ドキュメント野郎 7「くたばれ!ハリウッド」

 

くたばれ!ハリウッド [DVD]

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 花咲く庭園とプール付きの瀟洒なお屋敷を生涯愛した紳士

本物のロマンチストってこういうモノなのかも?というのが映画を観た直後に感想でした。映画は主にロバート・エバンズの同名の原作本くたばれ!ハリウッドを元に構成されておりナレーションもご当人が担当しています。だからロバート・エバンズの一方的な言い分だけが目立つ気がしますが、おかげでロバート・エバンズという人物の履歴が映画プロデューサーの枠を超えて「ヘンテコ」という側面にも観る人は驚くかもしれません。何せ「コイツどんだけほら吹きなんだ」という感想を持った評論家もいたぐらい。しかしながら1950年代に東海岸出身のエバンズ青年がハリウッドへ自身のアパレルブランドの売り込みに行った筈なのに、パラマウント映画へ役者としてスカウトされてしまい「ヴァレンティノの再来」として売り出されてしまったのは事実だそうです。で、ルドルフ・ヴァレンティノの再来って事であって、1960年にイタリアでアパレルブランドのヴァレンティノが起業される少し前のお話だからね、念のためっ。

 

 

1970年代のハリウッドを仕切った、ハリウッド以外にも仕切り過ぎた男

映画のプロデューサーは「くたばれハリウッド」以外ではケイティ・ペリーやジャーナリストのハンター・S・トンプソンのドキュメンタリーを手がけていたり監督のブレット・モーゲンは後にカート・コバーンのドキュメンタリーでアカデミー賞候補にもなっっています・・・コレを私なりに推察すると「映画界のゴシップの検証が大好きでポップなミュージシャン、文化人、映画スターが好きな人々」が製作したのではという仮説にたどり付くほかありません。それとプロデュースの中にジョニー・デップとか加わっててもおかしくないよなっていう判断をしています。映画の中には当時からの映画スターが沢山登場しますが驚くほど、1960年代後半から1970年代にかけてのハリウッド映画にエバンズ自身が関わっていているのが伝わり、有名映画のかなりコアなエピソードもいくつか映画前半に登場したりします。そして1970年代においてエバンズの公私ともに伝説となった大ヒット映画ある愛の詩 [Blu-ray]の成功と主演女優のアリ・マッグローとの結婚から、あっという間の離婚とその後の転落が語られるのですが、その中のエピソードで私が強く印象に残ったのは、エバンズの手に入れたハリウッドの屋敷を最も気に入って興奮した女性がアリ・マッグローだったんでは?な証言とドラッグで逮捕された1980年代に「贖罪のために」エバンズが知人を集めて起こしたTVでのイベントが後に世界的に話題になった「We are the world」にやたら似ていたって事でした。英国のライブエイドに触発された「We are the world」だったはずでは・・・が当時高校生だった私の主な感想だったんですが、それだけじゃあのようなパフォーマンスはなかったのかもしれません。映画中のTV番組映像見た限りでは、エバンズって年食ったバリー・マ二ロウみたいだなってのが強い印象で、当時バリー・マ二ロウ主催のチャリティと間違えて多額の寄付したヒト居たり(おそらく彼らは100%騙しているわけではないでしょうが、もやもやする事実かも)とか、顔が似ているバリー・マにロウに司会頼んだとか途中で入れ替わったしたりしていないだろうか・・・少しだけ気になりました。その後もTVのニュース番組でエバンズは現役のやり手映画人というより、プレイボーイの映画プロデューサーとして、当時のUSAのマダム層に取り囲まれてる姿が報道されております。

美しい花園のある瀟洒な邸宅・・・エバンズにとっては一体何の象徴なの?

エバンズは20代後半にハリウッドにある元大女優が所有していた(名前忘れました)屋敷に猛烈なまでに執着しており、後半は彼が自身の依存症治療の為に入院していた病院から脱走して自分の屋敷にたどり着いたエピソードが一番鮮烈です。それだけ彼が依存症に苦しんだ状況がひたすらに語られます。瀟洒な屋敷がイラストでも表現され、彼のラリった頭の中の幻想のように表現されますが、美しい影絵なのでロマンティック。彼にとって自宅は成功の象徴というより、いろいろ模索していた青年時代からやっと人生が定まった自己肯定の象徴だったのかもしれません、ひたすらに繊細でエレガントな花一杯の屋敷だったのでは。エバンズ自身とひたすらに冷静な態度の彼の息子のナレーションの掛け合いで映画はあっという間に終わるので、それほどまでに妻のアリ・マッグローがS・マックイーンの元に走ったのが彼にとっては大打撃だったのかが判るのですが、この20世紀史上ハリウッド映画界の歴史の中でも屈指のスキャンダルの真相の中身は映画ではまったく明らかにはされませんでした。とはいえエバンズ父子にとってはコッチが聞きたいわだっ、だとは思います。でも映画のエンディングにはジャック・ニコルソンやダスティ・ホフマンを始めとして、プロデューサーのエバンズを好きだった人々が沢山登場し、皆さんの心意気と応援ぶりがほほえましいと思いました・・・けど、やっぱり「どっちの味方」かで当時のハリウッドの男性陣の方々は揉めたりしたんでしょうか? 多少は。