2017年に劇場まで行って観た映画 ⑥

 

  有楽町まで行って鑑賞したのだけど、近くに60過ぎの爺さんが私を見かけて酷くビビっていたのが気になった。何故?アンタこそブレードランナー楽しみ♡ってタイプじゃないじゃん・・・って思ったけど、映画が始まってしばらくして凄く納得した。それでも爺さんだと映画のラストには悲しくてグッタリすると思うんだが(笑)、リドリー・スコットが映画の構成をほぼ決めて「前作のプリスのイメージを拡大したかった」みたいなコメントをしていたんだけど、ダリル・ハンナのプリスはもうちょっと無邪気な感じだったのに「ロリっぽい家庭的な娘+ストリート系のカッコ良いギャル」に分裂するってのが私的には何だかなあだったんだが。(オッサンにはアレで整理がつくのかもしれないけど)まあライアン・ゴズリング好きな男には十分な映画だよ。

 

  たった一つの点だけ指摘したい。「淡水魚は生で食べちゃいけない、日本人だって昔から食べていないからっ!」この映画のスタッフの特に日本の歴史に対する理解は、半端なく深いもので登場するアイテム(三種の神器や冑に至るまで)のデザインは日本人の私から観ても素晴らしいの一言、映画冒頭にお母様が三味線を弾いて登場するコンセプトも独創性があって良いしね。だからね・・・だからこそ「映画のスタッフ日本取材する際にどっかの旅館にだまされてイワナかなんかの刺身食わされたんじゃないか」と不安になった。(マジで)シャーリーズ・セロンも淡水魚の刺身だけはNO THANK YOUだよ!寄生虫におそわれちゃう。

 

  改めて観たら、90年代にリメイクされたシャロン・ストーングロリア [DVD]の価値もやっぱりあるような気がしてきたよ。USの女性映画の新たな可能性を提示してあっという間にカサヴェデス死んじゃったからさ。特に年末にかけてのme too騒動があって「グロリア」を振り返るといろいろ考えることが多かった。

 

  日本じゃこの映画、極悪ヤンキーの兄ちゃん達のウケが最悪なの。

その反対に若い女の子たちには大人気だったんだけど。一人でシネコンに観に行った女の子がチンピラの兄ちゃん達に嫌がらせされたって話をSNSで聞いて、全員が(谷城/コクソン)のキノコ食って狂い死にしてしまえぇぇ!って(こころの中で)呪いをかけましたわ💢

「悪魔払いの儀式」

 個人的に楽しみしていた割りには食い足りないかった気もしましたが・・・宗教の最前線も中々ヘビーでありまして、カソリックの方々(教会内のペドフェリアだけでなく)も大変よぉぉ・・・という話でした。

 

希望のかなた [Blu-ray]

希望のかなた [Blu-ray]

 

 激動するヨーロッパ社会の現状もアキ・カウリスマキ監督の手にかかるとひたすら淡々と律儀に現実を受け止める人々のお話になります。ただ中東からの難民男性が皆ハードボイルドにストイックに男だけの人生を淡々と受け入れていけるのか?というのは少し気になりましたが。(でも宗教との兼ね合いを考えるとああしかならない・・・のかもしれない。)

否定と肯定 ホロコーストの真実をめぐる闘い (ハーパーBOOKS)

否定と肯定 ホロコーストの真実をめぐる闘い (ハーパーBOOKS)

 

 映画の邦題で文句が多かった映画。確かに映画観ると、否定と否定、お前の否定を私は否定してやろうじゃないかという応酬が最初っから最後まで貫かれているので「肯定」はタイトルに要らないって意見も理解は出来ますが。ただ私としてはまだ観ていない人に、そんな映画的なリズム感を観て新鮮に驚いて欲しい気持ちもあるのでねぇ、複雑。

 

 

  原作者の荒川弘が女性っての、なるほどそうでしょうね~てお話でしたね。等価交換なる法則に従って自分の宿命に立ち向かうっつう厳しさは今の日本の男性の周囲にはあまり無いといおうか、大半の若い男どもはそんなの意識して生活してないもんな、という事で連載当時大ヒットした漫画原作なのだな、てのはよく解ったわ。

 

  探偵ポアロケネス・ブラナー)の英語がスゴイ、とにかく膨大なボキャブラリーの持ち主になっていて、ポアロの推理力に説得力を与える重要な能力になってるから。今後シリーズが引き続き「ナイル殺人事件」とかやるならそれも楽しみだろう・・・って英語圏の観客は期待するんでしょうね。英語音痴の私にはさっぱりだけど。

 

 2018年がもう4月半ばなのですが、2017年に観た映画でワタクシが特にお奨めするのを敢えてあげますと、まさかの「奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせガール」「LA・LA・LAND」より「ベイビードライバー」を「お嬢さん」はまだ観ていないんですがやっぱり「コクソン」は凄かった・・・です。共通するのは三作とも「奇形/フリークス」だから、なの。2017年はまた幻の傑作牯嶺街少年殺人事件 [DVD]リバイバル公開されて話題になりましたが、アレもまたとんでもなく奇形としか言いようのない映画でありましたので。

2017年に劇場まで行って観た映画 ⑤

 

  最近韓国映画界でもいろんな事が報道されている所為か結構なおどろおどろしさだった筈のこの映画、振り返るとかなり爽やかエンターテイメントの部類だったような気がしてならない・・未だにコン・ユ/コーヒープリンスの個性もおかげも有るのかいな。韓流ラブコメの要素が少ないと本気(ガチ)で不満そうに文句垂らしてた若い娘も居て、少しイラッとは来たが。(笑)

 

エル ELLE [Blu-ray]

エル ELLE [Blu-ray]

 

  もうここまで来るとトンデモ悪女どころか「キチンとした女性」にまでいくんじゃないのか?・・・冗談ではなく鑑賞後その手の感想を抱いた観客が日本じゃ多いんだよ。実はそのくらい「日本女性が生きていくの大変問題」が深刻なのかもね、私らが日常聞く話でも逆境から這い上がった「列伝レベル」の女に限って凶悪な男に絡まれトラブルになる事案が多いような気がする。

 

  満島真之介の出番が長い。「忍びの国」初回限定(2枚組) [Blu-ray]散歩する侵略者 通常版 [Blu-ray]の時の強烈な印象のちょい役と違って終始出ずっぱりでも邪魔にならないのがこの映画の一番の個性なのかもしれないくらい。法廷モノはやっぱり作っている人間の宗教観が強く出るものなのか、福山雅治を始め法曹関係者が総て仏教エリートのお坊様とか尼様のように描かれており、主人公がだんだん全力で破壊僧のごとき殺人犯(役所広司)に立ち向かうみたいな話になっているから。満島真之介でないと二人の宗教対話に割って入ってそれなりに効果的な突っ込みが出来る若い修行僧って役は無理ですってトコか。それから主人公の父であり師匠でもある元裁判官の父(橋爪功)なんてのは「悪人こそ極楽に行くべし」なノリで死刑制度について語るわ、対する破壊僧には熱烈な信者の娘(広瀬すず)や存在が「煩悩」のような信者の母(斉藤由貴、しかもこの役で2017年度ブルーリボン賞助演女優賞獲得した)も控えている・・・かなり過激にてんこ盛りしています。イヴの総て [Blu-ray]もそうなんですが、この手の映画は作り方はクラシックなんですけどそんなには無いのです。

 

  あの・・・映画のラストは「妻夫木君が東京湾で泳いでいるのはきっとCGだろう」と言い聞かせて見終わったんですけど、違うんですか?

 

  あまりにも偉業を達成してしまうと見て目からして「性別も人種も越える存在」になってしまう姿をUSにいる年配の黒人女性たちによく発見してしまう気がするんだけど、それは当事者サイドにすりゃあコンプレックスでもあるのかな?とは、ちょっと思ったよ。だからこの映画の衣装デザインや主演女優達のルックス設定については制作者たちは悩んだかもしれない。最後に実際の彼女たちの写真が登場してより映画の説得力が増すのだし。まあEmpire/エンパイア 成功の代償 シーズン1(SEASONSコンパクト・ボックス) [DVD]観てる人間にとっちゃ、タラジ・P・ヘンソンの「乙女な熟女」な感じが面白いですがっ。

 

恐怖分子 デジタルリマスター版 [DVD]

恐怖分子 デジタルリマスター版 [DVD]

 

  名前だけ知っている映画というのも「恐怖の対象」だったりするモノなので、やっと観る機会を得て良かったです。

 

  一言でいえば「猿の品格」っつう映画だわさ。なんたって(知能の高い猿)アンディ・サーキスウディ・ハレルソンの顔面対決のシーンがカッコ良いぜっ!

 

アウトレイジ 最終章 [DVD]

アウトレイジ 最終章 [DVD]

 

  さようならアウトレイジ、さようなら日本のサラリーマンみたいなヤクザたちのように最後まとめてますが、今後は日本のヤクザ映画はどうなっていくのでしょう。

 私自身はかなり不得手なジャンルなのでさっぱり解りません。

 

  トム・クルーズ主演で「いかにもハリウッドらしいシックで洒落た犯罪映画」が観られる日が来るとは想像してこなかった私・・・我ながら失礼な人間だと思う。

 

女神の見えざる手 [Blu-ray]

女神の見えざる手 [Blu-ray]

 

  邦題については賛否両論あるようですが、私はこの映画の題名、2017年公開された外国映画の中ではベストだと思う。原題の方がちょいとぶっきらぼうな感じ。

 

  アカデミー賞の発表では、話題としてネタとしてもよく取り上げられておいたね。オリジナル脚本賞おめでとう!

 

それにしても、2017年はついに⑥までやらないと終わらなくなっちゃったよ。(..;)でも全部コメントするもんっ。

2017年に劇場まで行って観た映画 ④

 

関ヶ原 Blu-ray 通常版

関ヶ原 Blu-ray 通常版

 

  幼い頃に秀吉に見いだされた石田三成のエピソード(茶の湯でおもてなし)を以前からだから何なんだよっていぶかっている私なのだが、コレ観て「ガキの三成は湯を沸かす鉄瓶に直接抹茶を入れ、水入れてかき回してグラグラと煮えっぱなしにしてただけなんじゃないのかっ」と個人的に発見してしまったぞ!滝藤賢一の秀吉の演技を観てたら達観したもんねw、それが今回一番の収穫かもしれなーい。

 

パターソン [Blu-ray]

パターソン [Blu-ray]

 

  映画の途中から「パターソンという街全体がネット世界のメタファーなのでは」と感じてしまい。急に落ち着かなくなって独り冷や汗をかいてしまったのさ。主人公パターソンが日々の仕事として運転するバスでは乗客たちが様々な会話をしているんだけど、もうまるっきりSNSなんだもん。そして主人公のパターソン。人知れず皆に発表したいんだがしたくないだか自分でも解らない「詩」を書き続けているパターソン。新婚生活落ち着いてきてそろそろ子供欲しいかなのパターソン。阿呆みたいにブログを続けて☆マークに一喜一憂しているはてなブロガーなら彼を観てなんだか心が痛くならないか?しかもネット上の詩人(のメタファー)・・・ネット詩人なんだぞ!!単に私が自意識過剰なだけ?しかも彼は映画の最後何故だか永瀬正敏に励まされるんだぜっ。でもなんだか落ち着かなかっただけだったよぉ。

「二匹の牝犬」

 私がシナリオを教わっていた師匠(下飯坂菊馬)の代表作のひとつで東映女優映画の中でもカルト的な人気のある映画。一部フィルムも消失しちゃっていて途中つながらない部分もあるんだけど渋谷のシネマヴェーラでは時々上映するし、CSの東映チャンネルでも放送されたみたい。この映画紹介できたら今私のやっているブログの目的の8.9割方は達成すると思います、やっと観られてホッとしました。

 

  何かと比較されやすいクリストファー・ノーランドゥニ・ヴィルヌーヴ。私は前者を直線のお方、後者を曲線のお方と今後考えることにいたします。んで世評の高いノーランのダークナイト(2枚組) [Blu-ray]よりは今回の直球のダンケルクの方がはるかに退屈しない感じがしました。登場人物たちのナイーブさが好ましかったし、出てくる男の子たち皆可愛かったし(おばちゃんなのでその点が最重要♡)

 

  公開順に紹介しているうちに「なんか一つ映画忘れてる」と思ったらコレでした。昔73年度版の映画のあらすじを知って驚愕したし(だってほぼ眠狂四郎の前日談みたいなのよお)篠田正浩の映画の脚本や大島渚天草四郎時貞なんてのもやってたはずの田村孟先生から思いっきり「キリシタンものは大っ嫌いだ」発言を聞いた事があったのでいくら巨匠スコセッシ御大の手になるとは言えまったく興味が持てなくてしぶしぶ観に行ったのだ。(73年度版の映画って実は遠藤周作自身の脚色で撮られているんだけど)驚いたのはスコセッシ版の宣教師たちって、要はヒッピーの若者なのね。自らの文明圏とは全く異なる土地に果敢にトライするヒッピー男子にとっての「性愛」ったら宣教師の一人(アダム・サンドラー)が簀巻きにされた小松菜奈チャンを抱いて一緒に海深く沈む、てトコまでで充足できるものなのよ、きっと。あとさ日本人キャストにはどうもヒッピー体験あり/若い頃長髪(ロン毛)だったグループ窪塚洋介浅野忠信イッセー尾形)とヒッピー体験なしグループ塚本晋也加瀬亮)にきっちり分かれていて「そうか!役者界における日本のサブカルマスターといえばやっぱり窪塚洋介なのかっ」と映画観ながら納得していたワタクシ。しかし何故原作者遠藤周作には出来なかった事がスコセッシには出来たのか?73年はヒッピー真っ盛りで何が何だか解らなかったのと、遠藤周作先生自身には長髪時代が一瞬しかなかったからかしらん・・・などと、概念で語る映画について「頭髪という見た目のモノがらみ」でしかひたすら考えられない自分が少し嫌になりましたあぁ。

 

  何だか怖かった映画、観た後しばらく2、3日後にじわじわ来る怖さ。だってこの後エル ELLE [Blu-ray]感染 ファイナル・エクスプレス [Blu-ray]観たんだけど、そっちより怖いんだよこのベイビードライバーの方がっ。ちなみにK・スペイシーのトラブルが派手に報道されたのは公開後二ヶ月経ってからなんでその影響は無いと思うw。監督が英国人なんだけど、なんだかミーハー気分のよそ者目線から見た「おっかないアメリカの人たち」が描かれているような気がしてならないの。

 

  侵略生物が乗っ取った「人間の持つ概念の限界」を決して超える事なく行動する・・という風にキチンと描かれているのでかなり真っ当なSFになっていると思うよ。(コレでも)何故だか松田龍平をはじめとするグループが乗っ取った三人は性格的にもかなり軽薄なゲームマニアで「お前口で言うほど概念にとらわれて生きていないだろっ」ってタイプの人間から概念を奪う方が難易度が高そう侵略にも有益だと勘違いしてあんまり役に立たなさそうなのばっかり選んじゃうし、一見ギャグにみえただけなんだよ、きっと。(笑)だから侵略者として「いい仕事しそう」な東出昌大版も存在するんだねっ。

 

  映画冒頭男の子達がひたすら嬉しそうに馬鹿みたいに坂道を駆け下りるのがとにかく圧巻。どうやってあのガキらに「走ってごらん」てそそのかしたのだろうか?「絶対転んで怪我するヤツ出てきそう」と思っているうちに、案の定興奮しながら坂道滑りそうな子が登場するし(笑)後、劇場では何故か私を除いてほぼ男性ばかりだったのが不思議だった。何故こんなたわいない映画が「圧倒的な男うけ」をするのだろうか?たまたま?

2017年に劇場まで行って観た映画 ③

 

  春休み中見逃していたところに「ライブ映像のおまけ付き」で近所のシネコンで再上映されてラッキーだった。結構ヒトも入っていて私と同じ手合いの主婦等がいっぱい来ていたよ。

 

  現代だったらこんなてんこ盛りの内容はTVのミニシリーズぐらいの長尺でないと持たないという気もする。でもとんでもなく難しそうだけど。登場人物の心理や言動がそれだけ複雑で、21世紀の現代人には彼らの動機を推し量るのが中々困難だから一見ご都合主義に見えるかもしれない。けど、よくよく考えたら凄く合理的に皆行動するし、いちいち腑に落ちたもんさ。あとイディス・ヘッドのコーディネートがやっぱり素敵♡。

 

20 センチュリー・ウーマン [DVD]

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  すごく面白かったという話をnoteに書きました。

 

「忍びの国」通常版 [Blu-ray]

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  なんかジャニオタの人々はすごく真面目で批評が的確だと思う。でもなんかそれがこの映画の評価には若干マイナスに働いたといおうかw、もっとジャニオタ以外の時代劇ファンにも観て貰いたいのに・・・と内心焦る私はとことん性格が悪いのだろうか?また脇役の若殿様で登場する知念君の存在が結構この映画にとって効いてるとか、ホントに「ザ・ジャニーズ映画」になってる部分もあるからなあぁ。

 

こどもつかい 豪華版(初回限定生産) [DVD]

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  私大昔クロウ/飛翔伝説 [4Kリマスター・スペシャル・エディション] [Blu-ray]って映画をコレ観てとっさに思い出したわ。滝沢くんは背筋と腹筋ではかのブランドン・リーを超えてんのかもしれないって気が一瞬したのw(何故そう思ったのかは解らんが)

 

  なんか昔懐かしいB級ゴージャスアクション映画だったような気がする。ワイルドスピードシリーズとはそこが決定的に違うのね。

 

  この映画とても感じの良い映画なの。2017年数多く作られた漫画原作の映画の中で一番ヒットした理由というのはその美点が有ったからだと思う。総じて「ユルくて無理なことはしない」てだけなんだけどぉ・・・それはそれで大事なのかもね。(なんだかんだ言っても)中村勘九郎が金粉まみれで歌舞伎のきめみたいなのやりながら・・・をギャグにするって贅沢なことよ。

 

ローサは密告された [DVD]

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 季節によってマニラの夜は何時でも雨。何にもしなくたってドラマチックだしノワールなのよね。思いっきりノワールな雰囲気のマニラの夜の警察署とヒロインを始め大人達が繰り広げるドラマの前半部分、昼間になると主に子供達がマニラの街を疾走しながらそれぞれ苦闘していくドラマのコントラストが見事。この映画もっと日本の若い男の子たちが観ればいいと思う、ちょっと身につまされるけど。

 

  去年シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ (吹替版)の予告編に登場したスパイダーマンを観て今回の新スパイダーマンシリーズにもあまり期待していなかったんだけど、完全にコミカルなオタク路線に転換するわ、マイケル・キートンが「いかりや長介化」していて堂々の安定感を醸しだすわでひと安心しました、面白かったよっ。

 

  1930年代に制作されていたような第一次大戦を舞台にした映画・・・を下敷きにしたとしか思えない古典的な活劇&メロドラマ。かつてハリウッド映画にそんなジャンルがあった事など皆すっかり忘れちゃったから、魅力的ではあるのだけど多少ついて行けなかった観客が多いみたいだね。(日本の30代以下の男子とか)だから主人公の相手役のクリス・パインがスゴイいい役でカッコ良いのだけど、何故カッコよくて感情移入したいのか?・・・男性の観客の方がより理解出来ていないかも。ちなみに私が「ワンダーウーマン」現象のなかで最もPCだわと感じたのは、アベンジャーズシリーズのハルクとホークアイの役の人たちが「ワンダーウーマンと比べてブラックウィドウの方がなんだか貞操ユルい感じがする」みたいな発言してアベンジャーズの女性プロデューサーが「発言止めろ」って突っ込みを入れたエピソードだった、かなり笑えた。

 

 

 

2017年に劇場まで行って観た映画 ②

 

  この前WOWWOWで見なおしたんだけど、娯楽作品としてはバランス取れていて面白かったし、キングコングと写真家のヒロイン(ブリー・ラーソン)との関係も新鮮で良かったんだが、もう今更キングコングの定番の展開をひっくり返したところで誰も驚かない(笑)。私は公開時吹き替え版で観たので結婚発表したばかりの佐々木希の声優が意外とハマっているとか(劇場で「女の人の声誰?」と騒いでいる観客がいた。上手いけど、どっかで聞いたことあるって思ったのか)・・・少し落ち着かなかった。

 

  観ていて強烈なストレスを感じながらも決して席は立ちたくない、なスゴイ映画。謎の女役の女優さん(チョン・ユヒ)て女、普段はセクシーで綺麗なヒトなのね~。あまりに見事なので後日「コクソン」の監督に「今度は女性を中心にした映画を撮って下さい」なんてみっともないリクエストしてたインタビュー記事をネットで見かけたんだけど、私はその記者の発言についムカッとして「コイツにもコクソン村のキノコ食わしたる」と何故か逆上してしまったわ。このムカムカ気分が頂点に達したのが秋口に「IT」が公開した時だったもんね。

 

ムーンライト スタンダード・エディション [Blu-ray]

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  パステルカラーに溢れたフロリダを舞台にした涼しげな映画。そりゃあ日中はもの凄く暑いけど日が落ちて月が輝く夜には一瞬「涼しい風が身体を駆け抜けていく」瞬間があるのさ。んで、21世紀のUSではいくら極貧で被差別側の環境に置かれた子供あっても、周囲の大人が彼の気持ちを大事に尊重してくれれば、20世紀に多くいたお金持ち坊ちゃんの保毛尾田保毛男くんらよりもよっぽど情緒&精神的には健全で幸せに「男としてのアイデンティティー」を確立できるかもしれない、と示唆する映画でもあるよ。さすがに「世界の鬼瓦権三」さんはアカデミー賞映画としてよりもその部分を要チェックしたんだと思うんだけどなあ。

  コレ日系のプロデューサーも中心に加わってんのね。主役のヘイリー・スタインフェルドの壊れっぷりだけが話題になったけど、本当は脇を固める十代の男の子達の感情の機微が上手に描かれている映画よ。20代くらいまでのの男子もこっそり観てみたら。

 

  レイトン(ユアン・マクレガー)は結婚したけれども結局子供が出来ずに離婚・・・というエピソードが冒頭にあり、それだけで私の頭の中に「彼のWIFEDUTCHの女だったのね」というかなりしょうも無い事が浮かんだが、久しぶりにメンバーと映画で再会した往年のトレインスポッティングファンはもっと素直に楽しんだことでしょう。

 

 

  アニメ版でもそうだったが「野獣だけど本当はイケメンの王子様」という設定が観客側の人間に戻った時のイケメン値のハードルを著しく上げてしまうので必ず「野獣の時の方がかっこよかった」と最後ごねるヤツがいるので困るぅ(笑)。今回はウチの息子じゃ(..;)

 

ショーシャンクの空に [DVD]

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 90年代に見逃した名作映画のひとつ。映画終わった後に後ろの席で「素晴らしいっ」と声を上げていたのがおばちゃんだったのが実に興味深かった。S・キング好きの妹に「ショーシャンクの空観てみなよ、面白いよ」と先に言われたのが面白くなくて見逃していた(笑)という過去もありましたあ。

 

  映画の最初に紅一点のブリー・ラーソンが70年代後半のチャーリーズエンジェル風の格好で決めているのでスカーフで首元を覆っているのを、独りの男が「(相変わらず綺麗だけど)ひょっとして太った?」なんつーセクハラ丸出し発言をする、そいつは南アフリカから来た武器商人の嫌なヤツ。このシーンが良かった。タランティーノ以降、PCの洗礼を正しく受けた痛快犯罪ガンアクション映画。

 

  今をときめく竹内涼真だの千葉耕大だの志尊淳だのがいっぱい出てくる映画。ということなので可愛い男の子を愛でにイオンシネマではおばちゃんしか居なかったのだが、独りだけ授業サボって見に来ていた詰め襟の高偏差値校に通ってるらしき兄ちゃんがいた。地味に北関東の劇場でロングランヒットしていたイメージがある。(笑)

 

  ちなみにこの映画にはバーベキューシーンは存在しない。映画観る前に読んだ映画評のコラムを書いていたビジネスマンがいたんだが、何故だが「BBQで結束力を強めるチーム」として主人公達の行動原理を語っていた・・・てっきりラストはBBQパーティーすんのか?NYのマンションの屋上で?と勘違いしたじゃないかあ困るよ普通に映画語ってよぉ(笑)・・・世の中には鍋奉行とかBBQ王とかに激しくコンプレックスを感じるエリートもいるのかしらねぇ。

 

  私おそらくM・ナイト・シャマランの映画ではアンブレイカブル [Blu-ray]が一番好きかもしれない。なんで映画全体には少しどんよりしたけど、ラストに大興奮♡

 

  「BAKAUKE(ばかうけ)~」と来日時にやたら嬉しそうに言ってた監督になんか狂気を感じた。(一見とても普通ないい人っぽい感じなのに)原作小説では「半円形にみえるlookinng-glass」と表現されているんだけどね。あと原作でエイリアンとの対話に用いる書き文字は円だなんて一言も書いてなかったからさあ(笑)そこに監督の恐るべし野望を見て取ると、頭の中ぐちゃぐちゃになりそうなのじゃ。

 

  監督さんナイト&デイ(エキサイティング・バージョン) [Blu-ray]とかコップランド [Blu-ray]とかも撮ったヒトなのね。どっちも面白かったけど、どことなく「変」な映画だと思ってましたが、自分自身は「シェーン」もろくに観ていない人間なのでそんな生意気はとても申せませんでした・・・反省してます。でもやっぱりこの映画もかなりヘンテコでした・・・15歳以上のお子さんがいる家族で楽しめるアクション大作映画ていうヤツなの。それが今や娯楽映画のど真ん中っていう時代なのね。

 

 

 

 

2017年に劇場まで行って観た映画 ①

 2017年に劇場公開された映画のまとめです。もうすっかりルーチン業務のようになってしまい、息子が先に帰宅していると「何の映画観た? 今度コレ観に行け」と繰り返し命令されるようになりました。彼は今とにかくエル・ファニング嬢が大好き。

 

  映画のラストに生田斗真がエンディングテーマを歌うところで何故だか強い衝撃を受けたという2017年最初に観た一本。(それも作詞がわざわざ原作者の高橋のぼるジャニーズ事務所なのに役者一本で通して、ジャニーズなのに独りでヤクザ系映画の主役張るところまで上り詰めたその時点で今更何故に北島サブちゃんのように歌わされなけりゃいかなかったのか(北海道出身だからなのか)・・・まあどうでもいいんですけど。そんなに任侠映画時代のサブちゃんが好きだったファン大勢いたのかしらん?て気にはなったのだった。

 

  おそらくこの時期(2016~2017年)にかけての「世界の気分」を反映した思いっきり鬱サスペンス映画、思えば日本公開は新US大統領の就任式直前だったのだ。


『ホームレス ニューヨークと寝た男』予告編

50代のイケメンなホームレスが20代女性をナンパして玉砕したり、映画のラストに十代の男の子に向かって「自分のようになっちゃいかん」と説教する姿に「あちゃああ~辛いよねぇ」などと思いながら映画が終了。「パンフレット販売しておりまーす」という劇場のお兄さんの言葉につられ「この映画ウチの息子が興味持ってたから買ってあげようかな」と買い求めたところ、ビルの階段の隅でマーク・レイ本人が居てサインと握手をしました・・・バレンタインデーのプレゼントだったのかな?私にとってのタイミング的には(少しだけだよ)気まずかったんですがあ。

 

スノーデン [DVD]

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  平日の劇場だったのに行ったらすごい混んでいて「人気作なので前の座席しか空いていません」みたいに案内で言われてビックリ。とにかく老いも若きもシリアスな顔つきの男性陣がずらり揃ってた。私といえば映画が進むほど「なーんだあ」て少し安心してしまったのだった。超絶ネットワーク社会になったにしろCIAの手口的に何かが激変したというわけじゃなさそうだね、スピードがめちゃ速くなったってるってだけじゃん(笑)って。もちろん常識的にはそう感じる私の方がおかしいんだろうけどね。

 

 「字幕版ならきっとこっぱずかしくないから一緒に行こう」と息子を誘って観に行き、彼は案の定どハマりしました。4月から新しい学校で放送委員になった息子は映画サントラ版のテーマ音楽を昼食時のプログラムで流す為に無茶苦茶なごり押しをしたらしく、学校の担任にその旨注意を受けてしまいましたあぁぁぁ(嘆)。

 

  予告編で気に入った日本映画は観ることにするっと決めたので観に行った一本。己の眼力を信じて2018年もそれでやってみたいと思います!

 

ナイスガイズ! [Blu-ray]

ナイスガイズ! [Blu-ray]

 

  古き良き70年後半のUS。そんな風に書かなきゃいけなくなる時代が来るとは想像してなかったよ。(改めて歳食ったのね自分)なんたってさ、当時の子供はませてて上等!!だったから大麻の売人が13歳の少女を愛人にしててもロリコンだの何だの責められる事は無かったんだからあ・・・酷いけど面倒くさくは無かったかも(笑)

 

牯嶺街少年殺人事件 [Blu-ray]

牯嶺街少年殺人事件 [Blu-ray]

 

  私的に2017年度の「映画について考える課題/テーマ」がこの映画観て決まりましたわ。それで2017年の個人的なおすすめ作品を選ぶことにしてます。2017年前半はこの映画のリバイバル上映が結局一番の話題だったしね。

 

SCOOP!  豪華版Blu-ray/DVDコンボ

SCOOP! 豪華版Blu-ray/DVDコンボ

 

 80年代の映画っつうよか、80年代の青年劇画全盛期をより強く思い出しました。あの時代の劇画のかっこ良さを福山雅治リリー・フランキーが綺麗に再現してみせた感じがしたな。

 

ひなぎく [Blu-ray]

ひなぎく [Blu-ray]

 

  いやあ可愛いよね、とにかく何もかも可愛いわ、そんでやたら痛々しいくらいに可愛いの。んで、才気あふれる女の子が作ったんじゃなくておばさんの監督が撮った映画なのね。それを知って少し勇気がわいてきました。長い間観る機会を待ったかいがあったわさ。

 

フォークロアの女 「GET OUT」のアリソン・ウィリアムズ

 

 

 今思うと公開が2017年で「ホントに」良かった!

 ですよね。年明け2018年から現在(2018年師走)でがらっとUSの状況が変わりましたし。オスカー授賞式にこの映画のキャラクターの役者が役柄そのまんまで登場したギャグにしていた頃はまだのんびりしてましたが・・・。ということで↓以下の文章は2017年の秋口のまんまにしておきます。

 

2017年度のベスト〇〇言う時期がやってきました。

 秋口になると「今年のマイベスト」とか語り出す映画ファンが多いのですがこの「GET OUT」とMiss Sloane [Blu-ray]を一緒にあげる人たちは知的エンタテインメント好きな映画ファンということでよろしいんでしょうかね。私は今年5月の段階でこの低予算の映画が全米NO1になったという話題だけは知っていましたが、もうさわりを観るだけでなんとなく「鬱っぽい」不穏な雰囲気が気になり、ちょっと不安になりながら観に行きました・・・結果としてやっぱり暗かったんですが全米NO1になったのはよく判りました。私以前から何となく感じていたなぜだかハリウッド映画に多い「お婿さん受難映画」の典型ですよね。エドガー・アラン・ポーの「アッシャー家の崩壊」みたいなヤツとかさ。もっとメジャーなところでは風と共に去りぬ [Blu-ray]なんてのもお婿さん受難映画として考えると様相が全く異なって見えるので・・・。んでこの手の「これから彼女の実家に行くんだ」から始まる映画はたいてい豪快なアクション映画(もしくはドタバタ喜劇)で、そこの主人公達はだいたい皆マッチョで知的で二枚目の役者が怖がらずに堂々と向かうのが通例だったのですが、その点この映画は非常に正直といおうか主役のクリス(ダニエル・カルーヤ)が都会の成功した若手写真家でしかもマッチョな二枚目なのはともかく、かなり無理して内心ビビっているのを隠しながら彼女のローズ(アリソン・ウィリアムズ)と実家へと向かう、マイケル・エイブルスのオリジナル曲に乗って・・・まずこの主題曲のインパクトが強烈です。(ブルース調のメロディーにスワヒリ語と英語を混ぜた歌詞らしい)映画冒頭に三曲の異なるサウンドの曲の攻撃に観客は圧倒されるのがこの映画演出の最大の妙かも。監督のジョーダン・ピールはコメディアン出身だそうですがとにかくこの監督「耳が良い」のですよ、ホラー映画としての魅力もそこにあるの。

「異なる音」で人種間の文化の違いや緊張感を描き分けるのさ

 ローズの実家のある地域は殆ど深い森の中にあるといっていい。ドライブしていると横からいきなり野生の鹿が道路に飛び出してきて横切るから思わず轢いちゃうくらい。住民は公務員含めてほぼ白人ばかり。ところが実家に到着すると家には黒人の家政婦(ベティ・ガブリエル)と管理人(マーカス・ヘンダーソン)が居たりする。彼らの存在を巡って起こるローズとクリスの会話や恋人同士としてのコミニュケーションを映画終わった後振り返るとなかなか興味深いというかホラー映画とは別の側面が浮かび上がりますよ。クリスはローズの家族や親戚が自分とは違う白人ばかりで阻害感を味わうのとなぜだか「アフリカ系ぽくないアフリカ系の人々」が数人混ざっている状態に不安を覚えるようになります。一晩泊まってクリスの歓迎会を兼ねて親戚そろったパーティーをするのだけど、とにかく変。芝居としてはもう見え見えというかひたすら「もう主人公はどうにかなりそうだ」な印象で続くのですが 、都会の人間には馴染みのない物音、効果音、乾いた声でしゃべるとっつきの悪いローズの家の黒人の使用人達、映画冒頭からクリスが電話で会話する親友のロッド(リル・レル・ハワリー)のマシンガントーク、そして白人たちのゆっくりしていながら威圧感がある会話・・・これらの登場人物の台詞を含めた音の取り合わせの妙がクリスの焦燥感を募らせていきます。特にコメディアンでもあるロッドの台詞回しは(台詞の内容は平易なんだけど一定のリズムでぶれがないのよ)まるで一本の直線のように画面に見えるんじゃないかって感じ、そこが凄かった。そんなパニクっているクリスに恋人ローズのささやく台詞が救いになっていくのでした・・・流れを観ていけばソレっておかしいけど、感情的にはローズにホッとしちゃうよね、特に男子はさ。

映画のラストは変更されたのさ

 脚本の段階では現在日本で劇場公開されているものとは違っているんだそう、というかだいぶ周囲に反対されたり映画撮影中にあった出来事によって監督はラストを変更しようと決断したみたいですね、でも未だ当初想定していたラストに監督はこだわりがある様子。(なんでUS版のDVDには当初予定されていたラストシーンが収録されている)いまだ米国には人種差別が現存している事をアピールするためには今日本で公開されているバージョンでは不十分だという事らしいのだけど・・・どうも理由がそれだけではないような。終盤に主人公を追いかけてくるローズの暴走ぶりというのは狂気駆られているけど同時にとても悲しい姿なのよ元彼としては。ローズの心理いおうか「一体どんな育ち方したらこうなるの?」な設定を振り返ると、トンでも一家の掟に最も忠実で最も深くスポイルされ「家族環境の犠牲になって意識の底で感情が引き裂かれている」ってことだからね。本気で恋愛した主人公には彼女の苦しみを理解出来るっていうか理解出来るぜ俺はぁ、と主張したいのさ!。最後の最後まで絶体絶命のピンチに遭うクリスを辛くもロッドが救出してくれて「そうさ俺はT.W.mother fuckin.yeah~」とか何とかマシンガントークでまとめてくれるから主人公も観客もホッとするのだけどね。「やっぱり俺の言うとおり彼女はBitchだったろ~?」とかまされると何だかね、それ少し違うんだというのを表現したい気はする。とはいえ脚本当初のエンディングに直しても人種問題という社会派を超えて深遠かつ怪奇な悲恋物語になるわけではないですからねぇ。折しもゴールデングローブ賞ではミュージカルコメディ部門で「GET OUT」がノミネートとか、制作側としては鬱屈としたフラストレーションがたまる事が続きそう。

 んで当初主人公が写真家なのがありきたりっていうか陳腐だなあ・・・って気がしてたんですが盲目の画商(スティーヴン・ルート)なる人物が登場し「君は目が良いんだな、君の目が欲しいくらいだ」って言い出して、ああっ「監督の個人的体験に基づいて構想された」ってそうゆうことなのかと思い当たりました。(笑)