しょくぎょうふじん⑧ 「チア☆ダン」の天海祐希

 

いま現在の(2017年)日本映画に対してクサすならば

 特に日本映画の中の「女性と職業のあり方と社会進出認められ方」について苦言を呈したい貴女ならまず真っ先にこの「チア☆ダン」とまだ劇場公開している「奥田民生になりたいBOYと出会う男すべて狂わせGIRL」を観た上で積極的にクサしましょう。そしてどうしてドチラの映画にも天海祐希が出演しているのかが偶然なのかどうか?ってことです。「新感染ファイナル・エクスプレス」も確かに面白いゾンビ物&如何にも韓流感動映画ですが、今や日本映画を韓流モノと比較して文句言っている段階じゃあありません。つい最近まで「日本の理想の女性上司ナンバーワン」としてフィーチャーされ、TVドラマにひっぱりだこだった天海祐希までもが映画出演の方が目立つ今年。永年映画とTVドラマはコンテンツとして全くの別物として存在していた日本ならではの特殊な環境がようやく終わろうとしている時代に「大昔の日本映画と現代の外国映画さえ褒めとけば後は映画なんてどうでも良い」という一部フェミニストの映画ファンの態度じゃやってけないと思います。特に小学生から高校までの年頃のお嬢さんのいるご家庭では是非鑑賞おすすめします。ごく単純に面白くて元気が出る映画ですし。あと劇場公開時に鑑賞逃してケチってYOU TUBEで観ている方(笑)大画面が観た方がいっそう楽しいシーンが実は「チアダンスシーン以外」にこそあるんだぜっ、詳しく教えてあげるわよ~おーほっほっほ♡

まだ「LALALAND」を観たばっかりだったんで

 またこの映画もミュージカルだったのか?と一瞬見まごうシーンもありましたが、後にDVDでもう一度観た時はダンスで彼女達の気分やノリを表したのねって気がつきました。広瀬すず中条あやみ以外にも新人女優の「顔見せ映画」としての一面もありますから今後の押しの女優も探してみてください。映画の冒頭から主人公のひかり(広瀬すず)を始め皆ダンスがだんだん上手になっていく課程を見せていき、いよいよ全米の大会が本格的に彼女たちの目標になった時点で、ちょっとしたダンスシーンが入るのが楽しい。劇場で観た時には映画前半部のクライマックスに当たる、夜の街で一人ストリートダンスする唯(山崎紘菜)にひかりと彩乃(中条あやみ)が加わって三人で踊るトコが印象に残ったのですが、DVDで見直したらまだ彼女たちそれほど上手くは踊れていなくて私もおばさんなりに自然と若い女の子達の青春ストーリーにストンとはまり過ぎていたのかと改めて思いました(笑)。シネコンの劇場も思った以上におばさん&シニア女性の割合が高く、年頃のお嬢さん方が「まあ皆さん娘さんらしくなってぇ」と感慨にふけって喜ぶほど自分も「老いたり」と感じましたわ。で、そんでもって「此の子たちにも年相応に娘時代を送らせねばっ」と若い女の子達を𠮟咤するおばさんというのはよく「おでこは全開にするものなのだっ」とのたまうものなのです。チア部の鬼顧問のおばさん教師早乙女(天海祐希)のように。

未だ映画のモデル(部活動)も存在しているからこそのリアル感

 映画は抜けるような青い空のアメリカの風景から一瞬で「福井」のタイトルとともにどよーんとした湿気を含んだ山陰の風景に変わります。この辺のベタな演出を非常に嫌う方もおられるようですが、私自身は製作者側と被取材側の関係の近さが肌で感じられる脚本と演出だとそれなりに興味深く感じております、なんたって「事実に基づくストーリー」てやつですし(笑)。459(じごく)の車ナンバーと車の所有者早乙女が語る「それじゃ地獄よ福井地獄よずーっと福井のままよ」の台詞が繰り返されるの最初は自虐的な「福井アピール」だと笑って観てたのですが、そのうちに「このへんの描写福井地元民のお怒りに触れるスレスレなのでは」と少し心配になりまして、後で「やっぱりロケーションは福井じゃなくて新潟かっ」とかチェックしてしまいました。他にもひかり達と袂を分かつチア部の同級生役として柳ゆり菜がバレエをそれなりに披露していますが、肢体がバレリーナというよりやはりグラビアアイドル仕様なわけでこれにもイラッとくる方もいるらしいのです。しかしながらこの映画の柳ゆり菜は出演する他のどの女子高生よりも福井弁のイントネーションが素晴らしく、役柄が地元旧家の広いお屋敷に住むお嬢様でひかり達がチア部の解散危機を防ごうと誘っても「私やっぱりバレエを始める」と断ってしまうやや痛い感じの女の子になっていました。んで夫はこのお嬢様役が柳ゆり菜だと途中から気がついたけど私は当初エンドロールで見つけて少し驚いたくらいでしたよ。私観た後なぜだかかつての大映ドラマ「スワンの涙」におけるヒロイン宮沢りえ(初主演ドラマだったのさ)のライバル武田久美子を唐突に思い出したんですが、柳さんこれで女優としては武田久美子越えしたと思われます。それからひかりのお父さん(木下隆行)がかつて福井商業が甲子園準優勝した時のレギュラーになっている設定だとか。何故そんなマニアックな「部分」に凝るのだろう?ホントにそんな事実があって映画に盛ったのか?・・・等、不思議な見所がありましたね、これは大人向き(といおうかおっさん向き)な映画としての魅力かも。ひょっとしたら監督(河合勇人)の趣味なのかな?俺物語!!(通常版) [DVD]も撮った方なのですがこの映画も非常にティーンムービーのはずなのにオッサン支持が絶大といおうか以前映画館にて「俺物語!!」の予告編も食い入るように見つめていた中年サラリーマンが「コレ今度観たいな観たいけど恥ずかしいから劇場で観られないでも観たい」と背中で訴えているのを見かけ、驚愕した記憶があります。(笑)

「世界のてっぺんに立った」・・・でも「福井」からは逃れられないのかっ

 んで、ひかり達がチアダンス世界選手権で見せるダンスシーンに関しては私、それほど苦言もございません。かつてのチアーズ! ブルーレイ&DVDセット(初回仕様/2枚組) [Blu-ray]のシリーズや実際に全米のスポーツリーグで活躍するチアリーダー達のダンスを取り上げた映像コンテンツ等と比較してみたら、出演者のチアダンスを一曲ぶっ通しで撮ったのをベースにして編集してストーリーを語っている(合間に福井と中継されて地元で応援しているのを描写していたり、USの実況アナウンサーの適当さも実態に近そうw)ているだけでも、たいしたもんなのかもしれないし。むしろなんだか「がっくり」きたのはエピローグシーンでひかりや彩乃が卒業後に自分の夢を見つけたり実現したりするくだりの方だったりしたかもぉ。きっと地元の福井の大人達は安心できるような「大人像」なんでしょうけど。選手権の決勝前に「早乙女先生の葛藤と軌跡」の回想シーンがつづられるのですが熱血教師という以上に地方では教職というポジションがいかにデカいか、はっきり言って「社会起業家並レベル」まで求められているかも、ぐらいの活躍と思い詰め方にびっくりしたもので。それなのに後でコレなのかあ・・・て気がしましたよ。「世界のてっぺんたどり着いた時に見える風景があるのっ」て早乙女先生は激を飛ばすのですが、見えたのは〇〇の天井ではなく福井の厚き壁(福井の大人達の想像のつかないことはやっちゃ駄目w)だったのかも。まあ「女の子のキャリア問題」に関しては2018年度のTVドラマ版に期待をつなげた方が良いってことなのかな?