法螺あぁぁーな女⑦ 「こどもつかい」の門脇麦と西田尚美

 

こどもつかい 豪華版(初回限定生産) [DVD]

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結局こんな時期に

 もう2017年の「ワー〇ト」だの「誰が観るんだよ」等の話題もとっくに終わった頃だとは思うんでけど、それでもこの映画片づけておこうかと。近所のシネコンで観たのですが公開3週目で既にガラガラで(私ともう一人同年代の主婦らしい方のみ)、見終わった後にコーヒー飲みに行った先のお店でジャニオタらしい女性が二人暗い顔をして話し込んでいたものですから「興行的には期待外れ」だった雰囲気が濃厚でした。そっか・・・と困ってネットで評判見たら案の定ぼろくそらしく、一人だけ(明らかにジャニオタではなくコアな清水監督のファンなのでしょうか)褒めているオッサンがいたので少しだけ勇気を出して、私も見終わった時「この映画嫌いじゃないかも」って感じたと言ってしまいましょう。そしてその後スティーブン・キングIT/イット “それ”が見えたら、終わり。 ブルーレイ&DVDセット(初回仕様/2枚組/イラスト・カード付) [Blu-ray]が劇場公開された折、予告編ではこの「こどもつかい」のBDがちゃっかり宣伝されておりました。(劇場に来ていた多くのお嬢さん方は思わず失笑)でもハリウッド版「IT」はとんでもなくゴージャスすぎる「精緻」なお化け屋敷の映画でありまして、少しだけ嗤っちゃうトコがあるんだけど嗤うのに気が引けるのよ。その点こっちは屈託なく嗤える予算リーズナブルだけど豪快なお化け屋敷映画なんですね。なんか中盤から終にかけて疾走感があるのに好感持ちました。(笑)

次々起こる怪事件

 映画冒頭にもう胸が悪くなるような小さい子供を虐待するシーンから、あっという間に子供を虐めていた母親は謎の死を遂げる・・・というエピソードから始まりいかにも日本のホラー映画あるあるな定番の展開だなあ、が一段落したところで登場するのが保育士でヒロインの原田尚美(門脇麦)。彼女は受け持ちの笠原連(中野遙斗)の母親がいきなり自宅マンションで変死してしまうのに遭遇し、連を自分の家へ引き取ってしばらく一緒に暮らします。尚美は新聞記者で(しかも冒頭の怪死事件について強い興味を持ち調べているっ)恋人の江崎駿也(有岡大貴)と同棲中なのですが自分自身もかつて死んだ母親との間に何かしらあったらしく、妊娠しているにも関わらす恋人にその事を告げられないとか、既に情緒不安定気味(割合こういう設定の主人公も日本のホラー映画あるあるですw)保育園の上司である園長の小松(西田尚美)に注意されっぱなしなのだ。実はこの映画、なかなかダークなホームドラマな側面があり中盤のドメスティックな子供達の受難が描かれているのが面白いんですよね、もっともあんまりやり過ぎると非現実的ホラーとしての緊張感が失われる危険性もあるし(そして心優しい人ほど観ていて辛くなってくるし)、おまけに肝心のこどもつかい滝沢秀明)の佇まいがあまりにも堂々&マイペースな為にギャップが激しいといおうか・・・「一体どうやって収拾つけるんだコレ」て少し心配になってきたところ、思いっきり力技で映画の雰囲気が転調を迎えるので、観ていてつい楽しくなってきました。(笑)

カンクローさん、カンクローさん♪

 そして尚美が自宅アパートに引き取った連くんは次第に「カンクローさん」から始めるヘンテコな童唄を歌い出します。このシーンがソレまでの映画の展開の前後を考えると非常にぶっ飛んでおり(笑)いかにも日本の住宅事情、「日本の家庭が持つノリ」を反映した非常に湿った(それこそクロユリ団地 スタンダード・エディション [Blu-ray]みたいな)ちんまりしたホラーから、土俗的な要素も加味してる+お化け屋敷系アトラクションなはホラー映画になっていくのでした。そう「こどもつかい」は昔、といっても1950年代くらいな?子供達に大人気でしかもとっても可愛い♡腹話術のお人形だったんだよっ。ある地方の資産家が自分の稼いだお金も元手に資産家の息子や地元の子供達を喜ばせようと遊園地を開いたんだ。そして子供に当時最先端の娯楽と文化を与えたかったんだよ、犬神家の一族みたいな強欲な金持ちとは大違いなのさ。でも結局横溝正史もビックリの災いが起こってしまうのね、いつの間にか遊園地に遊びに来ていた子供達がいなくなり・・・異国から招いた青い瞳の腹話術師で人形こどもつかいのパパのことを子供達の親がつるし上げると、突然サーカスから火の手が上がり全焼。焼け跡からは居なくなった子供達と子供達を守ろうとした腹話術師の焼死体が見つかった。それからというもの遊園地を作った資産家が亡くなり、遊園地が存在した村も高度成長から取り残されて寂れて過疎になって・・・とまるで祟りにあったかのよう。んで尚美&江崎はかつての遊園地だった廃墟を探っていってぇ、という風に行動を起こしてくれます。予告編でも印象的だったカンクローさんの童唄って元は総て「英語」でありまして、「カンクローさん」は「come from」などとなっています。(詳しくは映画見て確認してw)英語詞→日本語詞の改変のくだりはマザーグースみたいなのを思わせます。「青い瞳の正体は~」というのが、いかにもど真ん中ホラーです。

それにつけても「尚美/NAOMI」が決め手、もちろんタッキーもね♡

 そうです、90年代「学校の階段」シリーズにも出演していた西田尚美はジャパニーズホラーにかかせない存在なのです。「クロユリ団地」で結局一番怖かったのも西田尚美だったし。「こどもつかい」のヒロインの名前が「尚美」で、彼女がいい知れないぼんやりとした不安を抱えてるホラー映画には定番の描写である導入部にかけて、「貴女の考えすぎよ」とひたすらに日常へとヒロインを促しプレッシャーをかける。そんな西田尚美のお姿は「ひょっとすると貴女様こそジャパニーズホラーの女王様なのではっ」という気に一瞬させます(笑)。そんな西田尚美園長先生も映画の中盤から後半にかけてどんどんホームドラマにおける良き隣人たる面倒見の良いオバサンになっていくのもご愛敬。そして最後の最後にタッキーの「吊り芸」で決めるというのが若干不思議というか、それでも感動したというか(笑)見所はそれなりにいっぱいありました。以前にも書いたのですがホントにクロウ-飛翔伝説- [Blu-ray]って映画を思い出したし滝沢君ブランドン・リーより腹筋も背筋も使ってますよ観れば解るけどぉ。「魔女の宅急便」もそうだったのですが「CGじゃないのでビビらせる」事に興味あるんですかねこの監督。(その一方でCGアニメ映画を手がけるとかいう報道もあったけど)とにかく若くて体力あるうちにもう少しホラー映画で頑張ってもらわなければなりません。なんか滝沢君と相性が良さそう気もしたし。

 ジャニオタじゃなくてS.キングの「IT」が好きだっていう女子にも

 わりとお奨めします。確かに映画館でちゃっかりと「こどもつかいDVD」の予告をなが流した松竹の宣伝はどうなんだあ?とは一思いましたけどお。でも最後にこんな余計な事書くのは、その後一人で「IT」をシネコンに観に行った女の子がそれこそ「IT」に登場するような腐れヤンキーな若い男二人に嫌がらせ受けたという訴えがSNSで拡散されたのを読んで個人的に滅茶苦茶頭にきたので特にカンケーないけど此所でもしつこく記しておきたかったからなんだぜ💢。んであえてお若いお嬢さん達に映画館での鑑賞アドバイスをしますが、レイトショーに一人で行くならメジャー系のR指定映画に行くよりマイナーな映画にしておきなさい。レイトショーでマイナーな映画に行く若い男やオッサン達はオタクなので15歳以上の女性ならそんなに嫌な目に遭う事もないでしょう。ただし貴女から見て、彼らが奇矯に見える行動を取ったとしてもあまりじろじろ観察しないであげることです。お嬢さんたちの行動範囲が安全に広がっていく事を心より願ってます、こどもつかいだってきっとそう思ってるさ。