2022年劇場で観た映画 3

 

映画公開が延びて良かったかもしれない

映画制作中にコロナ渦が始まり劇場公開が延期されたためなのかあまり公開前の宣伝が活発でなくて功を奏したのか、平穏無事にファンが映画館に集まりリピート鑑賞も可能だった気がしました。他の日本映画ではこの後一般試写会で盛り上がったのにその結果が都心部ではレイトショー興行だけとかとんでもない現象が起こりましたし。SFなんでヒステリックにウルサイ映画観客にとっては内容に突っ込むところが一見無さそうなんですけどこれより少し前に公開された「大怪獣のあとしまつ」なんてのは私観たかったんですが見損なってしまいおまけに各酷評がすごくて引いてしまい未だに鑑賞できません。6月に観たバブル (集英社文庫)も映画館にはネトフリで観て気に入ったらしい若い女の子たちが数組いて、アニメが特に好きでもない女性たちこそ気に入り、アニメファンにも高評価を得られそうなSFファンタジーだったのにネットの評判が悪くて残念でした。

 

 

一部のファンが熱狂し、都内では再上映しました。大ヒットの「RED」と同様にアニメでライブを観たいという衝動が映画観客の間に起きたのが2022年の特筆すべきトレンドです。実在するアーティストのにライブ映画を観たい私としてはどうしてもその点が解せなくて「RED」も夫と息子の二人で観に行ってもらったぐらい。「犬王」は物語に残酷性があり人間の深い業によって最後の最後に悲劇が起きます。でもアーティスト同士、またお前と一緒にやりたいんだよねでさらっと終わる。これでストンと若い観客を納得させる構成は素晴らしいと思いました。そして「バブル」や「犬王」のあとに、

 

ナニも考えずにゲラゲラ笑いながら楽しんだのが↑のミニオンズ。Mr.グルーというキャラクターのおっさんが今イチ理解できなくて今までミニオンズのシリーズ観た事なかったんですが、今回はグルーのちびっ子時代のエピソードということでミニオンズって奴らが何のために何のカリカチュアライズなのかが一発で分かったので一切の屈託や疑問にも囚われることがなく阿呆で脱線するミニオンズにもイライラしなくなって良かったです。私は劇場でミニオンズは字幕版を観ましたがSING/シング:ネクストステージ (吹替版)は吹き替え版で鑑賞しました。何と言ってもB`Zの稲葉浩志やBiSHのアイナ・ジ・エンドといった豪華な日本のミュージシャンが声優にチャレンジしていて楽しかったです。特にアイナさんは歌以外にも今後いろいろやってもらいたい期待大です。

 

渡辺直美城田優にむかって「ハーフぽい顔立ちがたまらないエスパニョール」という台詞があり、SNSでは一部の観客が内輪ウケの酷いギャグでしかも差別的だと怒っていました。でも「新解釈」による三国志なんで呂布城田優)はイベリア半島からやってきた男、もしくはその子孫にあたる大男という設定なんですね。馬もイベリア半島からの大型のサラブレッドに乗って闘う豪傑。(なんで一騎打ちのシーンもあります)他にも中国なのになんか全体的に人口少なめな雰囲気が在る感じとか。「三国志」よりもシリアスなキングダム2 遥かなる大地へ ブルーレイ&DVDセット(通常版) [Blu-ray]とともにより最新の歴史解釈に基づいて2本の映画は製作されているようです。「キングダム2」の戦闘シーンは派手な所もありますが大筋は史書に書いてある通りにそして合理的に描かれているのでかなり腑に落ちました。

 

2022年におけるハリウッド一番の話題作で日本でも大ヒットしたのが↑の映画。未見の方、特に海外スターのゴシップにも興味がある人にこそお奨めしたい、次世代のハリウッドを担う面々がなんとまぁぁ・・・てな事実にも唸ります。(でも最近の日本の芸能界だって〇世スターが驚くほど多いみたいよ)他にもシリーズがひとつの大団円を迎えたジュラシック・ワールド/新たなる支配者(吹替版)は家族で観にいきました。DCコミックのTHE BATMAN-ザ・バットマン-(字幕版)は濃厚なギャングモノの雰囲気を醸しだしつつも、バットマンがいつになくフレンドリーな対応でゴッサムシティの市民と向き合うシーンになんだか感動がっ。で、息子がどうしても観たがったのがファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密 ブルーレイ&DVDセット (2枚組) [Blu-ray]のシリーズ。そういえば第一作のファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅 4K ULTRA HD&2D ブルーレイセット (2枚組) [Blu-ray]の映画の公開は2016年で息子と私の母と三人で観に行ったことを思い出すと少し哀しくなります。映画鑑賞にはそういう記憶も大事だわね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2022年に劇場で観た映画 2

 

いろいろトラブってしまった2022年の公開映画たち

まずはウチの息子と一緒に観に行ってトラブった時の話です。↑の作品もミュージカルだし何よりS・スピルバーグによる名作映画のリメイクなので観るしかないって感じで近所のシネコンに行ったんですが、映画終了後に息子はある若い女性から「座席から手を挙げて見入っていたので迷惑だ」などの注意をされてしまいました・・・そんな時は母親の私から女性へ平謝りするのが常なのですが、彼女はソレもさせてくれずに息子に言いっ放しで出て行ってしまったので、少し頭にきました。私からすると珍しくこの映画鑑賞中の息子は手に汗を握ってる風で大人しかったんですけどぉ。映画の中身は前作よりも男性主人公のエピソードが中心でハッピーエンドを示唆している箇所があり、悲恋の映画を期待していた息子に文句言った若い女性にとってはその部分が不満だったみたいですね。

 

そして映画の出来不出来にあれこれ云うのがためらわれる程、製作過程でどろどろしたトラブルがあったんではと外野にいる私にまで伝わってきたのが↑の作品。映画終盤近くになっての酷すぎる転調により「非モテの勘違い男役」を演らされているのんさんの姿が哀れでなりませんでした。映画冒頭の「男でも女でも云々」の文章がありましたが、若い女優が男子高校生やさかなくんを演じるなんて陳腐で子供っぽいアイデアは許さないという人々の乱入によって映画が目茶苦茶にされてしまっているのです。おまけに私劇場公開期間にはSNSでこの映画の脚本家で劇作家の方がセクハラをしたという噂が流れているのまで読んじゃったので、脅迫がすさまじいと思いました・・・でも主人公さかなくんの高校時代からTV出演までの間を頑張って削除して編集し直して・・・と心から願います。主演の男女二人の顔合わせを楽しみ観に来たシニアの観客層、特にご夫婦にとっては気の毒な鑑賞体験だっただろうと思われたのがちょっと思い出しただけ コレクターズ・エディション(2枚組)【Blu-ray】。しかしながら今の若い人達の恋愛事情については(問題の焦点についてはかなり外している感じですが)正確に詳細に描いているのでお話自体にはなるほどねって気がしました。夜の歌舞伎町を走るタクシー運転手であるヒロイン(伊藤沙莉)とキャバクラのホステスの会話シーンは偏見に満ちた噴飯もので、確かに新宿でロードショー不可になったの配給映画会社の英断だとは思った、程度の映画ではあります。

 

 

UFOマニアには「やったね良く出来ました♡」映画

なので、その手のマニア以外には何なんだよ何をやりたいんだよコレ、映画の何処にも活劇が全く無いわ・・・という憤りはごもっとも作品でございます。よくUFOに襲われたと称する方々の証言で「宇宙人に宇宙船に連れ去られて体内分子ごと分解され私の躰が宇宙人によって再構成されてしまった・・・後に自宅に戻された」などという不可思議な内容の話をよく聞きますが、その手のエピソードを忠実になおかつ娯楽的に映画化したんだと私は考えています。だからTVのUFO番組によくある「お約束のシーン」が映画的にバージョンアップされ妙にサスペンスを盛り上げる思わせぶり的なひっかけエピソードがいくつか出てきて嬉しくなってしまいました。そして突如現れたUFOに対峙するキャラクター達(ダニエル・カルーヤ、キキ・パーマー、スティーヴン・ユァン、マイケル・ウィンスコット等)にはそれぞれ素朴なアメリカンスピリットみたいなものを感じてしまう私でした。だって米国でも公開NO1ヒットになったんでしょう?それに引き替えアムステルダム ブルーレイ+DVDセット [Blu-ray]は00年代、2010年代、2020年代にわたりビルボードのトップを制した歌手である特別出演のテイラー・スィフトを二回も車で轢くシーンだけが凄かったです。それでもテイラーのおかげなのかかなり長い間東京都心ではロードショーしておりました。

 

KAPPEI/カッペイ」は夫がシネコンで看板を観て「コレ観に行きたい」と云うので家族で観に行きました。その前に私が予告篇で観た時は「ちょっと観に行ってもいいかなあ」と感じたのでよかったんですが、ウチの家族の映画の趣味はやや下品なのが少し気になります。それにしても2022年は山本耕史さんが絶好調だった気がしてます。何と言ってもお奨めポイントはソコです。もちろん他のキャストも主演の伊藤英明さんを始めみなさん当たり役でした。

 

2022年に劇場で観た映画 1

 

年明けから波乱に満ちた映画鑑賞の日々とサンダーバード劇場版

年始にレトロお洒落&ギーク(日本で云うところのマニアックなオタク趣味)な映画で和もうという目論見で観に出かけたのですが、新宿のピカデリーに行ったら何処のスクリーンで上映しているのかがあんまりよく解らず、最上階でやっと見つかり席に着こうとしたら自分の席に先客の男性が座っていて驚きました。サラリーマン風の男性は隣のスクリーンで興行していた松本潤クンの「99.9%」が真剣に観たかったみたいで、座席間違えた事に真っ青になって飛び出して行きました。2022年の東京都心の映画館興行では不可思議な事が多くて年末にも小説 すずめの戸締まり (角川文庫)の映画は日比谷や銀座の映画館でロードショーしていなかったり池袋でも3スクリーンもやっていたのに分かりずらくて観客には大変だったのでは。「サンダーバード」、映画内容は楽しかったのですが(TV放送時の1960年代当時の使われなかったエピソードを映画版にしたはずなのに)同時期に勃発したウクライナ内戦の舞台がそのまんまサンダーバードに登場していたので振り返ると些か気まずいものがあります。手に汗握るドキュメンタリーの「レスキュー奇蹟を起こした者たち」(ディズニー+で今配信中)やら年末から話題だったハウス・オブ・グッチ [Blu-ray]は見応え充分でした・・・それにしてもフィクションノンフィクションを問わず情報の読解力を問われる事が増えてなかなか大変だなと思います。その点ではドキュメンタリーの国境の夜想曲(字幕版)とほぼ実話を元にした映画も変わらない。「ハウスオブグッチ」なんかは映画のラストで、あの当時のゴシップは総て茶番だぜそんなにGUCCIが中東の金持ちになんかに乗っ取られるわけないってバラすんですがぁ・・・多分多くの観客は気がついていないってばっ。

 

↑の映画も情報の読解力こそが映画に感動できるかできないかのポイントになります。その点ミュージカルという形式は歌やダンスで主人公以下各登場人物の感情の琴線に触れるので何となく伝わる観客が多いでしょう、それでも内面的でアメリカの若者の力強さと根気強さが解る映画。息子と一緒に観に行きました。

 

それから「マトリックス」シリーズのあのネオとトリニティもっ!!・・・何故彼らが「すれ違いする運命の恋人達」になっちゃったのかは謎、といおうか驚愕でしたがっ。根気強い人々にとっては赤い糸で結ばれた相手は空から振ってくるんだよ!ジブリでもハリウッドでもひょっとしら現実でもって気になったよ映画終わったら。ブレット・トレイン ブルーレイ&DVDセット [Blu-ray]の登場人物もブラッド・ピッドを始めみんなタフだし性格みんなしつこいしね、さすが。

 

根気強い女性達の映画ももちろんありましたが、主に2022年はヨーロッパの映画で観る事がありました。日本だとアニメの竜とそばかすの姫に登場する四国の女性達が地に足がついていた描写が魅力的だったのでファンタジーの要素が浮かずに親しみ易かったのですが。↓の映画では主演のレスリー・マンヴィルイザベル・ユペールが、

 

↓ではフランスのベテラン女優のナタリー・バイが貫禄と辛抱強さを映画の中で見せてくれます。特に「オートクチュール」の女性監督は物語の演出はキビキビとしていて職人気質の人間の表情をじっくりと描いてくれるのですが、どう考えても監督さんは長年ドラマではなくファッションショーの映像とかイメージフィルムを制作してきたベテランのマダムでは?偶々corona渦だったからファッション業界の為に一般映画を撮っただけという気がしてならず、「どうしよう面白いんだけど後もう1本か2本おんなじようなフランス映画観たいですって云ったらこの女性監督はキレて怒りそう」だと思いながら観ていました。

 

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「ミセス・ハリス、パリへ行く」はエピソードが原作もあってか、総花的ではありますが実際にあった実話のヒロインたち数人がミセス・ハリスのモデルの元にはなっていると思われます。だから映画の最後の次にも主人公ハリスにきっとシンデレラ物語があるという暗示が示されていると直感しました。この映画に限らず21世紀の映画は必然性のある成功譚をきっちり描いていくようになると思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドキュメント野郎 8「国境の夜想曲」

 

2022年度公開では私的なベストワン

コロナ渦が極まった2022年は劇場公開映画の環境が非常に劣悪で異常な圧力がかかっていた一年でありました。この映画を鑑賞しようとした日もあまりにもヘンテコな事が劇場でも予告編でも頻発し、却って映画内容の衝撃度が高いんだと改めて認識したくらいです。「芸術的で美しい映像のドキュメンタリー」という感想もありましたが。実際はかなりジャーナリスティックで日本人には思いもつかないような中東の内情が、細かい説明のなく次から次へと提示されます。それらをつい推理したくなりますが、私が思うに中東に生きる男性達の人生はホントに厳しいものがあるわって気がしてなりません。

冒頭の「日本の女性なら激怒しそうな」長閑な新婚夫婦の姿

どこの国なのかは不明ですが、石畳が立派な古都といった町並みに若い夫婦が住んでいて夫が夜の街を太鼓を叩き歌を歌いながら家路をたどるというエピソードから映画は始まります。夫が歌う歌詞には「妻となる女が結婚してくれとウルサイから」などという古風なそしてなおかつきわめてアジア的な箇所がありますが、ソレを唄いながら若くて可愛い新妻が待つ居間へたどり着く夫は心から嬉しそう。でも私を含め日本人の女性からすると「この人達いつまでもこんな認識が当たり前で良いのか大丈夫なのか」って気がしてしょうがないし、実際にもそんな長閑な人生があっという間に壊れてしまうのが現代の中東には至る所に起きるであろう・・・というシーンに変わっていくのでした。

草原の鳥追いの少年と中東のどこかにある精神病院の男達

映画のポスターにもなった少年はだだっ広い荒野の街道に一人立ち尽くし、やってきたジープに乗り込んでいくシーンから登場します。数々のエピソードから少年の身の上や生活がぽつぽつ語られていく。少年の住む場所はおそらく紅海の湾岸エリアで、女性達は港に集まって仕事をし(ただし全員が黒いチャドル姿です)少年の家には母親らしき世話役の女性と少年よりも年下の子供が生活していますが少年や子供達の父親はおろか成人男性の姿が一切登場しません。二回目に少年がジープに乗せられたどり着くのがホントにアラビア半島に実在するのかと思うような緑の大草原で、猟師の男性が打ち落とした鳥を走って取ってくるのが少年の仕事、に驚きです。それにしても古風に見え、あまりにも物寂しくみえる美しいシーンに裏に「少年に日常生活で対峙する成年の男性がこの猟師の男だけだったら」という事実があったらちょっと心が辛くなってしまいますね、なんか不穏で心配。

大草原の鳥追い少年のエピソードと交差するように続くのは精神病院に入院している三人の老境にさしかかっている男達。精神科医は彼らに自作のシナリオに基づいた演劇を練習するように指導します、そしておっかなびっくりそうに台本を読み込み芝居にうちこもうとする男達。病院はオアシスにある豪華な邸宅風のロビーなども存在し三人組の他には患者も存在しなさそう、彼らは一見して手厚い治療を受けていそうなのですが、病室にあるテレビで流される「イラクとクェートの戦争映像」には三人とも皆落ち着かず常にパニックを起こしている。日本人の我々には全くさっぱり理解できないのですが三人の男達の身の上がもし「クェートで捕虜になったイラクフセイン政権の軍幹部とか政権幹部」だったらひょっとするとこんな感じなのかもしれません。今更湾岸戦争についての戦後処理をやりたくて旧フセイン政権を担った人間に興味を持つのも、クェートの人々しかいないだろうし。それにしても彼らに姿が哀れなのは過去に怯えるとか罪の意識にさいなまれるというのはなく、男性としてのアイデンティティを何処に求めたら良いのかが解らない流民としてなのです。

クルドの娘たちとシリアの老婆に甘える娘

男達とは対象的にひたすらにキビキビと、そして抜け目ない姿で登場するのは中東の若い女性たちです。クルドの女性部隊は皆で受けた訓練の内容をひたすらに反芻し軍務の準備にはげみ「私たちは出来る」とそれぞれに自らを鼓舞していきます。そして皆若くわりと小柄な乙女達といった風情。それでも夜間に作戦を実行していく彼女たちはホントにプロフェッショナルな兵士。映画は彼女らが特に何かをする事を映し出すわけではありませんが、若い女性たちはこうして屈託なく、より自分が自由にそして自分らしく在るための環境へ適応していくのだなあ・・・自分が生まれ育った土地への思いにもケリを付けていくのかしらんと感嘆してしまいました。そんなクルドの女性部隊に感心しているとシーンはいきなりぶった切られて、内戦でがれきの町並みのなかにひっそりと生活している老婆の元に若い娘の電話が掛かってきます。娘は一方的に話しまくり金銭の無心をするのですが映画では彼女のくどくどとした言い分が荒れきったシリアの惨状の光景と被さって描かれるので、ウンザリした気持ちになり、その娘の電話を携帯で機器ながら哀しそうな表情で切る老婆の姿にホント可哀想、て思いました。文明が発達したおかげで無事を祈っている大事な人の消息がかなり残酷に解ってしまう時代に私たちは生きているのだという気がします。

アイデンティティが瓦解していくのになすすべが無い

他にもイラク少数民族のヤジティの子供達が保護されて精神的外傷を治療していくプログラムの様子などが登場します。衝撃的だったのは子供達が自分達の住む村が襲撃された時の事を絵にしていくのですが、当然のごとく残虐であると同時に襲ってきたISの部隊の連中は仲間割れが酷くて、部隊内のリンチの様子を村人に見せつけて脅す様子でした。子供達(男の子だけ)は皆「女の人を酷い目に遭わせてつり下げる、引きずり回す」と云い絵に描いて泣き出すのです。しかし同じような絵を描いても女の字達はそのようなヒステリックな反応も、悲惨な目にあう女性の姿も絵に描いている様子がないのです。ISの部隊がどのような方法でヤジティの人々を攻撃したのかが解りませんが。か弱い者=女という図式に則って、例えば人形を女性に見立てて残酷な姿で脅しつけたとすると、小さな男の子達は怯え女の子達は次第に白けて冷静になっていくのやもしれません。クルドの女性部隊の冷静さがどうやって自然と成し遂げられたのかという理由にもなると思いました。文明の発達は国境を越えてソレ以前から地域内で形成されていた文化的なアイデンティティを徐々に瓦解していく様を映画全体を通して見せつけられるようでした。

最後にこの映画を映画館で観た日の事ですが、上映前にコーヒーを買って席に着き座席がかなり空いていたので私も含めて館内で数人がマスクを取って予告篇を観ていたのですが、館内が妙に明るくなたかと思うと館内の職員が一人一人に「マスクをしてください」と注意にやってきました。東京の映画館では2022年の年明けから「予告篇が開始又は終了するまで飲食は禁止」だのの注意が始まり、マスクを外してほっとしたい映画鑑賞客を罰したい人々が映画館に注文するようになったみたいです。私の近所の郊外シネコンでは家族連れの反応がコワくて出来なかったらしく、わりあいマスク外しても鑑賞が可能でしたが都心部は年間を通し、そして現在でも映画鑑賞にマスク着用の細かい規制があります。「国境の夜想曲」ではそれだけでは終わらず映画開始直前に「映画上映中の飲食は禁止」というあり得ない表示が劇場で流され、一瞬頭に来て映画観ずに館内を飛び出し返金してもらおうかしらと思ったくらいです。おそらく私と同様に考えて怒って映画を観ずに帰った人やそれを狙ってワザと流したんだと思います。IS活動家はIT技術もあるし国際的に繋がって映画を観たい普通の人々に嫌がらせしようとするの可能だろうな、て気が強くしました。

 

トンデモ悪女10伝説「ナイアガラ」のマリリン・モンロー

 

マリリン・モンローのブレイク作にして禍々しいまでに1950年代ハリウッドにおけるサスペンス映画の大傑作

そういうことなんだっ!!だからマリリン・モンローの「一見して男狂いの頭の悪い女みたいなんだけど何故だかみんな彼女を許す」というイメージはこの映画で確立したんだぜ。それにこの映画はマリリンだけじゃなくて、主要な演技陣がみなさん優秀でみなさん何かがヘン。先ず滝の前で独りぶつぶつ独り言をつぶやくオープニングから登場するルーミス(ジョセフ・コットン)の姿は今の日本人の映画マニアからみるとなんだか日活ロマンポルノの出だしみたい、て思うかも知れません。ルーミス夫妻(妻ローズはマリリン・モンロー)に対峙する新婚夫婦にしてヒロインのポリー(ジーン・ピータース)と夫レイ・カトラー(ケイシー・アダムス)はやたらとハキハキしてて、結婚後のびのびになっていた新婚旅行にはりきっている。映画開始後10分も経たずにルーミス夫妻は夫婦生活が昼夜共に破綻、片方のカトラー夫妻は既に新婚生活をスタートさせていて、妻は「アタシに魅力が無いみたい」とはっきり云うくらいですから、初夜のカップルではないよっ、という事実を強調しているのに気がつきます。そう、解る人はそこにこそ注目して映画最後までご覧になると良いかと思います。

 

ローズは13歳の頃からちょっと他人とは違っていた女の子

最早映画内容とは関係なく名シーンとして抜き出されているのが、湖畔のダンスパーティーの賑やかさに惹かれるようにローズがローズピンクのドレスを着て登場するシーンですね。ポリーは夫のレイに「君もああいうドレスにしてみたら」と云われて「ああいう格好するには13歳から準備していないと無理なのよ」と答えるのも印象的。ローズはダンスの曲に持参したお気に入りの「KISS」のレコードを渡して掛けてもらうのですが曲に怒り狂ったルーミスにレコードをへし折られてしまいます。この間のローズの表情のちょっとした変化がポイントで、ローズは何か意図があって巧みに芝居しているとしか思えない。でも何故彼女はブレない態度でルーミスを騙し続けられるのか、それも片方で若い男の愛人と逢瀬をしながら、ですよ。ルーミスはカトラー夫妻に自分のプロフィールをしゃべりまくるので却って「なんか悪いことしてきた男だからあんな暗いんじゃないの」な印象が観る方にもだんだん伝わってくる・・・エピソードの展開が何だか不穏だけど無理を感じないので「ナイアガラ」は実話を元にした映画で、当時の警察がハリウッドに映画製作依頼して出来上がったのは間違いないでしょう。そしてマリリン・モンローは10代の頃から教育映画に出演したり陸軍出身のマルクス兄弟の映画オーディションに受かったりしていた、そして孤児だった女の子。まさに「ナイアガラ」のローズの役にぴったり。ローズはおそらく20そこそこで自分の彼氏とタッグを組みルーミスを追って内偵していたFBI捜査官です。2年間も凶悪犯と結婚しても平気なのは、ルーミスみたいな反省のない凶悪犯は性的不能なのでセックスはどうせ出来ないからなんでぇす。なので、ルーミスにシャワーを浴びたあとに躰をバスタオルで余裕しゃくしゃくで拭かせたりする。そしてさらに凄いのは憂鬱そうなルーミスが突如ハイになり「何が欲しい?なんでも買ってやる」とふざけて(裸でベットに横たわる)でローズにせまり、それに対してひたすら「キャハハどうしたのぉ」と笑ってるだけの彼女、天井からのロングショットで控えめに撮られてるのですが、これだけ複雑で変態すれすれのシーンは滅多に観られません。ヒッチコック映画でもない。マリリン・モンローがいくらブロンドでもヒッチコックの映画に出演しなかったのは当然ですね。「ナイアガラ」以上のサスペンス映画のヒロインを提供するなんてヒッチコックでも至難の業。

あまりにも高いハイヒール(9センチはありそう)で歩くのは控えめにねっ

とは言えローズは映画のクライマックス前に映画からは姿を消してしまうのですが・・正直彼女は結局死んでしまったのかどうかも怪しいんで、よくよく観てね。ローズは恋人が死んでしまったのにショックを受けて気絶して寝ていましたが、ルーミスが挑発的に鳴らす鐘の音(KISSのメロディー)に怯えてナイアガラのキャンプ場から逃げだそうとします。彼女は自分が病院先から脱走したせいで警指命指命手配してしまい、客船にもタクシーにも乗れない羽目になるのですが、タクシードライバーに「カナダからUSA側に通行する列車の駅までどれぐらいの距離?」とマジで質問したりする、高いハイヒールの靴履いて「歩くわ」って云うんですよね。相当に無茶です、途中でルーミスに見つかって却って良かったじゃんて気がしてきたくらい。マリリン・モンローといえば謎の孤独死の最後も有名ですが、最近私自身が突然死する若い女の人をよく日常生活でみかけるので、日頃の健康状態に注意しないと女の人が一人の時危ないよ、マリリン・モンローみたいになるかもよって思うようになりました。それにしてもピンヒールは無茶して履かないでて思います。私は20代の頃、銀座で当時有名だったエッセイストでベストセラー作家のミス・ミナコ・サイトウ女史がボディコンシャスなピンクのスーツにピンヒールで歩いているのをみかけ後日「真冬の札幌の雪道でもピンヒールを履いて街を歩き廻った」という彼女のエッセイを読み驚いた事があるのですが、「ナイアガラ」でマリリン・モンローがやってみせたルーミスとのおっかけっこもはソレを超える驚異の身体能力の披露だったりするのですよ。そういえばミナコ・サイトウ女史も30代後半で早世しましたなあって「ナイアガラ」を鑑賞して思い出しました。皆さん華麗なハイヒールも良いですが、是非自動車移動を中心にして綺麗にはきこなしていただきたいっ。

ヤサグレ女列伝 13 「竜とそばかすの姫」の内藤鈴(中村佳穂)

2021年度の日本映画興行収入でもトップ取ったよ。

しかしそれにしても、公開中の2021年度には何となく観に行くのを忘れてしまい、やっとこさ先日、早稲田松竹でやっているのを見つけて観ることができました。併映のアニメが「アイの歌声を聴かせて」でそっちの映画の人気も高く劇場では「サイダーのように言葉が沸き上がる」と共に紹介が充実していて、「竜とそばかすの姫」の方が少しだけ。鑑賞終了後に何故だかパンフレットが欲しくなり購入を希望すると、かなり年配の女性の係さんが「パンフレット袋に入れますか?無料です」と幾度となく案内され立派なポリ袋に入れて貰いました・・・不思議な体験でした。そして私と同年齢の細田守監督のアニメ映画鑑賞初体験映画でした。米国のアニー賞受賞の「未来のミライ」さえ未だ全部鑑賞していません。(予告編が劇場で流れていた時期興味を持ったのですが日本のアニメファンの評価、特にストーリー展開の甘さを指摘する意見が多かったのが主な理由です。)細田守作品の評価では常に言われるストーリー展開の詰めの甘さっていう定評ですが今回の映画では映画全体の構成力や設定説明の大胆な省略細田さんの映画作家としての美点であり才能であると強く感じました。でないとカルト人気映画「サマーウォーズ」みたいなの誕生するわけがないわな。

 

仮想空間とプレーヤー自身の心の問題

ヒロインの内藤鈴(中村佳穂)が友人のヒロちゃん(幾田りら)に誘われるままに飛び込んだ仮想空間Uは世界で50億人が集い、皆それぞれAsというアバターを持つのですがUではプレーヤー自身の生体反応を登録するシステムというとんでもないもので、フェイスブックメタバースって本気でコレをやる気なのかいっ?て感じのものです。プレーヤー自身隠している或いは気がつかない個性や能力をひたすらに可視化するいう匿名は一切不可な世界。文章で書くと簡単ですがコレを映像としてはっきり魅せる、先ず鈴=BELLの歌声で圧倒するのは良いとしてもその先はなかなか続かない。なのでUの世界で暴れ回る謎のAsである竜(佐藤健)の登場と二人の対話のドラマが話の中心になり、鈴の成長が描かれるのです。ものすごく退屈な話のようで全く退屈でないのは、四国高知の四万十川の近くで生活する鈴の方は母親の死の悲しみと恐怖のあまりに記憶に重大な錯誤を抱えており、一方東京の高級住宅地に住む(品川あたりと推測)竜の方はというと最後まで彼の正体が明かされないのですが、おそらくは仮想空間Uの開発に加わっており配偶者もしくは恋人と別れたばかりの(私は死別ではないと推測)子供は未だ居ない成人男性という設定で、鈴と竜の二人の邂逅によりそれぞれの精神的外傷を癒やし回復していく過程をダイナミックに描いているからだと思われます。鈴より竜の抱える問題がヤバいのは竜はパートナーとの別れによって父親になり自分の親族の死に向き合った傷を癒やす手段が失われた衝撃に耐えられずに多重人格者と化してしまったという点にあります。彼はかつての子供時代と10代の自分、そして彼自身が許せない未熟な成人男性としての自分、というかなりややこしく自我を分けてしかも己の生体反応を総てUの仮想空間に注ぎ込むという無茶苦茶な事をやっているからです。死ぬんじゃないか竜いくら何でも・・・て気がしてきましたが、竜の躰にある異様なシミはニンゲンとしての竜がガンに罹っているというメタファーなのかもしれません。竜は実生活でもかなり敵が多そう。

 

 

一見、仮想空間に追いやられてしまってみえる内藤鈴の学園生活と日常だけどもっ

内藤鈴は冒頭から鬱屈した学園生活を送っているシーンが展開されますが、通常鬱屈した10代の少女というものは本人だけが自意識過剰で周囲の親や友達からは「普通の女の子」として軽く扱われている・・・という対比のシーンが描かれていないと普通に幸せな少女の青春映画としてはおかしいモノになりがちです。「竜・・・」では鈴の母親が死去しており、母親の死が彼女の行動に影響を与えているという設定がありその事情を親友のヒロちゃんや幼なじみのしのぶ君(成田凌)がキッチリと抑えていて鈴を見守っているので平穏な高校生の日常でもどこか緊張感があります。しのぶの鈴に対するフォローに執念を燃やす態度には、鈴の幼少期の恐ろしい記憶と関係がありおそらくしのぶ自身の幼少期のトラウマを克服するという目的意識があるせいで、彼は単純な王子様として存在しているワケではありません。高校のマドンナのルカちゃん(玉城ティナ)とカミシン(染谷将太)のカップル話も並行して描かれますが、彼らの方が徹底的に幸せで健康的だという点で鈴やしのぶとは対象的な存在なのです。そして中盤以降から鈴に世話を焼く合唱団の5人のマダム達(声優陣が森山良子、清水ミチコ坂本冬美岩崎良美、中尾幸世)の存在は鈴の母親(島本須美)が生前どんな活躍をしていたか、娘の鈴が想像する以上の大きな功績を挙げたようだという暗示になっています。そうなのです、鈴という主人公の潜在的なパワーの源の証明でもある。「竜とそばかすの姫」はアナと雪の女王 (吹替版)と同様にもし主人公が男女がスイッチしても過不足無い物語設定で製作されたアニメなのです。最近のファミリー向けアニメ映画のトレンド抑えているといって良いでしょう。

最後に鈴のお父さんについて

鈴の父親(役所広司)との会話のやりとりは終始「夕飯の支度は父娘のどちらがやるのか」に絞られており、鈴の態度が頑なまでに父親の作る鰹のたたきを拒否する態度のおかげで、鈴の内面の不穏さと複雑さを表現しているのかと映画冒頭から気になっていたのですが・・・よく考えてみたら映画の季節の設定が真夏であり、いくら高知でも冷凍鰹のたたきを夕飯のおかずに食べるのは嫌だ、鰹の旬を知っている若い娘だからオヤジに付き合って鰹のたたきのお相伴に預かるのは勘弁して欲しいっ、という鈴の意思表示であると映画終了後に気がつきました。なので娘を持つ既婚男性はあまり深く悩まないで下さい、気にしないでっ。ただし日本全国の魚の産地に住むお父さん方には参考になるかも。

 

 

2021年に劇場で観た映画 4

 

ワンダーウーマンから土竜までシリーズ物鑑賞にも困難の日々

そうなのです、人気の映画シリーズでも一般観客向けの試写会の反応があんまり良くなければスクリーン数が減らされるかもしれない、それが日本の映画産業におけるcorona渦の衝撃でした。何せ緊急事態宣言が起きれば都内でも劇場公開日がなくなり公開作品の日数が減りますし、後がつかえる。劇場公開が一年以上遅れたワンダーウーマンの続編ですが冒頭のダイアナの少女時代のエピソードだけでもご家族揃って楽しめる娯楽映画だと思います。ウチの息子と一緒に観ました。それに比べたらクーリエ:最高機密の運び屋(字幕版)は大人向けの、特に大人の男性向けの映画。モンタナの目撃者 ブルーレイ&DVDセット(2枚組) [Blu-ray]のアンジョリーナ・ジョリーをはじめとする強い女たちや子役にやっつけられるプロっぽいんだけどやることなすこと詰めが甘い男たちを鑑賞して心が砕けたアクション映画ファンは是非「クーリエ」も観てね。プリズナーズ・オブ・ゴーストランド[Blu-ray]は観られる機会が無さそう・・・と半ば諦めていた所、日比谷のシネコンでやってると判って観に行きました。劇場で出演していた栗原類さんが来ているのが解ったのですが、彼が来る以前から大御所の役者さんが既に席に着いていたり、映画のアクション指導しているっぽいヒト、広告代理店勤務の重役さんなのかなあ?みたいな方々がいらっしゃったんで、却って緊張感がほぐれて良かった栗原さん有り難うという気分になりました。だって園子温監督のハリウッド進出映画だったんだから、そりゃ皆注目するでしょ。

↓の映画だってただの伝記映画ではありません、観ると混乱するし、コワい所も。

アネサ・フランクリンの生涯は映画でもキチンと100%正確に描かれないほど、煩雑で説明困難な状況が黒人社会やUS及び世界の音楽業界にあるだという事が映画を観ると伝わってきます。なので伝わらない観客には辛くて訳わかんないお話かも。それなのに女性が主人公なら未だ無視していられる日本の男性観客は多いのでしょうか。

youtu.be

↑の映画は2021年夏頃から都内でもかなり長期公開されたヒット映画で、シニア男性や若い男性客が平日でも熱心に観に来ていました。キライな男性の観客も多そうですが(DVDもアマゾン配信も日本は未だない)アクション映画としても一級。ただ私はこの映画実話ベースなので、主人公の若者グループが全員少年でないと設定的におかしいとは感じますが。日本の女性たちがこの映画観ると「日本国内山中なら女子だけで暮らせる」って勘違いしそうで少し心配・・・所変われば鑑賞の反応も違う事があるものなのですよ「MOMOS」と同じ劇場で公開されてたドキュメンタリー映画「主婦の学校」も好評でこっちはご婦人方が沢山来ていました。既に配信サービスで鑑賞できますのでwww.youtube.comで気になった方は是非ご覧になってください。

 

そして11月には日本のアラン・スミシーこと藤井道人監督の異色のヤクザ映画ヤクザと家族 The Familyを観たあたりでも充分疲れちゃってもう年内は観なくとも良いかなとちょっと感じていましたが師走に入り興味があったので観に行ったのは、地方自治体の職員への割引制度があって地方からのお客さんで賑わってた↓のドキュメンタリー映画。前職のボストン市長は代々市長の家系で米国内を自治体の長として渡り歩いたという人物を職員の皆さんはどう感想を持ったのか聞きたくなりました。

そして、娘さんのいるお母様には特に観てほしいと思ったホラーサスぺンス映画だったのが↓の映画。よく観ていくと昨今の高齢出産でお子さんを産み育てる子育てについての不安と利点も同時にある事が解ると思います。

 

んで、ドライブ・マイ・カー インターナショナル版と↓の映画では鑑賞する際に妨害を受けた気分に陥り年末の都内で独り、怒り狂いながら観ていました。