一体誰が観るんだこんな映画・・・でもちょっと観たかったなぁ
って思い、しょうがないからツタヤのネットレンタルで借りるかあと呑気にかまえてあるとき近所のGEOに行ったのさ(DVD返しに)、そしたらレンタルDVD5、6本あったのよ! もう借りちゃったわよぉ・・・ここで借りた方が確実に早いのに(涙)焦ったわ。何でもTwitter上で評価が上がり一部マニアが盛り上がっているらしい・・・確かこの映画の宣伝はTV芸能ニュースでひっそりと報じられただけで、一体どういうお話なのか何故こんな往年の日活黄金期を支えた女優陣が集合して雪深い山中で汚いババアを演んなきゃいけないのかが、詳細不明のまま公開を終えたのだった。昨年近所の古本屋が閉店セールをやっていて、そこで原作本をみつけて、「姥捨て山に捨てられた老女たちの集団が極寒の山中で何故か襲ってくるヒグマと死闘を繰り広げるというお話らしい」ということが判明・・・ババア軍団VS熊の血みどろの闘いって・・・そういう面白そうな内容なら早く言ってよぉ~!というぐらいのことだったんです。で、鑑賞後の感想なんですが確かにこれじゃぁ、配給元の宣伝部はどうやって映画アピールいいか迷うよなあって仕上がりではありますね。かなりマニア受けする部分も多々あるのですが、「そのマニア受け」で売り込むことには宣伝部のオジサンたちきっと大反対だったでしょう、ちなみに個人的にはスプラッターホラーとしてみる分にはちょっとまだ不満が残るところありだった。というかこの映画を支持している方たちそんなにスプラッター方面に詳しそうでもない、いわゆるアラサ―以上の日頃ストレスが溜まっているヤサグレ系女子が支持層の大半なのではないかしらん。
蓮立野は元は仏教用語で要は「お墓」ということらしいです。そしてお墓というものは野っ原にあるもの、なので「野辺送り」とは死んだら仏を墓地である蓮立野へと運ぶこと、デンデラ野はこの蓮立野が山形の遠野地方の方言でなまったもので、実際には明治時代までの遠野地方の村落では老人たちがお墓のすぐ近くのデンデラ野に小屋を建て、そこで自給自足の集団生活をしていたとか。で、小説「デンデラ」はそんな風習を踏まえた上での寓話というか、民俗学のトピックや伝承をパロディ化した作品なんだそう。ですので、主人公の斉藤カユ(浅丘ルリ子)が冒頭、息子におぶさって冬山に連れてこられ、そこで自死を迎えようとして死にきれず、「デンデラ」と呼ばれる婆さんだらけの集落の人びとに救われる・・・なんてくだりを観ても大抵のヒトは驚かないことでしょう。なんか楢山節考みたいだねぇ、とかね。そんでデンデラではいちから婆さんの集落を作り上げた御年百歳を超える三つ星メイ(草笛光子)を中心に、年取った自分たちを捨て去った村人たちに対して復讐しようと企んでおりましたとさ。まあその他にも山本陽子だの、倍賞美津子だの、実に錚々たる女優陣が出てきます。おまけに皆とにかく元気。ルリ子様など70を超えたというのに背筋もピンシャンとしているので、ロングショットではとても老人には見えないのだっ。(笑)当然ですが村から出てきたばっかりのカユさんは自分の生まれ育った村でまだ息子家族もいるというのに、木の枝でやりを作って村人を殺す訓練に励むような婆さん達にびっくりします。でもデンデラの人々の話を聞いていくうちに何だか訳が分かんなくなっていく。だいたい婆さん連中が昔話として聞かせる村のエピソードの数々がいちいちとんでもない内容なので、「いくら何でも村八分とか夜這いの風習ってそうゆうもんだったけかぁ?」と訝る方もおられましょう。デンデラ一の長老メイ様は御山に捨てられた婆さんは助けても爺さんは見捨ててた。村は有力な農家と坊主に支配されていて女は口出し一切できない超男社会だから、デンデラの存在自体も決して認めないだろう、だから何がなんでも村へ下りて行って村の有力者の男どもは皆殺しということにしないとね。もうこれだけで「血に飢えた」バイオレンス志向の女子達は喝采を上げちゃうかも。でもそんな時冬だというのに親子連れの巨大なヒグマがデンデラを襲いにやってくるのだっ。
死にたくないけど・・・でもホントは死にたいのかも
そういうバア様たちの内面の「揺れ」が映画の底流にしっかりと流れている為か、ヒグマの攻撃も確かに怖いことは怖いんですが、それ以上に元気な婆さんたちのヤサグレ方がヤバいのよ。熊の攻撃に逢って次々に婆さん死んでいくし、倍賞美津子の突進してくるヒグマに罠を仕掛けて一緒に焼け死んじゃうシーンなんかカッコ良すぎるくらいなのさ。歳は取っても日頃の鍛え方が皆さん違うというか、足腰丈夫だわ。だから気が付くと「極寒の中で舞台やってる」ように思えちゃうのがむしろこの映画の欠点かもしんない。往年の名女優が出ている(日活アクション全盛期からロマンポルノまで)ことで劇場へと足を運ぶようなヒトたちの中にはどうしても彼女達が若かった頃の面影を少しでも探したいという動機があったようにも推察しますが、その手の方にとってはまるで豪傑の最後のような女優達の見せ場に却ってがっかりしたかもしれません・・・で、私にとっても期待していたような部分が足りなかったの。だって、私が観たかったのはあくまでも「雪山版ジョーズ」だったんだもん!!
例えば「ヒグマ目線のカメラワークで怯える婆さんのアップが来るような・・・」
そういう「とってもチャらい」映像でアタシはキャアキャア怖がりたかったんだってばぁ!!それで見事ヒグマの餌食になる女優様が「往年のセクシー女優ここにあり」だったりを発見する方が嬉しいよ! 宮下順子様(私が小学生くらいの頃はロマンポルノでもTVドラマでも妖艶なご婦人役だった)なんて方も出演してたようですがどこに居たのかさっぱり分からなかった・・・というよりその方がずっと女優にとってリスペクト的な起用だと思うのは私だけなんでしょうかね?実は私NIKKATSU COLLECTION 神々の深き欲望 [DVD]と風の谷のナウシカ [DVD]をほぼ同時期に観てしまった経験もあるし、メイ役の草笛光子がたった一人野原で長々演技する迫力はもののけ姫 [DVD]なんてアニメにはさすが及びもつかない説得力を感じたので、非常にもったいないような気がしてなりませんでした。まあジョーズっぽくしたくなかったのは当然「予算の関係」ではなくて製作者側の「下品なB級ホラーの真似事」みたいなことが嫌いだったことが理由なのでしょう。でもでっかい熊の模型作って、血まみれの婆さんがうようよ出てくるのだって既に充分悪趣味でチャらいとおもうんだけどな。ちなみにジョーズ [Blu-ray]てのはアメリカの海水浴場に人食い鮫が襲ってくるので、それを退治に行こうとする三人の役者の演技だけで映画後半をもたせているような単純極まりない典型的なハリウッド映画でしかないけどさ。それでも三人の男たち(中年の警察署長、青年の海洋学者、老境に達しつつある鮫ハンター)が体現するのは「壮年期の男が守りたい家庭や日常」だったり「若さゆえの野心」だったり「老人の執念」だったりする。ここで突如現れる人食い鮫はそれぞれの人生の岐路をぶった斬るような不条理で理不尽な自然からの攻撃なんだもんね。ジョーズはそうゆう「ちょっと変わった視点から描いた人間ドラマ」の映画でもあるんだもん。各々辛くて壮絶な人生を歩んできた老婆の皆さんだって、「自然からみたら獲物になることもあるただの動物」でしかない目線で捉えることがあったら良かったのに。そういうちょっとしたワンカットだけで不条理に晒された人間のドラマが表現されることだってあるのさ。