しょくぎょうふじん⑥ 「グッドモーニングショー」の志村未来と長澤まさみ

 

 

グッドモーニングショー DVD通常版

グッドモーニングショー DVD通常版

 

 映画グッズなんか売っている場合なのかっ(..;)

 この映画を取り上げようと思ったのは今日(2017/08/11)何気なくTVのワイドショーを観ていて「入社6年目の〇〇です」と自己紹介したTV局の女性アナウンサーの姿に衝撃を受けたからに他なりません。もはやこの局の女子アナ事情はとんでもないことになっているらしいと実感しました、が主な理由。この映画自体の出来は水準以上のコメディ・・・よく観るとかなりエッジが効いているのでお家鑑賞向きだよ~としか言いようがないので当初「しょくぎょうふじんの映画」のカテゴリーには入れようと思ってなかったのね。あと同時期に劇場公開されたSCOOP! 通常版DVDと比較して以前SNSで「グッドモーニングショーの方が描き方が斬新かも」なんて発言したのを少し考えが足りなかっかもしれないと急に思い出したからです。その時点では「メディアを舞台にするにしても出版よりTVのほうがより映画的だからかなあ」ぐらいに軽く感じてたのですが、そうゆう問題じゃなかったかも。監督は元々欽ちゃん番組の構成作家からキャリア出発させた方なので現在のTV界についての危機意識が撮らせたのかと思うくらい理想化された失われた楽園のようなTV業界が映画では描かれております。余計なこと言うとアマゾンでは未だにこの「グッドモーニングショー」の関連グッズが検索すると出現する、それにもまたまた驚愕。

志村未来、長澤まさみより「女子アナ」がゴージャスだった時代

 かつてはそんな時代があったんだよ。立川談志も「今時の女優よりずっといい」て絶賛されてた女子アナ黄金時代があってその当時絶賛されていた女子アナは見事フランスの御曹司の嫁になってデヴィ夫人にも「叶姉妹なんかよりファビュラス」て評されていた。最近でもその女TVに出ているけど(フランスではセレブ夫婦でも共稼ぎが当たり前で気安く出演し過ぎているせいか)視聴者はすっかり忘れている。長澤まさみ演じる中堅の局アナは分かっているのか何も分かってないのかさっぱり謎というか素っ頓狂な女で主人公であるワイドショーのキャスター澄田真吾(中井貴一)を冒頭翻弄させるのだけど、長澤まさみの雰囲気は現役の人気女子アナと比べてもナチュラル過ぎるような気がしちゃった(笑)。バブル時代を頂点とした時代の日本のおっさんが抱く「ランクの高い美女」というのはいつもどこかに様式美というものを要求していて、その要求に応えるのに様々な役をこなす女優たちでは荷が重いものになってきた。そんなオッサンの欲求不満を埋める存在だったのが当時のTV局所属の女子アナだったんだよ、で今でもその傾向は続いているから人気女優も女子アナを演ると印象がどことなくサッパリし過ぎる。・・・別に良かったんだけどねそれでも。ただ映画の中で繰り広げられているワイドショーの現場はもう地上波TV全盛期の佇まいそのままなのだよ、緻密にリアルに描かれてはいるけど、どこかこうゆうTVの状況は過去の出来事だったんじゃないかと私なんか片方で気にしてしまう。志村未来、長澤まさみの姿はそのギャップの象徴なのさ。

それでも緊迫している「籠城事件の現場」

 澄田は以前局で報道番組をしていた際、災害時の中継でヘマをして報道の一線からは外されたという過去のトラウマがある。家庭では大学生の息子が交際している彼女との間に子供が出来てしまって結婚したいって言い出すとか、どう言うわけか自分とつきあっていると思い込んでいる長澤まさみに言い寄られるとか、妻(吉田羊)は元女子アナで夫の仕事ぶりのチェックが厳しいとか出だしはスラップスティックな状況(とはいえ一個一個は普通にありそう)で始まる。そう、なんちゃってハリウッド映画って感じなのね。そんないつもけたたましいグッドモーニングショーのOA中に品川の大崎で立てこもり事件が発生しパン屋の客と一緒に立てこもった犯人の青年の西谷(濱田岳)は「グッドモーニングショーの澄田をここへ連れてこい」と要求するのさ。そして番組スタッフは何時ものように大騒ぎして澄田を現場へ行けと促すのだった。んで誰も澄田が犯した取材現場での失態の過去は覚えていないし気にもしてない。この辺の描写が徹底してドライ。一歩間違うと冒頭のけたたましさに慣れちゃって退屈にさえ感じるかもしれないけど、この後大崎に澄田が着いてからの立てこもりの現場の描写がちょっと特殊なのね。大昔の 狼たちの午後 [Blu-ray]のように一見ドキュメンタリーっぽくしているけどただ単にそれらしいBGMのないのっぺりした刑事ドラマのできそこない観ているような変な気分になる、それこそ踊る大捜査線 コンプリートDVD-BOX (初回限定生産)のような音楽が無い実際の事件現場って案外ノンビリしているの?て感じ。でも澄田にくっついてきた番組のカメラマンはヘンテコな小型カメラを以前から自前で開発していて澄田の重装備の防弾チョッキに嬉々としながらくっつていくとか片方でなんかシュールなエピソードが続いていくのだ。澄田の防弾装備姿はあまりにも厳重で刑事たちと比べると大げさなんだけど、今世界のTVキャスターが実際の戦場を取材する時に装着している「薄手のかっこいい防弾チョッキ」って本当は何も防弾には役に立たないらしい・・・という噂もよく聞くので(笑)、リアルな表現って極めるとどっか超現実(シュール)にしかならないってことなのかもしれない。

それにしても〇7時間テレビ局は何処へ向かうんだあああ・・・

 というわけで映画後半の澄田と西谷の丁々発止も面白いんで観てください。同時期に公開されたSCOOP! 豪華版Blu-ray/DVDコンボの時のリリー・フランキー氏だって悪いところがあるなんてちっとも思ってないですが、あちらはかなり以前から皆が待ちかねていた「様式美の世界」なのでぇ、好き好きですが個人的に驚きはしなかったってだけでーす。そして両者とも吉田羊嬢が似たようなポジションの役柄で主人公と対峙しているのでどっち鑑賞しても楽しめるのは保証します。そんなことよりも私は「グッド」については夫が面白そうだから借りたいと言い出すまで積極的に観る気にはなれず、劇場公開時も「千円で観られます」CPについイラッとしたものです。「SCOOP!」の方はきちんと大画面(名画座)で観たもんね~一応言っとくけど。私も含めて今多くの人がお台場にあるTV局に冷たいのよ・・・おかげで「グッド」におけるかつてのTV賛歌について色々過去の面白かった番組の数々をつい思い出しましたわ。入局して六年にもなるのに華が何もない女子アナがいるようなTV局じゃなかったのに。