法螺あぁぁーな女 ② 「キサラギ」のキサラギ

 

キサラギ スタンダード・エディション [DVD]

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 「アイドル」はやっぱり凄いのか・・・

 後姿を引っ張るだけ引っ張ってって登場した如月ミキ(酒井加奈子)の丸顔を観た時、アナタはがっかりしましたか?それとも少しホッとしたのでしょうか・・・2007年公開当時からは「AKB帝国の覇権」が磐石になっている現在、「ラストの(ラッキイ池田振付による)ファンクラブメンバーのダンスは洗練され過ぎててオタ踊りじゃねえよありゃ」とか議論が更に白熱してこのブログ数なのでしょうか。ある意味この映画をホラー映画呼ばわりするのは、ごく簡単なようでなお且つかなり危険な気もしますが、頑張ってみよう(笑)。

Who are we meeting here now? ・・・な映画群

 以前にも書いたことありますが、かのレザボア・ドッグス オリジナル・サウンドトラックユージュアル・サスペクツ [DVD]と共通する構造をもったお話でございます、後のちにヒットホラーシリーズになった「SAW」なんてのもありましたよね。登場人物たちが「自分たちが出会おうとしている人物とは何物?」とずーっと悩み続けるうちにどんどん邪心暗鬼になっていき、お互いに殺伐としてくるというサスペンス。だから「Who?」なんですよね。そんでこの場合の「Who」にあたる人物すでに故人だというのがとても日本的で独創的、ついでにハリウッドの場合だとたいてい「Who」にあたる人物は「ゲイもしくはバイセクシャルな香りのする男性」なのに対し、キサラギミキは皆のアイドルになっちゃうのでした。実は私しばらくして「これって何かに似てるけど、何のお話だったっけ?」ぼーっと考えているうちに思いついたんですけど古事記の一番有名なエピソードに似てますよね? イザナギイザナミ+天の岩戸ってカンジ。慕っていた女性が死んで黄泉の国へ行ってしまったんだけど、男たちは集まって「いなくなって寂しいよぉ、僕らの太陽が消えてしまったよぉ、呼びかけに答えてよぉ」とどうしたら彼女のメッセージが受け取れるか延々と相談しているお話のようです。天の岩戸に籠ってしまったアマテラス大見の神がいないだけで何故にここまで人々が大騒ぎするのだろうとコドモの頃から理解できなかったんですけど、「キサラギ」観てたら、そうか「古事記」って日本最古のホラーで日本人の文化DNAに深く刻まれているものなのねと納得しちゃった。原作・脚本の古沢良太さんって方はホント真面目なヒトなんですね、日本映画って作る人間が真面目なヒト多いもんですから現実的表現(リアル)追及しすぎてリアルを通り越してホラーの領域にたどり着いてしまう傾向があるので、普通の映画でも「怖くて泣きそうになることあるぞ」と日頃から注意はしているのですが、このヒット映画もその手の典型的ホラー喜劇になっちゃったのだ。

お前にとってのミキちゃんとは何なんだ!

 そんなことを4人の登場人物達はお互い延々と詰問しあう、ただそれだけの芝居なんですがなんだか怖い。最初は一年前に自殺を遂げた売れないアイドルの如月ミキをしのんでミキのファンサイトを運営する家元(小栗旬)の呼びかけに集まっただけだったのですが。やってきた連中は福島の農家で安男(塚地武雄)、オダユージ(ユースケ・サンタマリア)、スネーク(小出恵介)、いちご姫香川照之)という方たち。オダさんは来るなり「喪服着用にするべきだ」と主張するんですが、そうすると家元といちご姫の二人は既に喪服は用意済であったりする。そしてミキの本当の死の真相に迫って行くという展開になります。4人ともそれぞれ如月ミキのファンにも関わらずそれだけではない「彼女との関わり」があってそれぞれ当人の抱えている秘密であったりもして、それもミステリー・・・な感じにはなっています。いくら売れないアイドルといってもここまで関係者以外のファンが存在しない玄人受け?アイドルっているのか?・・・という疑問が一瞬頭をかすめたりしますが(笑)、そんな突っ込みは野暮かもね♡

 TVのインタビューで小栗旬が「撮影怖かった」というようなコメントをしていた記憶があり、実際観てると小栗君はクローズZERO プレミアム・エディション [DVDなんかで暴れている時よりもよほど辛そうに見えました。確かに小栗君の役が一番「普通」でなおかつ難しい役ですもんね~、本来ならドルオタになるようなタイプじゃない、基本真面目過ぎるというか私の中学生の同級生で優等生なのに「松田聖子ファンであることが一番のアイデンティティでプライド」という男子がいましたが、彼のこと思い出しましたわ。でも周囲にそんな濃いアイドルファンタイプが居たヒトばかりじゃないだろうし(笑)、聖子ちゃんみたいな当時のビッグアイドルならともかく家元さんのココロのアイドルのこと映画の観客は誰も知らないんですもん、中学の時なんか「お楽しみ会?」みたいなクラスの集まりで件の彼は直立不動で聖子ちゃんの「風立ちぬ」を独唱して周囲を引かせた・・・じゃなかった(笑)、驚かせましたがそれだからって小栗君も「コレが如月ミキなんだぁ」とまず自分でやっていせる、わけにはいかないだろうし・・・?

「如月ミキ」になりたい誘惑・・・に必死で抗いたいっ!!

 で、アマテラス大見の神というのは昔から「両性具有の神」なんですね。陰陽師 2 [DVD]のラストなんか「アマテラスモードにギアチェンジして最強化」しないと野村萬斎さん敵を倒せなかったしさ。小栗君だけでなく他の三人と一緒に俺のココロの中に生きている「如月ミキ」を自分で表してみるっ!・・・ってやってみたら?っつーか「いっそのことやってみてくんないかなぁ」等とアタシのような女の観客は妄想したりするのですが、フツ―の男の観客にとってはさすがに禁忌(タブー)ですわな、いくらなんでも(笑)。(ちなみに4人の中で一人だけ誘惑にぐらついてピンクのカチューシャつけちゃう人物もいますが、彼の場合は多少その権利はある、という秘密の吐露の前振りになっています)

 というわけでラスト「如月ミキ湘南デビューライブ」の映像を延々と続けることによって、如月ミキになりたい欲望を封印するというか、CG処理その他によってミキちゃんが振り向いたらそこに俺がいた事実をひそかに暴露するというかね・・・でなんとか映画締めくくるのでありました。しかし声優酒井香奈子ちゃん自身のファンならともかく「ミキ役にクレジットで役名でる以外にも何人か微妙に体型の違う娘揃えて吹き替えに使っているに違いない」などと私メのように邪推する人間には騙されんぞ・・・だいたい歌唱力Z級という設定の割にちゃんと歌ってんじゃん(いかにも代々木アニメーションできちんとコミックソングの勉強?されていらっしゃるぽい歌声だ)「あどけない歌唱力」だったらオバサンの私はかつて二代目コメットさんだったアイドルの「伝説の武道館ライブ」とかも覚えてるしぃ・・・などと注意力散漫になりかけると、騙されてはいかーん!というおまけがついていました。・・・畏れとは、エンドレス(終わらない)だね。