BL版 ドキュメント野郎!! ⑤ 「フェイティング・アリ」

 

フェイシング・アリ [DVD]

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 モハメッド・アリの映画、たくさんアリ過ぎぃ・・・

 検索してみたところアマゾンでソフト販売されているタイトルだけでも45本(VHS含めて)ありましたよ、まさに「Mr.Boxing」てやつかい。↑の映画はバンクーバー映画祭で観客賞を取っただけあってあんまりボクシングやモハメド・アリに詳しくなくても解かりやすいし、かつて故梶原一騎先生のお言葉「ボクシングというものは試合前に勝負がほぼ決まっている」の意味が、こうゆうことだったのね・・・と実感できて、尚かつわくわくます。監督のピート・マコーマックはモハメド・アリの大ファンらしく対アントニオ猪木戦についてもリアルタイムでチェックを入れていて、全盛期を過ぎたアリの試合っぷりに心を痛めていたんだとか・・・へぇー私なんかアリについちゃ、「キンシャサ」とか「オリンピックで金メダル取った」とか主に当時のアメリカの公民権運動とかベトナム戦争の兵役拒否の話題にからんだ断片的なことしか知らなかったです。なんでこの映画に登場するアリと対戦したライバルのボクサーの名前でぼんや覚えてるのジョージ・フォアマンジョー・フレージャーだけだったわ。

コンセプトの勝利、そして10人のボクサーたち

 この映画では製作当時、既にパ―キンソン病を患ってはいても存命だったアリ自身のインタビューは無く、話をしているのは10人のボクサーの証言ジョージ・フォアマンジョー・フレージャー、ラリー・ホームズ、レオン・スピングス、ジョージ・シュパロ、ケン・ノートン、ヘンリー・クーパー、ロン・ライル、アーニー・シェーパーズ、アーニー・デレルで構成されています。そしてこの10人、それぞれ個性豊かなのですがやっぱその中でもボクシング強い男ほど賢いんだわ、何故か米国のチャンピオンは賢い人間がより強く、日本のチャンピオンは「無邪気で素直な性格の人間」がより強いのよね・・・一体何故?(笑)。特にキンシャサ以前の初期のアリとタイトル争いしてたジョー・フレジャーにジョージ・シュパロ、ヘンリー・クーパー卿あたりは記憶力も素晴らしいし、解説も的確・・・この頃までののボクサーは主に守備の技術力で勝負してたのかしらん?て思うくらいよ。実際彼らの証言の中には「アリは顎が他の人間よりも強靭で撃たれ強かった」て内容のコメントがあるもんね。もっとも金メダル後にプロデビューした当初はともかく全盛期のタイトル防衛線ではわざと不利な状況を演出して相手を油断させたり疲れさせたりしてたみたい。10人の証言者の中には「アリと試合できただけで感謝している」という人間もいていろいろです。生涯かけてずーっとアリをライバル視し続けているのはなんたってあのジョージ・フォアマンくらいしかいない。クーパー卿なんかキンシャサ戦の時のフォアマンについて辛辣にコメントしてたもん。きっと相当フォアマン悔しかったんだ、て知りました。二十世紀のボクシング&格闘技ファンにはおなじみのエピソードなのかもしれませんが。

アリと戦ったボクサーにも「歴史と人生」あり過ぎぃ

 捕まってムショ暮らしから筋トレ後、ボクシングに目覚めて30代ごろから頭角を現し始めたとか、離婚して息子と二人暮らしになってからアリの対戦相手に選ばれて助かったとか、アリに勝った新進チャンピオンがタイトル獲得後に、コカイン所持で捕まるとか・・・まあ彼らにもいろいろあります。ジョージ・フォアマンキンシャサ戦後に宣教師になったのは世間では本当に有名な話のようで、当然のごとくさらっと語られるのが実にけったいな印象をうけました。(笑)最初は夫と観ていたのでいろいろそばで教えてもらってたのですが、彼はアリの公民権運動や徴兵拒否の話題後は興味を徐々に失ったようで途中から一人で観ることになったのさ。まさか夫も私もアリがここまで余裕しゃくしゃくで王座に長年君臨してきた人だとは想ってなかったからかも。最近のアスリートだとボルトのような男もいるけど、この手の人間は日本人にはほぼ存在しないので想像がつかない処もあるんだよね。それでも映画のラスト近く80年前後のアリの姿はボクサーたちの証言からも「ボロボロ」のカンジがうかがえて哀しくはなってきますね。満身創痍なのにお金に引かれてリングに無様な姿を晒しているのが写真の再現でもはっきり判る。常にぎりぎりの日本人アスリートにはあんまり無いかも、そこだけはボクシングでモハメド・アリみたいにならなくてもイイやって皆思うかもね。

 しかしそれでもアリと戦った男たちの証言として猪木のも聴きたいと考える日本の格闘技ファンは多いんでせうね。【Amazon.co.jp限定】モハメド・アリ/Muhammad Ali Life of a Legend & 四角いジャングル 格闘技世界一(2枚組仕様) [DVD]を始めいろいろ揃ってますのでそっちでご確認を。「フェイティング・アリ」の監督は猪木戦をまったく認めていないんだそうですが、あれはあれで究極の闘いだったというお方もおられるようなのでいっそのこと試合の解説にチャレンジされてはいかがっ。