お祓い/Purification される女 ② 「500日のサマー」のゾーイ・デシャネル

 

 恋の師匠はハン・ソロじゃなかった

 観た事は観たのですが、実はあまり記憶に自信が無い映画。なんたって一般映画ファンの感想や批評こそ(特に女性は男目線の映画でよく理解出来ないのだと主張するし、男性は女はこの映画皆好きなんだろと拗ねる)が面白くて、自分自身の映画の印象がついぼやけてしまってるのさ。で、主人公の男女二人がIKEAでデートするシーンだけは皆憧れるっていう(笑)。あとヒロインのサマー(ゾーイ・デシャネル)には深田恭子前田敦子+パヒュームのあーちゃん・・・という雰囲気が感じられ、オバちゃんの私には「今どきのモテる普通っぽい女の子の流行は何処でもこんなものなのだろうか?」というやや明後日の方向へ頭が跳んでしまいました。サマーは足のサイズの設定が26㎝だそうで、そこも深キョンと一緒なのだ・・・という余計な情報は覚えているっ。脚本家自身が大学院時代のエピソードを元に創作されたオリジナルストーリーで、やっぱり映画脚本について専攻しているだけあって様々な名作映画のオマージュが感じられるのですが、一応主人公トムにとってのヒーローはSWのハン・ソロとやはり卒業 [Blu-ray]でのダスティン・ホフマンの二人になるのでしょうか?・・・もっとも映画スタート時でのトムの恋の師匠はもっぱらハン・ソロです。んで映画最後まで観るとジョセフ・ゴードン・レヴィットがスター・ウォーズ/最後のジェダイ MovieNEX(初回版) [ブルーレイ+DVD+デジタルコピー(クラウド対応)+MovieNEXワールド] [Blu-ray]で声だけのカメオ出演を果たしたのかもよく分かります。失敗は成功の元だって伝えたかったとかw。

 

しかしトムって野郎は怠け者だよね

 ていう第一印象だったし、終始その印象が変わらなかったよ私は(笑)。だから恋のチャンスを失うのも「そりゃそうでしょ」としか感じない。現実にこんなカップルがいてサマーの話を聞いてたら「よっぽどの怠けぶりに愛想が尽きたんだね」と結論出しそう・・・というかトムみたいな知人が昔居たような気がしてきた・・・IKEAでデートばっかりしてたクセに将来の展望が何故ゼロなのだ?何故それなのにIKEAに行きたがるんだよトムっ!こんなにIKEAIKEAと連呼し続けてるのが自分でも馬鹿らしい。それっくらい私のようなオバサンには「近頃の若い男は何考えとるのか分からん」な行動なの。サマーだって「私だったら結婚願望丸出しだと思われそうでIKEAでデートしたいなんて言わないわね多分」て内心感じてたと推測するよ。トムに初めて声かけられた時も「ザ・スミス聞いてるの?」でエラく食い付いてくるんだけど、にサマーはソレが不思議でしょうがなかったんだと思う。日本だと(ひょっとしたらUSでも)そんな調子で近づいてくる男と気前良く付き合ってくれる娘そういないのさ。だからトムがサマーと付き合ってデートを重ねたのはホントにラッキーな事だったと思う。だってサマーはトムにちゃんと興味をもってくれてたじゃん。

 

おそらく「前の彼氏とは違うのね」だけだったと思うよ

 トム目線で二人の交際が描かれていくので、サマーの奔放な(主にセックスに関しての)行動についていけないと思う人は多いでしょう。でもサマーは最初から「本気の恋はお断り」で理由も「自分の両親が離婚した事がトラウマ」てはっきりトムに話している。サマーのそれまでの男性経験っておそらく彼女の言葉を真に受けた相手ばかりだったんでしょう。だから本当にセフレしかいなかった。(映画でなくて現実の話で恐縮ですが)彼女の前の彼氏と知り合いだった為に「あの人はああだったのに何故アナタはそうなの?男の人って普通皆そうするもんじゃない」とセックスについてガチで比較して問い正され、困惑したという男を私知っとりますが、素直で男性に好奇心を抱いている女性と付き合うとそういう目に遭うのかいな。何せその知人の彼女の両親も離婚して父子家庭で育ったそうです(笑)。だから本当に実際にあった事が映画になってるんでしょうね。

 

皆いろいろな映画のピースを見つけ出す、らしい。

 後半トムとサマーは一緒に名画座に出かけて「卒業」を観てから話が急展開していきます。オバサン族からすると、なあ~んだやっぱり結婚願望が「重い」娘じゃなああいと意地悪感想になってしまいますが、それでもサマーはどっか素直に男の人と対峙しているからああいう反応(映画鑑賞後に一人大泣きする)になるんでしょうね。男女が交際するにはどっかで未来、出口路線がないとやはり自然消滅するしかありません。トムの妹(クロエ・モレッツ)が説教する通り「楽しい事ばかり考えている」だけだとカップルは先がない。トムはサマーに「しばらく距離を置きましょう」と言われ数ヶ月そのまま会わないでいたものの、休暇旅行でサマーと偶然再会しサマーの友人の結婚式に混ぜて貰ったりして一時また楽しいデートの時間も過ごします。そこでまた一瞬トムはサマーとの復縁が「叶う」と勘違いしたりするんだよね~。で、その後一転急降下でトムにサマーが婚約したという報告が一方的に届くのだった。この辺の妙に昂揚しているようなのに淡々とした展開やトムのなで肩でいつもベストを着ているモラトリアムちっくな服装にアニー・ホール [AmazonDVDコレクション] [Blu-ray]の影響を見る方々(町山智浩氏とか)もいらっしゃるのですが私は分かんなかった、というかソレ聞いても自分はウディ・アレンの映画にとんと興味がないんだなと改めてそっちの方に気づきました。(ちなみに例のスキャンダルの所為ではないと思うん・・・だけどな(..;)

 

それにつけてもトムっはどこでしくじったのか?

 これは「500日のサマー」観た男女問わず様々意見あると思いますが、私個人はやはりトムのスケッチをサマーが見つけたシーンでのトムの振るまいが一番「いけなかったのだ」と判断しますね。実は最もトムにとってのアンタッチャブルな部分にサマーが触れようとして、トムが拒絶したわけだから。サマーはサマーでトムに拒まれた強烈な体験があったのですよ、だからその後一緒に「卒業」観に行って大泣きするんだもの。サマーはトムの建築家になりたい夢の中に入れてもらえなかったのよね。別に夢でなくとも良いのですが女性は男性に「今一番こだわってる事、ビジョン」を話してもらうと案外コロッといきます。まああくまでも結婚したくなるってことなので語る男性にとってもリスキーなんですが。だから女性はいい男で結婚の準備が出来ている状態の相手と結婚する、それだけのことです。からしょうがない、トムは前に進む為にユルいメッセージカード会社から建築事務所に転職しなきゃいけない。自分があきらめきれない夢の末席に入れても良いような新しい娘オータム(ミンカ・ケリー)に照準会わせようとすすんですね。コレがまた高嶺の花掴みな雰囲気で終わるので、懲りない男って皆は思うのでした。