都合の良い女①「ローマの恋」のミレーヌ・ドモンジョ

 ミレーヌ・ドモンジョはかのドロンジョ様のモデルです(名前のみだけど)

ミレーヌ・ドモンジョは日本だと懐かしフランス女優のなかでもかなりの人気女優さんです。日本映画にも特別出演したことあるし、来日経験もありますが、日本で彼女の出演した公開作品はそんなに多くないかもしれません。「ファントム」シリーズは有名ですが、役柄はヒーローのガールフレンドだし、本当の意味の主役級の映画だと「女は一回勝負する」とこの「ローマの恋」ぐらいかも。フランス本国では「ブリジット・バルドーのそっくりさん」扱いで、結婚後は女優活動をかなりの間控えていましたから、だんだん人気が落ちて顔を観なくなったって言っている人もいますが、最近60代にはいってもまだ現役で映画出演をしているそうです。写真でちらっと見ただけですが、大味でセクシーな残像を引きずっているというよりも上品でシックなおばあ様になっておられました。

「だから何なんだ?」ってカンジな恋愛風俗劇

 最初の男女の別れシーンで、ある意味テーマというか主人公その人の本質が出てるかもなの言動やセリフのやり取りがあります。よく覚えていないのですが、主人公のマルッチェロ(ピーター・ボールドウィン)は恋人に「いかにアンタってエゴイストなのか」とまとめて言われるというか、派手に愛想尽かしをされて、本人根暗にふて腐れちゃうのですが、その恋人に振られた直後にアンナ(ミレーヌ・ドモンジョ)というローマに出てきたばっかりの女の子をナンパして成功。嬉しくって早速再び彼女と(次の日ぐらいか?)できんのかなぁーと思ってアパートに行くと、今度はアンナが映画で共演した男優といちゃいちゃしている所に遭遇してガックリしてしまいます。そうアンナはひたすら女優を夢見て自分を引っ張り上げてくれる男にせっせと身体を開いちゃうオサセちゃんだったのでありました。だいたい会ったその夜のうちにマルッチェロを連れ込んじゃうのも上流っぽいインテリ男が自分をより向上させてくれると踏んだからです。それでも基本的に人が良いというか、男の人に対して常に受け身の態度のアンナに気が付くとのめり込んでいく主人公なのでした・・・えーそんな話、恋愛ものとして面白い? 最低じゃん、と思った方。その通り最低です、でも何となく最後までそれを楽しんで観れちゃうから不思議、そしてなーんにも考えてなさそうなバカっぽいミレーヌ・ドモンジョが最高に可愛い♡のさ。

 戦後のイタリア映画事情

 「ローマの恋」の監督はディーノ・リージさんという人で履歴を調べてみると結構クセものというか、やり手の映画作家さんらしかったみたいです。ハリウッドにも影響を与えていて「女の香り」という映画はリメイクされてアル・パチーノがオスカー(主演男優賞)を取った「セント・オブ・ウーマン」になったりだとか、日本でもカルト映画として有名な「追い越し野郎」という映画にデニス・ホッパーは強く影響されて「イージー・ライダー」を作ったんだそうな、へぇー。(晩年はヴェネチア映画祭で功労金獅子賞取っている)そっか―、そう聞くと主役二人を初め、役者陣の性格描写がハッキリしていて同じダメ男映画でも日本のヤツよかよっぽどマシだと思えてきたぞ。実は「ローマの恋」もTVで一度見たっきりでコレ書いてるくらいなので、いい加減な感想かもしれませんが、私からみるとマルッチェロって実家はそりゃ貴族でおぼっちゃまかもしれないけど戦後高度成長のローマにビビッてるのが見え見えの内気なプー太郎だもんね。アンナのことが性欲を多少超えて(恋愛感情か?)気になり続けるのも自分は今周囲から疎外されてるって気が付いてるのに、アンナの方は無邪気なまでにそのことがわかってないから。それでもアンナを忘れようとして都会の洗練されたご令嬢と婚約してみたり、唐突にファーストシーンで消えた元カノ(エルサ・マルティネッリ)が再び登場してマルッチェロはひたすら罵られたりするのですが、ある日雨降る街角で濡れて泣いているアンナのことはホッとけない。しばらく会わない間アンナは相当苦労したみたいで「映画女優はあきらめる」という彼女の言葉にすごく満足して彼女を手に入れられると思った束の間、結局アンナは自分を連れてってくれるという地方巡業の歌手に走ってしまって、それで映画はおしまい。まさにだから何なんだよ状態ですね。このアンナって女何考えてるのか分からんと思うか、マルッチェロみたいな男と完璧に切れて自由になれて良かったねアンナと思うか、こんな程度の低い男女のハナシを延々と見せられて時間損した!と思うかはアナタしだい。ちなみに「程度の低・・・」の感想を持ちがちなタイプの方は今回取り上げる「都合の良い女」映画は鑑賞おすすめできません。「都合の良い女」映画の楽しみ方としては①ヒロインの「コスプレ」が堪能できる。②その時代の一番ディープな社会批評になっている。③ここまで「男」ってヒドイもんかいってことがよく理解できる、です。1,960年代のイタリアの軽めの風俗映画のことを「ローマの恋」も含めて「イタリア式コメディ」というんだそうですが、全然笑えなくてもその前の戦後ど真ん中のイタリア映画には「イタリアン・ネアリズム」というなんか真面目な映画運動があったのでそれを止めて今度はこういうのか?と嘲られてたとか。でも私にはよく解かんないのでこのへんでやめましょう。

 今回ソフト化は一切されてない映画なので、閲覧可能な間(笑)はこの映画のミレーヌ・ドモンジョの可愛さをご堪能ください。衣装はイタリア映画のマエストロ、ピエトロ・トージが手掛けているだけあってブラとショーツの下着姿だけでもうっとりするくらいイイですよ。むしろ若い女の子たちが憧れる可愛さだと思う。