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結構悩んだ「ジャンヌ・モローは一体どう扱えばいいんだ問題」
本当のことを言うと、当初「ファム・ファタール」と「悪女」って別カテゴライズするのに確かなビジョンがあったわけじゃなく、ただファムファタールが主人公っていっても意外とヨーロッパ映画ってそれっぽいのが思いつかないないけどと思いながら書いていただけなのですが、そうやって自分の拙い映画鑑賞履歴を振り返るたびに「ジャンヌ・モローはやっかいかも・・・でも取り上げないとバカにされるし」うーん・・・てちょっと悩みました。これは当然褒め言葉なのですが、ジャンヌ・モローは結局ジャンヌ・モローっていうひとつのジャンルだからあえて悪女とかファム・ファタールとかって括らずとも、つーことですね。でも、取りあえずファムファタールのシリーズでは外しときました。今回改めて観直したり、初めて観たヤツもあったのですが外しといて良かったと思います。この作品もかなり以前に観た時と今回じゃ理解度が違いました、確か20代前半に観たはずなんですがその時はやたら大げさに着替えてばっかりいるなあ、この女。そんなに女性客のナルシズムを刺激したいのかい?って思ってました。そうゆうことだけじゃなかったんだね。
女ごころはやる気になれば解かることもある
えーとお話をあえてかなり乱暴に紹介しましょう(だから観た人は怒んないでね)「フランスの地方都市に結婚8年目で娘も一人いる人妻がいました。⇒子供が生まれたのが原因なのかは知りませんが、夫とは漠然とセックスレスになってしまいました。彼女は夫が自分にもう興味が無いのか、あるのかよく解かりません。夫は家に閉じこもっているより、パリへ遊びに行ったらと薦めたクセして、人妻がパリの生活に夢中になるのを観ると面白くなくて、なんか嫉妬をむき出しにしてくるような気がします。⇒彼女はパリの友人からスペイン人の二枚目と不倫しちゃえばとプッシュされますが、未だスペイン人の彼氏とはセックスする関係までいってません。⇒人妻は夫があまりにも怒りっぽいので、パリの友人とスペインの彼氏を自分の家に招待しなくちゃならなくなります。⇒そしてパリの友人たちを招待して家に戻る途中、考古学を勉強しているいけてない若い男と出会います。一緒に夕食に招待する羽目になってしまいます。それでブラームスの名曲がジャーンって流れてくるようになるわけですね・・・一回目に観たときにはこの人間関係の縮図がまったく理解できなかったためか「カスミ食って生きてる人妻っているんだ、さすがおフランスのブルジョアは違う」ぐらいにしか思いませんでしたが、今だったら日本人の主婦でもこの映画のジャンヌ・モローみたいなことアリかもって素直に感じる。この映画撮ったときのルイ・マル監督は26歳だったことを考えるとお前って本当スゲーじゃんですが、ルイ・マル当人は実際子持ちで年上の人妻と付き合っていたので(ジャンヌ・モローのことですが)単に自分にあったことそのまんま映画にしただけかもしれません。映画のイケてない若い男役の役者さんがルイ・マル監督に似てるしね、男の人は「この女だったら落ちるかも・・・」て思うとその彼女の状況は瞬時に理解できるのかもしれません。
彼女が着替えるだけで大事件、だから悪女
凡百の演技、演出だと女優のお着替え&鏡の前でお支度シーンというものは「なんかムラムラしてきちゃった♡ アタシあの人に惚れちゃったのかも」みたいな表現が意外と多くてそんなのオッサンしか喜ばんわ(怒) リアリティゼロじゃボケ!という辟易感しかなかったりするのですが、ジャンヌ・モローのは違います。序盤の夫の為に急いで着替える時、夫と愛人とが向かい合う「勝負のディナー」前にハイテンション状態で着替える時(あまりにもハイな為に夫と考古学青年の前で下着姿を晒しちゃうのだ)、就寝前にネグリジェに着替えたんだけど頭にきて腹の虫が収まらない時(ただ鏡の前で髪を梳かしているだけなのですが、ジャンヌ・モローの腋毛が処理されていないのが発覚! 日本人は皆驚いたさぁ)・・・あまりに感情の赴くままというか、自然過ぎるわ、自由過ぎるわというかホント圧巻の一人芝居なので何度観ても感心してしまいます。女性からすると、「女性特有のナルシズムが嫌味なく表現されている」でふつうに好感持てますで話が終わるのですが、これが「彼女とは果たしてヤレるのだろうか? ダメなのか?」ということばかり悶々としていじけている男性にとっては「すんごい悪女」の振る舞い以外の何物でもないのかぁ・・・ってこの年齢になって初めて理解できるようになりました。
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彼女が着替えると大事件、パート2てか
「恋人たち」以降ジャンヌ・モローの演技で鉄板といえば「彼女のお着替えシーン」ということになりました。特別美人でもナイスバディでもないのに彼女が映画のなかで着替えるだけで「興奮する」ということになったようで、「お願いだから着替えだけでなくブーツに履き替えというのもやってくれないか」という小間使の日記(1963) [DVD]でのブニュエル監督のラブコールもあったくらいです。「恋人たち」と同様にここでもジャンヌ・モローのお着替えシーンは見ものですが、映画の内容はとっても暗く、衝撃なのが彼女の「十字のガムテープみたいなニップレス姿」を鏡の前で観なきゃならないことです。つーかありゃ一体何だったんだか・・・。ちなみに「恋人たち」を撮った後にルイ・マルと別れたジャンヌ・モローはこの「マドモアゼル」撮影後には監督のトニー・リチャードソンと不倫関係になったそうな。彼女が着替えると何か事件は起こるのですね。