しょくぎょうふじん ② 「ワーキング・ガール」のメラニー・グリフィス

 90年代前半は「ブロンドの若手女優」達が一斉に登場してきた時だった・・・

 メグ・ライアンメラニー・グリフィスアネット・ベニング・・・この三人は私が映画を自分で真剣に選んでみようとしていた時期に登場してきたヒトたちで実は区別するのが難しかった。正直ガイジンなんでみんな同じに見えるしぃ、ぐらいにハリウッド映画自体に慣れてなかったんだよね。あと顔立ちが独特だったんで比較的覚えやすかったミシェル・ファイファーやギャル扱いからトップにのし上がったシャロン・ストーンに大人の女優として再登場してきたジョディ・フォスター何故だかみーんなブロンド美人だった。(で、この流れに逆らって黒髪で通したブラッド・パック生き残りのデミ・ムーアが結局この時期のNO1を制したのだけど。(笑) メラニー・グリフィスはその中でも最も古き良きハリウッドを体現しているというか、まあハッキリ言ってオヤジ受けが一番良かったように思いました。そりゃあこの映画大ヒットしましたし、この時のメラニー・グリフィスは当時の同性の支持も勝ち得ていたので当然ではあったんでしょうがね。このすぐ後にプリティ・ウーマン 特別版 [DVD]で女優を超えたアイドル的な人気で獲得したもっと年若いジュリア・ロバーツが登場するまでは「メラニー・グリフィスの天下」というのが確かに一瞬ありましたわ。

 「9時から5時まで」と「ワーキング・ガール」の10年間で最も変化したことって?

まあ乱暴にいってしまえば前者がLAを舞台にした「広い意味でのサラリーマン物アメリカ版」だとするとこっちはNYのビジネス街を舞台にした「トレンディ―なロマンチックコメディ」であくまでも少しだけ辛口なシンデレラストーリーていうことでしょうね。「9時から・・・」の脚本家は働く女性の意識について結構厳しい視点で描いているのに比べると「ワーキング・ガール」は大甘。これのちょっと前にマイケル・J・フォックス摩天楼(ニューヨーク)はバラ色に [DVD]というのもあったんだけど、生意気な若造がそれこそ「無責任野郎」のごとく恋も成功も手に入れるなんてストーリ―は鼻に着いちゃうのかあんまりヒットしなかった。なのでおんなじことをイケイケの若い女の子が演ってくれる方が観ていても気分がイイのだっ。ここら辺は「9時から・・・」を喜んで観に行ったオッサン達の意識と大差ないんじゃないでしょうか。両者とも上司に自分のアイディアを横取りされて自分の手柄を奪われた女秘書が上司の居ない間を狙って己で仕事を仕切って大成功する、というプロットではあるのですが、80年代のLAのメーカー(もしくは商社?)と90年代NYの投資銀行じゃ仕事の割り振り方も違うというか、働く社員の意識も違う。しがないワーキング・クラスの事務職から脱したいヒロインのテス(メラニー・グリフィス)にしろ友人のシンシア(ショーン・キューザック)にとっても一個人の目標の為だけに働くのは一緒。「9時から・・・」のジェーン・フォンダたちのように一緒に働く女性皆が利益を享受して楽しく働けるにはどうしたらいいか考えているとかは一切でてこない。せいぜい「結婚までの腰かけで満足」なのか「それだけじゃ厭」なのか、オンナなら度胸で一度勝負してみたら?つー展開になっています。これを働く女性の意識の変化と捉えるか、女性のみならず一般的なホワイトカラーの仕事意識の変化とみるか考察するのもいい勉強になるかもよ。

 でもカノジョの良さって結局は「マン・ハンター(MAN HUNTER)」の魅力だよね

 かつてロマンチック・コメディー映画の基本は「マン・ハント」で構成されていると言われておりました。当時のアメリカ男性は若い女性の「婚活」のことをそう呼んだのです。ロマンチックコメディーがトレンドとして盛り上がった直近の時代が90年代から、その後2000年代を代表するTVシリーズとして大ヒットしたセックス・アンド・ザ・シティ コンパクトBOX vol.1 〈シーズン1・2・3〉 [DVD]が終了以降、かなり沈滞気味で現代に至っております。何故か戦後ベビーブーム二世たちから結婚観が激変したらしく(そして何故だか日本も同様の傾向有り)ひょっとしたらもう女性中心目線のロマコメ映画の復活は期待できなくなるやもしれません。コレは個人的な決めつけかもしれませんがとにかくナニを打ち出しても最近の30代以降の若い女性たちには響かないみたいなんだもん。ワーキング・ガール」のようにビジネスを題材にしているようにみせて、内実はかなりえげつない男狩り映画というのは最近の若い女性だけではなく、若年の男性目線から見てもいかがなものか感想を聞いてみたいもんです。テスは上司のキャサリン(シガニー・ウィーパー)が休暇中にスキーで骨折し、出社できないことをいいことにキャサリン自身に成りすまし、キャサリンの彼氏のジャック(ハリソン・フォード)には秘書である自分の身分を偽ってキャサリンの仕事も男も取ってしまう、ていうより如何にして既に彼女がいる男性をこっちに引き寄せるかという所こそが見どころ。もっとも映画ではボーイ・ジョージそっくりさんのショーン・キューザックや「杖ついて己がエイリアン」になっているシガニー・ウィーパーしか出てこないので、どうやったってハリソン・フォードメラニー・グリフィスに惚れるだろうさとも思いますけど。テスはキャサリン愛用のスパンコール・ドレス(思いっきりアルマーニ)まで勝手に着てジャックと食事に行くのが笑っちゃいますが、公開当時よりも若者たちの学歴や出自の差がはっきりとは分からなくなり、代わりに男女間や女同士の競争がよりし烈になった世代はこういったシーンをどう見るんでしょうかねぇ。この娘(テス)は仕事ができるっていうんじゃんくて「自分は仕事ができるアピールが上手」なだけじゃんかと即判断するかもね。ついでにジャックときたら「アタシは価値のある女よ」というメッセージを公私ごっちゃにして受け止めて、それでいそいそと彼女の為に出勤前にお弁当を作っちゃうんだから。現実でもその程度で対等な新しい男女関係が出来上がったら苦労しないっす。

 メラニー・グリフィス自身を彷彿とさせるわ

 メラニー・グリフィスは母親がヒッチコック映画のヒロインとして有名だったティッピ・ヘドレン、なので当時は芸能一家から独力で出世した二世女優としてのアピールが凄かったのを覚えています。おまけに男好きするファニー・フェイスでグラマーな容姿だわ、十代の頃からドン・ジョンソンとくっついたり離れたりと男関係も早熟だわじゃ、色事なゴシップを肥やしにして大女優へと進んでくれることをハリウッド業界が期待するのも当然だったのでしょう。ただしそんな業界の期待に反して彼女の現在はどうやら「離婚した主婦」状態のまんまで女優復帰の話題は聞きません。たまに公の場に出ると顔が変わってるとか、ダイエットがキツそうな感じが伝わってくるだけです。メラニー・グリフィスの父親は広告マンだし母親は離婚後モデルをしていた時にヒッチコックに見出されたという女なので、本当言うと女優力&演技力を育てる環境DNAに恵まれていたとはとても思えません。イマ考えると本人自身が一番それについて漠然とコンプレックスに感じていたのではないかという気がします、最近は美人の娘さんが女優として売り出し中なので娘のバックアップに全力投球中なんでしょうか? 結果「アタシ仕事できます」アピールのみで勝負した「ワーキング・ガール」のヒロインてメラニー・グリフィス地でしかなかったんだね、ということになっちまうね。