニオンズにもイライラしなくなって良かったです。私は劇場でミニオンズは字幕版を観ましたがSING/シング:ネクストステージ (吹替版)は吹き替え版で鑑賞しました。何と言ってもB`Zの稲葉浩志やBiSHのアイナ・ジ・エンドといった豪華な日本のミュージシャンが声優にチャレンジしていて楽しかったです。特にアイナさんは歌以外にも今後いろいろやってもらいたい期待大です。

 

渡辺直美城田優にむかって「ハーフぽい顔立ちがたまらないエスパニョール」という台詞があり、SNSでは一部の観客が内輪ウケの酷いギャグでしかも差別的だと怒っていました。でも「新解釈」による三国志なんで呂布城田優)はイベリア半島からやってきた男、もしくはその子孫にあたる大男という設定なんですね。馬もイベリア半島からの大型のサラブレッドに乗って闘う豪傑。(なんで一騎打ちのシーンもあります)他にも中国なのになんか全体的に人口少なめな雰囲気が在る感じとか。「三国志」よりもシリアスなキングダム2 遥かなる大地へ ブルーレイ&DVDセット(通常版) [Blu-ray]とともにより最新の歴史解釈に基づいて2本の映画は製作されているようです。「キングダム2」の戦闘シーンは派手な所もありますが大筋は史書に書いてある通りにそして合理的に描かれているのでかなり腑に落ちました。

 

2022年におけるハリウッド一番の話題作で日本でも大ヒットしたのが↑の映画。未見の方、特に海外スターのゴシップにも興味がある人にこそお奨めしたい、次世代のハリウッドを担う面々がなんとまぁぁ・・・てな事実にも唸ります。(でも最近の日本の芸能界だって〇世スターが驚くほど多いみたいよ)他にもシリーズがひとつの大団円を迎えたジュラシック・ワールド/新たなる支配者(吹替版)は家族で観にいきました。DCコミックのTHE BATMAN-ザ・バットマン-(字幕版)は濃厚なギャングモノの雰囲気を醸しだしつつも、バットマンがいつになくフレンドリーな対応でゴッサムシティの市民と向き合うシーンになんだか感動がっ。で、息子がどうしても観たがったのがファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密 ブルーレイ&DVDセット (2枚組) [Blu-ray]のシリーズ。そういえば第一作のファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅 4K ULTRA HD&2D ブルーレイセット (2枚組) [Blu-ray]の映画の公開は2016年で息子と私の母と三人で観に行ったことを思い出すと少し哀しくなります。映画鑑賞にはそういう記憶も大事だわね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2022年に劇場で観た映画 2

 

いろいろトラブってしまった2022年の公開映画たち

まずはウチの息子と一緒に観に行ってトラブった時の話です。↑の作品もミュージカルだし何よりS・スピルバーグによる名作映画のリメイクなので観るしかないって感じで近所のシネコンに行ったんですが、映画終了後に息子はある若い女性から「座席から手を挙げて見入っていたので迷惑だ」などの注意をされてしまいました・・・そんな時は母親の私から女性へ平謝りするのが常なのですが、彼女はソレもさせてくれずに息子に言いっ放しで出て行ってしまったので、少し頭にきました。私からすると珍しくこの映画鑑賞中の息子は手に汗を握ってる風で大人しかったんですけどぉ。映画の中身は前作よりも男性主人公のエピソードが中心でハッピーエンドを示唆している箇所があり、悲恋の映画を期待していた息子に文句言った若い女性にとってはその部分が不満だったみたいですね。

 

そして映画の出来不出来にあれこれ云うのがためらわれる程、製作過程でどろどろしたトラブルがあったんではと外野にいる私にまで伝わってきたのが↑の作品。映画終盤近くになっての酷すぎる転調により「非モテの勘違い男役」を演らされているのんさんの姿が哀れでなりませんでした。映画冒頭の「男でも女でも云々」の文章がありましたが、若い女優が男子高校生やさかなくんを演じるなんて陳腐で子供っぽいアイデアは許さないという人々の乱入によって映画が目茶苦茶にされてしまっているのです。おまけに私劇場公開期間にはSNSでこの映画の脚本家で劇作家の方がセクハラをしたという噂が流れているのまで読んじゃったので、脅迫がすさまじいと思いました・・・でも主人公さかなくんの高校時代からTV出演までの間を頑張って削除して編集し直して・・・と心から願います。主演の男女二人の顔合わせを楽しみ観に来たシニアの観客層、特にご夫婦にとっては気の毒な鑑賞体験だっただろうと思われたのがちょっと思い出しただけ コレクターズ・エディション(2枚組)【Blu-ray】。しかしながら今の若い人達の恋愛事情については(問題の焦点についてはかなり外している感じですが)正確に詳細に描いているのでお話自体にはなるほどねって気がしました。夜の歌舞伎町を走るタクシー運転手であるヒロイン(伊藤沙莉)とキャバクラのホステスの会話シーンは偏見に満ちた噴飯もので、確かに新宿でロードショー不可になったの配給映画会社の英断だとは思った、程度の映画ではあります。

 

 

UFOマニアには「やったね良く出来ました♡」映画

なので、その手のマニア以外には何なんだよ何をやりたいんだよコレ、映画の何処にも活劇が全く無いわ・・・という憤りはごもっとも作品でございます。よくUFOに襲われたと称する方々の証言で「宇宙人に宇宙船に連れ去られて体内分子ごと分解され私の躰が宇宙人によって再構成されてしまった・・・後に自宅に戻された」などという不可思議な内容の話をよく聞きますが、その手のエピソードを忠実になおかつ娯楽的に映画化したんだと私は考えています。だからTVのUFO番組によくある「お約束のシーン」が映画的にバージョンアップされ妙にサスペンスを盛り上げる思わせぶり的なひっかけエピソードがいくつか出てきて嬉しくなってしまいました。そして突如現れたUFOに対峙するキャラクター達(ダニエル・カルーヤ、キキ・パーマー、スティーヴン・ユァン、マイケル・ウィンスコット等)にはそれぞれ素朴なアメリカンスピリットみたいなものを感じてしまう私でした。だって米国でも公開NO1ヒットになったんでしょう?それに引き替えアムステルダム ブルーレイ+DVDセット [Blu-ray]は00年代、2010年代、2020年代にわたりビルボードのトップを制した歌手である特別出演のテイラー・スィフトを二回も車で轢くシーンだけが凄かったです。それでもテイラーのおかげなのかかなり長い間東京都心ではロードショーしておりました。

 

KAPPEI/カッペイ」は夫がシネコンで看板を観て「コレ観に行きたい」と云うので家族で観に行きました。その前に私が予告篇で観た時は「ちょっと観に行ってもいいかなあ」と感じたのでよかったんですが、ウチの家族の映画の趣味はやや下品なのが少し気になります。それにしても2022年は山本耕史さんが絶好調だった気がしてます。何と言ってもお奨めポイントはソコです。もちろん他のキャストも主演の伊藤英明さんを始めみなさん当たり役でした。

 

2022年に劇場で観た映画 1

 

年明けから波乱に満ちた映画鑑賞の日々とサンダーバード劇場版

年始にレトロお洒落&ギーク(日本で云うところのマニアックなオタク趣味)な映画で和もうという目論見で観に出かけたのですが、新宿のピカデリーに行ったら何処のスクリーンで上映しているのかがあんまりよく解らず、最上階でやっと見つかり席に着こうとしたら自分の席に先客の男性が座っていて驚きました。サラリーマン風の男性は隣のスクリーンで興行していた松本潤クンの「99.9%」が真剣に観たかったみたいで、座席間違えた事に真っ青になって飛び出して行きました。2022年の東京都心の映画館興行では不可思議な事が多くて年末にも小説 すずめの戸締まり (角川文庫)の映画は日比谷や銀座の映画館でロードショーしていなかったり池袋でも3スクリーンもやっていたのに分かりずらくて観客には大変だったのでは。「サンダーバード」、映画内容は楽しかったのですが(TV放送時の1960年代当時の使われなかったエピソードを映画版にしたはずなのに)同時期に勃発したウクライナ内戦の舞台がそのまんまサンダーバードに登場していたので振り返ると些か気まずいものがあります。手に汗握るドキュメンタリーの「レスキュー奇蹟を起こした者たち」(ディズニー+で今配信中)やら年末から話題だったハウス・オブ・グッチ [Blu-ray]は見応え充分でした・・・それにしてもフィクションノンフィクションを問わず情報の読解力を問われる事が増えてなかなか大変だなと思います。その点ではドキュメンタリーの国境の夜想曲(字幕版)とほぼ実話を元にした映画も変わらない。「ハウスオブグッチ」なんかは映画のラストで、あの当時のゴシップは総て茶番だぜそんなにGUCCIが中東の金持ちになんかに乗っ取られるわけないってバラすんですがぁ・・・多分多くの観客は気がついていないってばっ。

 

↑の映画も情報の読解力こそが映画に感動できるかできないかのポイントになります。その点ミュージカルという形式は歌やダンスで主人公以下各登場人物の感情の琴線に触れるので何となく伝わる観客が多いでしょう、それでも内面的でアメリカの若者の力強さと根気強さが解る映画。息子と一緒に観に行きました。

 

それから「マトリックス」シリーズのあのネオとトリニティもっ!!・・・何故彼らが「すれ違いする運命の恋人達」になっちゃったのかは謎、といおうか驚愕でしたがっ。根気強い人々にとっては赤い糸で結ばれた相手は空から振ってくるんだよ!ジブリでもハリウッドでもひょっとしら現実でもって気になったよ映画終わったら。ブレット・トレイン ブルーレイ&DVDセット [Blu-ray]の登場人物もブラッド・ピッドを始めみんなタフだし性格みんなしつこいしね、さすが。

 

根気強い女性達の映画ももちろんありましたが、主に2022年はヨーロッパの映画で観る事がありました。日本だとアニメの竜とそばかすの姫に登場する四国の女性達が地に足がついていた描写が魅力的だったのでファンタジーの要素が浮かずに親しみ易かったのですが。↓の映画では主演のレスリー・マンヴィルイザベル・ユペールが、

 

↓ではフランスのベテラン女優のナタリー・バイが貫禄と辛抱強さを映画の中で見せてくれます。特に「オートクチュール」の女性監督は物語の演出はキビキビとしていて職人気質の人間の表情をじっくりと描いてくれるのですが、どう考えても監督さんは長年ドラマではなくファッションショーの映像とかイメージフィルムを制作してきたベテランのマダムでは?偶々corona渦だったからファッション業界の為に一般映画を撮っただけという気がしてならず、「どうしよう面白いんだけど後もう1本か2本おんなじようなフランス映画観たいですって云ったらこの女性監督はキレて怒りそう」だと思いながら観ていました。

 

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  • ナタリー・バイ
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「ミセス・ハリス、パリへ行く」はエピソードが原作もあってか、総花的ではありますが実際にあった実話のヒロインたち数人がミセス・ハリスのモデルの元にはなっていると思われます。だから映画の最後の次にも主人公ハリスにきっとシンデレラ物語があるという暗示が示されていると直感しました。この映画に限らず21世紀の映画は必然性のある成功譚をきっちり描いていくようになると思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドキュメント野郎 8「国境の夜想曲」

 

2022年度公開では私的なベストワン

コロナ渦が極まった2022年は劇場公開映画の環境が非常に劣悪で異常な圧力がかかっていた一年でありました。この映画を鑑賞しようとした日もあまりにもヘンテコな事が劇場でも予告編でも頻発し、却って映画内容の衝撃度が高いんだと改めて認識したくらいです。「芸術的で美しい映像のドキュメンタリー」という感想もありましたが。実際はかなりジャーナリスティックで日本人には思いもつかないような中東の内情が、細かい説明のなく次から次へと提示されます。それらをつい推理したくなりますが、私が思うに中東に生きる男性達の人生はホントに厳しいものがあるわって気がしてなりません。

冒頭の「日本の女性なら激怒しそうな」長閑な新婚夫婦の姿

どこの国なのかは不明ですが、石畳が立派な古都といった町並みに若い夫婦が住んでいて夫が夜の街を太鼓を叩き歌を歌いながら家路をたどるというエピソードから映画は始まります。夫が歌う歌詞には「妻となる女が結婚してくれとウルサイから」などという古風なそしてなおかつきわめてアジア的な箇所がありますが、ソレを唄いながら若くて可愛い新妻が待つ居間へたどり着く夫は心から嬉しそう。でも私を含め日本人の女性からすると「この人達いつまでもこんな認識が当たり前で良いのか大丈夫なのか」って気がしてしょうがないし、実際にもそんな長閑な人生があっという間に壊れてしまうのが現代の中東には至る所に起きるであろう・・・というシーンに変わっていくのでした。

草原の鳥追いの少年と中東のどこかにある精神病院の男達

映画のポスターにもなった少年はだだっ広い荒野の街道に一人立ち尽くし、やってきたジープに乗り込んでいくシーンから登場します。数々のエピソードから少年の身の上や生活がぽつぽつ語られていく。少年の住む場所はおそらく紅海の湾岸エリアで、女性達は港に集まって仕事をし(ただし全員が黒いチャドル姿です)少年の家には母親らしき世話役の女性と少年よりも年下の子供が生活していますが少年や子供達の父親はおろか成人男性の姿が一切登場しません。二回目に少年がジープに乗せられたどり着くのがホントにアラビア半島に実在するのかと思うような緑の大草原で、猟師の男性が打ち落とした鳥を走って取ってくるのが少年の仕事、に驚きです。それにしても古風に見え、あまりにも物寂しくみえる美しいシーンに裏に「少年に日常生活で対峙する成年の男性がこの猟師の男だけだったら」という事実があったらちょっと心が辛くなってしまいますね、なんか不穏で心配。

大草原の鳥追い少年のエピソードと交差するように続くのは精神病院に入院している三人の老境にさしかかっている男達。精神科医は彼らに自作のシナリオに基づいた演劇を練習するように指導します、そしておっかなびっくりそうに台本を読み込み芝居にうちこもうとする男達。病院はオアシスにある豪華な邸宅風のロビーなども存在し三人組の他には患者も存在しなさそう、彼らは一見して手厚い治療を受けていそうなのですが、病室にあるテレビで流される「イラクとクェートの戦争映像」には三人とも皆落ち着かず常にパニックを起こしている。日本人の我々には全くさっぱり理解できないのですが三人の男達の身の上がもし「クェートで捕虜になったイラクフセイン政権の軍幹部とか政権幹部」だったらひょっとするとこんな感じなのかもしれません。今更湾岸戦争についての戦後処理をやりたくて旧フセイン政権を担った人間に興味を持つのも、クェートの人々しかいないだろうし。それにしても彼らに姿が哀れなのは過去に怯えるとか罪の意識にさいなまれるというのはなく、男性としてのアイデンティティを何処に求めたら良いのかが解らない流民としてなのです。

クルドの娘たちとシリアの老婆に甘える娘

男達とは対象的にひたすらにキビキビと、そして抜け目ない姿で登場するのは中東の若い女性たちです。クルドの女性部隊は皆で受けた訓練の内容をひたすらに反芻し軍務の準備にはげみ「私たちは出来る」とそれぞれに自らを鼓舞していきます。そして皆若くわりと小柄な乙女達といった風情。それでも夜間に作戦を実行していく彼女たちはホントにプロフェッショナルな兵士。映画は彼女らが特に何かをする事を映し出すわけではありませんが、若い女性たちはこうして屈託なく、より自分が自由にそして自分らしく在るための環境へ適応していくのだなあ・・・自分が生まれ育った土地への思いにもケリを付けていくのかしらんと感嘆してしまいました。そんなクルドの女性部隊に感心しているとシーンはいきなりぶった切られて、内戦でがれきの町並みのなかにひっそりと生活している老婆の元に若い娘の電話が掛かってきます。娘は一方的に話しまくり金銭の無心をするのですが映画では彼女のくどくどとした言い分が荒れきったシリアの惨状の光景と被さって描かれるので、ウンザリした気持ちになり、その娘の電話を携帯で機器ながら哀しそうな表情で切る老婆の姿にホント可哀想、て思いました。文明が発達したおかげで無事を祈っている大事な人の消息がかなり残酷に解ってしまう時代に私たちは生きているのだという気がします。

アイデンティティが瓦解していくのになすすべが無い

他にもイラク少数民族のヤジティの子供達が保護されて精神的外傷を治療していくプログラムの様子などが登場します。衝撃的だったのは子供達が自分達の住む村が襲撃された時の事を絵にしていくのですが、当然のごとく残虐であると同時に襲ってきたISの部隊の連中は仲間割れが酷くて、部隊内のリンチの様子を村人に見せつけて脅す様子でした。子供達(男の子だけ)は皆「女の人を酷い目に遭わせてつり下げる、引きずり回す」と云い絵に描いて泣き出すのです。しかし同じような絵を描いても女の字達はそのようなヒステリックな反応も、悲惨な目にあう女性の姿も絵に描いている様子がないのです。ISの部隊がどのような方法でヤジティの人々を攻撃したのかが解りませんが。か弱い者=女という図式に則って、例えば人形を女性に見立てて残酷な姿で脅しつけたとすると、小さな男の子達は怯え女の子達は次第に白けて冷静になっていくのやもしれません。クルドの女性部隊の冷静さがどうやって自然と成し遂げられたのかという理由にもなると思いました。文明の発達は国境を越えてソレ以前から地域内で形成されていた文化的なアイデンティティを徐々に瓦解していく様を映画全体を通して見せつけられるようでした。

最後にこの映画を映画館で観た日の事ですが、上映前にコーヒーを買って席に着き座席がかなり空いていたので私も含めて館内で数人がマスクを取って予告篇を観ていたのですが、館内が妙に明るくなたかと思うと館内の職員が一人一人に「マスクをしてください」と注意にやってきました。東京の映画館では2022年の年明けから「予告篇が開始又は終了するまで飲食は禁止」だのの注意が始まり、マスクを外してほっとしたい映画鑑賞客を罰したい人々が映画館に注文するようになったみたいです。私の近所の郊外シネコンでは家族連れの反応がコワくて出来なかったらしく、わりあいマスク外しても鑑賞が可能でしたが都心部は年間を通し、そして現在でも映画鑑賞にマスク着用の細かい規制があります。「国境の夜想曲」ではそれだけでは終わらず映画開始直前に「映画上映中の飲食は禁止」というあり得ない表示が劇場で流され、一瞬頭に来て映画観ずに館内を飛び出し返金してもらおうかしらと思ったくらいです。おそらく私と同様に考えて怒って映画を観ずに帰った人やそれを狙ってワザと流したんだと思います。IS活動家はIT技術もあるし国際的に繋がって映画を観たい普通の人々に嫌がらせしようとするの可能だろうな、て気が強くしました。