GOALを目指す女 ③ 「バトルオブセクシーズ」のエマ・ストーン

 

 それにしても絶好調なエマ・ストーン、それはまるで・・・

 まるで現在ハリウッドには「エマ・ストーン映画」なるジャンルさえ有るようってくらいに皆エマ・ストーン主演の映画には共通した型(パターン)があるって事なんですね。それは彼女の成し遂げた成功が思わぬ展開を呼ぶ、てヤツ。彼女の代表作であるラ・ラ・ランド スタンダード・エディション [Blu-ray]でもラストのミュージカルシーンに暗示されていたように、エマ・ストーン演じるヒロインがやり遂げた1人芝居の成功が彼女を自身も思いもよらない場所に連れて行ってしまい、彼女自身が変貌を遂げてしまうのですよ。エマ・ストーンが演るヒロインは短期目標に対しては明確だか長期目標については曖昧なのが特徴みたい。比較的日本人に近いといおうかあ(笑)。その代わり映画のエマ・ストーンはいつでも辛抱強いし、気がつくと周囲がアッと驚くような事をやってのけるのですよ。そんな彼女には70年代ウーマンリブ運動の真っ只中に活躍したテニス女王ビリー・キングの役はぴったりなのです。監督は夫婦コンビのジョナサン・デイトンヴァレリー・ファリス、映画「リトル・ミスサンシャイン」好きとホットチリペッパーズのファン、それからテニスのファンにも当然お奨めします。テニス好きにはボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男 [Blu-ray]のなんてのも最近有りますが、ビリー・ジーンだけでなく対戦相手ボビー・リッグス(スティーブ・ガレル)の話でもありますので。

全米テニス協会の設立は1967年

 そんでもって協会が設立して全米の男女シングル選手権も行われたのですが、女子の選手権の賞金は男子選手の8分の1であったのでした。女子チャンピオンのMrs.ビリー・キングは仲間にも促され、協会会長のジャック・クレイマーに掛け合いますが「女子テニスの試合は男子ほど人気がないんだかから、賞金額は順当な結果だろ」といなされてしまいます。怒ったビリーは他の女子選手と共に「女子だけのテニス試合ツアー」という巡業を敢行し全米を回るようになりました。彼女たちは専属のスタイリストを雇い独自のテニスウェアなど作る等工夫を重ねて次第に女子テニスの試合のファンを増やしていきます。1970年初頭はウーマンリブ運動が活発な時で、ビリーのように結婚したり、ライバルのマーガレット・コートジェシカ・マイナミー)のように結婚、出産しても女子選手としてのピークを迎えて活躍したりと、世論の後押しもあり一気に女子テニス界はイケイケ状態になったのです。んでそんな女子テニス界の活況を見て、自分にも再度チャンスが巡ってきたかも・・・と山っ気を出す人物が現れました。それが1967年にテニスの殿堂入りを果たし、普通に行けば「レジェンド」と讃えられても良さそうなかつてのテニスチャンピオンのボビー・リッグス。

テニスコートのペテン師

 引退してNYで金持ち相手との「賭けテニス」なんてのしながらテニスの後にコートでビールを楽しむような毎日を送っていたボニー・リッグス。でも1939年にウィンブルドンでシングル、ダブルス、男女ダブルスの三冠ハットトリックをやってのけた時には彼は21歳だった。家に帰ると妻プリシラエリザベス・シュー)には離婚を切り出されるし息子には呆れられる・・・なんて描写が続くと日本人には直ぐにはピンときませんが、彼の選手生活の絶頂期って第二次世界大戦でバッサリと断ち切られているんですよね。息子は父の事をそれなりに尊敬はしてるみたいだけど、父の選手時代はおそらく知らないでしょう。日本だったら日本プロ野球界黎明期に活躍した沢村投手が無事に兵役終えて帰還してきたようなレベル。これが日本の大河ドラマなら金栗四三田畑政治ごとき主人公になるのにっ・・・まあ、あまりにもエネルギッシュで勝ちに拘る人間だと己の自伝に「テニスコートのペテン師」って付けるしかないのかもしれないが。そんな強靱アスリートでも引退するや昔のファンにテニスコートでビール奢ってもらう程度の扱いになちゃうのが、アメリカのスゴいとこでもあるのかいな。

ビリーはビリーで・・・

 ビリーは夫ラリー・キング(オースティン・ストウェル)との結婚を経てより強くなって全米女子チャンピオンになったって言われている。でも彼女はある日美容師のマリリン(アンドレア・ライスブロー)と出会って交流しているうちに彼女に夢中になっていってしまうのさ。それで少し調子が悪くなって1973年度は全米女子王者の座をマーガレット・コートに奪われてしまう。コートは夫と共に全米テニスツアーを巡業していって生まれたばかりの赤ん坊をかかえてプレーしているから生活かかってんだよね。だから必死さが違う。次第にマリリンとの恋にのめり込んでいって、彼女にビリーはテニスを始めた時の頃の思い出話をするんだけど彼女がテニスを頑張った理由は貧しい育ちから脱出したいという上昇志向からきたものだし、このままテニスを続けていくモチベーションを保つにはどうしても次のチャレンジが必要になってくるんですよね。観ていると何故にそこまで高い目標がないとやっていけないんだろうこの女、て気にもなるんだけど。しかしこういう性質の人間は気がつくと、知らないうちに周囲の人達を巻き込んで影響を与えていくのさ。夫のラリーは直ぐにビリーの不貞に気づくのだけど、相手が女性のマリリンだもんだから、もうどうして良いか解らない。で、最初ボビー・リッグスに「テニスの男女対決試合」を申し込まれてビリーは即断るのですが、何かとお金が入り用なコート夫人はボビーの試合の誘いに応じ、負けてしまいます。その結果に怒ったビリーに新たな闘志の火がともるのでした。

1973年当時の試合を再現、試合以上に「楽天的な」お祭り騒ぎ

 そしてクライマックスのビリーVSボビーの試合になります。ビリーは挑戦を受けるや閉じこもって一人で練習を続け、ボビーはひたすらにインタビューやら自己宣伝やらスポンサーとの付き合い(というかスポンサーからの接待を満喫)に興じます。男女の体力差や持久力の差を考えるとボビーの振るまいは必ずしも奢りだと批判出来ない気もするし、ボビーの周囲も彼にキツくは注意しきれない。あくまでも彼自身が精々みっともない試合運びにならないようにと心配するだけ。試合前のエキシビションとうか、格闘技の選手入場みたいなお祭り騒ぎの様子など今時のテニスファンからみるとあまりにものどか過ぎて驚くかも。この時代の人々はまだ「大阪なおみと引退した松岡修三なら間違いなく大阪なおみのストレート勝ちだよね」という予想が当たり前では無かった、卓越した女子アスリートの技術力や持久力は大抵の非アスリート男子のソレを凌ぐのだと気がついていなかったからです。たとえその非アスリート男子がかつてのテニスの世界チャンピオンだったとしても。

どうしてそんなに「より高いハードル」に挑戦したくなるのさ

 ビリーは男女のテニス頂上決戦に勝ち、開場の皆が興奮状態で彼女を迎えるけど、それを避けて一人ロッカールームにまた閉じこもってしまう。そしてやっと一人っきりで喜びと感情を爆発させるのさ。とびきり嬉しいのは確かだけどこの後自分はどうして良いか解らなくて不安でもあるから。んで、再びコートへ戻っていく。皆に挨拶と内心に決意を秘めて。実話ベースの映画の常としてその後の実在のビリーとボビーの話題が写真と共に紹介されるのだけど、ビジュアルがひたすらに派手で内実は穏やかで慎ましい老後を送るボビーと、地味に語られるビリーの型破りなエピソードの数々の対比もスゴイ。とにかく何でも着実に粘り強い女性はやってる事がいちいち大胆ですね。彼女としては過去の事を感謝して一個ずつお返ししてかなきゃってだけなのかもしれないけど、そうなるんだぁ・・・って感想にはなりました。

 

GOALを目指す女 ②  「わたしは生きていける」のシアーシャ・ローナン

 

 これぞ典型的な「GOALに向かって付き進む女は強いのよ」映画

 若くして主演作多数、オスカーの常連なシアーナ・ローシャンの主演作にしてはマイナーな映画の部類に入るかもしれませんが、劇場公開時にはサターン賞(SF映画ファンが投票して決まるその年の優れたSF映画に贈られる賞)というのは受けてます。現在スパイダーマン:ホームカミング (吹替版)からスパイダーマンを演じているトム・ホランドが注目された作品でもありますね。原作小説もありますが、この映画を撮っている監督のケヴィン・マクドナルドの代表作が「ラスト・オブ・スコットランド」というウガンダの大統領で悪名高きイディ・アミンを題材にしたヤツだってのがミソです。この映画途中から(というか元々狙ってたのは)リアルなポリティカルSF映画になることでして、なおかつヒロインのデイジーシアーシャ・ローナン)の若い女性目線で語るというのが重要になるからです。ちなみに映画で想定されているのは過激派テロリストからの核攻撃を受け英国で「内戦」が勃発するですよ。

慎重で大人びた長男、元気いっぱいの次男役のトム・ホランド

 アメリカの十代の女の子デイジーシアーシャ・ローナン)は夏休みにイングランドの親戚であるペンおばさん(アンナ・チャンセラー)の家に滞在しようとやって来る。ロックが好きでヘッドホン付けていつも他人をシャットアウトする風のデイジーはおばさんのトコの次男アイザックトム・ホランド)の歓迎を受けます。田舎にあるペンおばさんの屋敷に着くと長男のエドマンド(ジョージ・マッケイ)と幼い妹のパイパー(ハーリー・バード)が居る3人兄妹。お姉さん来たと喜ぶパイパーはともかくとしても、やたら僕らと一緒に楽しくやろうよと誘うアイザックと反対に終始そっけない態度のエドマンドは観ているコッチには不穏に感じます。唯一の大人であるペンおばさんの仕事は政府の要人で書斎に籠もって仕事をしていることが多い。そんな中でも自分の家庭環境に対する不満(父親が再婚して継母とうまくやれない)でいっぱいのデイジーは部屋の中で拗ねているだけだったのですが。映画鑑賞してしばらくして振り返ると、デイジーがこの時にエドマンド達にやたらと歓迎されたのは彼女がアメリカの国籍を持っているからだったんだろうなと思いました。そう考えると特にアイザックの態度には腑に落ちる事がある。母親から政府の内情を知らされている兄妹達にとっては何かあったときにデイジーと一緒に行動していた方が安心だからです。アイザックはいざとなったら友達のジョー(ダニー・マケヴォイ)なんかと一緒に家族と自分の信じる自由を守る為に闘う覚悟が既に出来ていたみたい。エドマンドといえば、デイジーを呼び寄せた事に引け目を感じるのか最初は彼女に素っ気ないのですが、デイジーの家庭環境や彼女の寂しく人恋しい感情に触れて、結局は恋に落ちてしまう。彼も心理的には終始緊張状態にありますから余計にそうなる。公開当時の映画の批評として「ティーンエイジャーの恋愛模様と近未来の戦争とのエピソードがかみ合っていないみたいなんだが、原作小説もこの通りだしなあぁぁ」というぼやきがあったのですが、前半の夏休みの部分(およそ30分は超えてます)が無いと後半のデイジーの強さとアイザックエドマンドの脆さと純粋な正義感が裏切られていく様がきちんとアピール出来ないのでどうしても前半部分が必要なんですね。突然に戦闘というものが自分の鼻先に突きつけられた青年達の悲劇をヒロインの眼を通して描く物語でもあるからです。

後半はデイジーが「家」を目指して突っ走る

 映画はデイジーエドマンドがお互い何かの啓示を受けたかのように、恋の予感が走ったねぇ、なシーンが前半部のクライマックスで、それにドキドキしながらデイジーと兄妹達で夏のピクニックのランチを楽しんでいる最中に、ロンドンが核攻撃を受ける様子を目撃して一気に転調します。家に戻るとおばさんはそれでも政府中枢に戻らなきゃと子供達を残してロンドンへ向かいます。(核攻撃受けたロンドンへ行けるのかって突っ込みが入りそうですが実際に劣化ウラン弾の爆撃なんかもありますので)おばさんは誰が来てもアナタ達はなるべく家に居なさいと言い残すのですが、数日もしないうちに武装した集団がエドモンド達の村にもやってきて「成人した若い男性は入隊、子供や女性老人達は家から出て疎開するように」と命令されます。デイジーは拒否しますが、エドマンドとアレックスは入隊してデイジーとパイパーは結局「軍」が用意した村に集団疎開して毎日農作業に勤しむ羽目に。疎開した先の村で一見平穏そうな日々が続くものの・・・段々にきな臭くなってきて、ついにデイジーはパイパーを連れて疎開先からエドマンド達の家へ戻ろうと深い森を突っ切って脱出していくのでした。というわけでその後は冒険に次ぐ冒険というかひたすら緊迫したシーンでラストへ向かいます。一体どういう経緯で戦争が始まったのか誰と誰が対立してる構造なのかも説明はありません。まずデイジー達が疎開村を脱出しようと試みるきっかけになるような大事件が村で起こるわけでもなくデイジーの直感で決断してしまいパイパーは最初嫌がるのですから。何故デイジーがこのように突然に人が変わったように意志的な女性になるのか・・・というのもやはり外国で育って英国にやってきたからと感じました。余所からの視点が入るので「コレはおかしいのではないか?」とね。彼女はパイパーと比べてもいわゆる正常時バイアスに囚われていなかった。

戦争というより内戦、無政府状態に置かれた難民としての恐怖

 デイジーとパイパーは疎開の村から逃げ出して森をさまよう内にやがて自分達に迫っている本当の危機は何かをはっきりと悟るようになります。ゲリラの男どもが各地の疎開先をおそって若い女や少女達を略奪しているのを眼にするからです。自分達も武装した男達に捕まったら慰安所行きです。デイジーは余裕が無いので捕まっている少女達を尻目に隠れて森を進んでいくのですが、やはり男達に捕まりそうになり対峙していくシーンも出てきます。ここで肝の据わったデイジーが完成したわって感じになるので、なんか一安心みたいな気分に一瞬なりますが、でもそんな中思いがけない形でアレックスと「再会」なんかするので・・・あぁぁってなりますわね。逃走する時にデイジーが疲れ切ってくじけそうになり気を失いそうになると「エドマンドの声が聞こえる」みたいな事が起きたりして、やっぱり英国の女性は「ジェーン・エア」のような直感で結びつくような恋愛ものが好きなんだわって思いました。

 デイジーとパイパーが我が家にたどり着くとエドマンドと再会し、その後すぐに停戦条約が結ばれてあっけなく危機は終焉するのですが、再会したエドマンドのPTSDは深くてふさぎ込んでしまう。でも私はエドマンドを支えるわってデイジーの宣言で映画はお終い。ブレグジット前の英国映画なんでEU内のゴタゴタに巻き込まれた?EU抜ける抜けないで国内の対立が深まり内戦になった?・・・その辺は詳しく描かなかったんですがこの映画で深めようとした「リアリティ」はそんな所にはハナっから無いから、こんな世界でもわたしは生きていける、で良いのですよ。

 

君よ憤怒の河を渉れ [Blu-ray]
 

  最近はリアルな「ぽりてぃかるさすぺんす」映画がネット(2019/07現在)でも話題ですが、私としては↑のような西村寿行原作のフィクションが一部「現実化」してんじゃんかよ・・・ってトホホな気分の方が強くて毎日が憂鬱です。もう個人的に「二十代の頃の現皇后」にちょっと目鼻立ちが似ていると思う件の女性ジャーナリストが白馬に乗って新宿西口を激走するとか、そんでもって映画の主人公高倉健ばりにハニートラップ疑惑に揺れた〇川パパが横で「だーやらぁ~だやらだやららぁ~」ってスキャットしてくれるすんごい下らない夢を見て夜は癒やされたいです。私急ごしらえの社会派映画で憤怒するほど元気無いんだ、最近は。

 

 

 

 

GOALを目指す女 ①  「フリー・ファイヤ-」のブリー・ラーソン

 

フリー・ファイヤー(字幕版)
 

「GOALを目指す女」について

 ついにアベンジャーズ「エンドゲーム」が公開されめでたく大団円したのですが、その直前にぶち込まれて公開されたのがキャプテン・マーベル MovieNEX [ブルーレイ+DVD+デジタルコピー+MovieNEXワールド] [Blu-ray]。私は近所のシネコンで観に行きましてスクリーンの前方に何故だか30代くらいの女性が座り、ブリー・ラーソン/キャプテン・マーベルが活躍するや一人熱狂して大仰にリアクションを始めだしたので些か驚きました。いやぁ・・・イマ平日の昼間の上映回だしお嬢さんもわざわざこんなマイナーモードの中でアジって周囲の暇なオッサン&ジイサン達にマウントするのどうなのか?て、戸惑いも覚えたりして。最近は一部この手の「主張するユーザー」が劇場内でちらほら観られるようになり、まあそれも劇場で映画鑑賞する際の楽しみのひとつになれば良いのかもしれませんが。てなことで↑の映画を紹介する際に最初は「HEROになる女」てのを考えました。・・・でも待てよ?私の映画評ブログで「女でもヒーロー」なるシリーズをやって観てきた映画集めてはたして面白いのかしらん?と。だって私はこれまでも映画の登場人物の行動/action, behavior にしか興味の無い人間だったじゃなあい。ヒーローなんて抽象的かつ後付でいくらでも言えちゃう事をテキトーに語るよりも女達がどう動くのかについて語りたいの。だからGOALを目指す女。以前「ぶらぶらする女」って日本映画のシリーズでまとめたんですが、ドラマツルギー/構成のあり方が日本とハリウッドじゃ異なるといおうか、はっきりした目標もなくぶらぶらする女性キャラというのはハリウッド映画ではまずお目にかかりません。それは一体何故なのかここ数年疑問だったので日本映画の「ぶらぶら」に対抗して日本以外映画に登場する「GOAL目指すぜ」の女性キャラについて取り上げるという事にしました。

 ブリー・ラーソンはずうっと「闘う女」

 そう彼女はキャプテンと呼ばれる前から闘う女で。↑の写真でも見る通り武器が似合う女なのが彼女なのだ。そしてルーム スペシャル・プライス [Blu-ray]で主演いきなりオスカーをゲットした時から、何かと闘う事が「母性」へつながるという展開になってしまうのも彼女。闘いに参加するのを許すけど、そこで君は一体何を「守るの?」というのを問いかけられているんだとも言えるのかな。・・・しかしB・ラーソンに向かってひたすらそう問いかける男どものしつこさって異常な気がするんだが、とにかく全篇にわたって紅一点のギャングである彼女に「今何してんの?それどんな意味あるの?君が一番大事してるモノって何?」とずーっと絶妙なタイミングで男どもが話しかけている映画であります。製作がマーチン・スコセッシハイ・ライズ[Blu-ray]を撮ったベン・ヴィートリーが脚本監督しています。で、この映画、銃撃をくらった人間が死ぬのってじつの所案外時間がかかるらしいという点に着目して、ギャング映画でよくあるおきまりの銃撃戦シーンだけでまるまる一本映画出来上がるのでわっ、やってみようよというアイデア先行で企画されたそうです。キャストが完全に決定してから脚本が役者に合わせて練り上げられたそうで、一旦ヒロインに決まったオリビア・ワイルドからラーソンに変更された段階で映画の中のヒロインの役割が変ったというか、彼女じゃなかったらより男性中心の映画という印象がしてたもしれないと思いました。

簡単に状況だけ整理しましょう。

 真夜中の倉庫の内で10人の男女がひたすら撃ち合いをするだけの映画なので。登場人物の構成は3チーム+フリーランス1名に分かれると思ってください。んで、舞台は70年代後半の北米にあるどこかの港町・・・だと推測されますw。(でも製作はほぼイギリスで実質ヨーロッパ資本のハリウッド映画と言って良いんだけどね。)チーム1はIRAのメンバーのクリス(キリアン・マーフィー)とフランク(マイケル・スマイリー)、何せアイルランドから来ているくらいですから10人の中では比較的ラリっていない人達、彼らに銃器の購入の仲介をしてあげるのがジャスティン(B・ラーソン)でクリスはジャスティンの事は好き♡、というのは映画冒頭で抑えておこうw。チーム2は地元のアイルランド系ギャングのバーニーとスティーボ(サム・ライリー)、ティーボはヤク中の危ないDV男です。チーム3はヴァーノン(シャールト・コプリ)を頭とする多国籍の武器商人グループ5人組、元ブラックパンサーのマーティンやアーミー・ハマーが演る伊達男オード、ヴァーノンの右腕ゴードン、そしてアイルランド系で元々港町出身のハリー(ジャック・レナー)。ジャスティンの仕切りによりチーム1のクリスはチーム3のヴァーノンから銃器の購入をし、チーム2のバーニー達が用意した倉庫で取引をしようって集まった。特に銃器の取引については揉める要素がなかったんですが、ヴァーノンの手下のハリーがスティーボの顔を見て「自分の従姉妹をバーでナンパして断られた腹いせに暴行した」野郎だと気がついてブチ切れて二人が大げんかすることになり、そのうち10人全員で銃撃戦勃発というコトにぃ。

女の「堪忍袋の緒が切れる」時を描くのが秀逸

 映画の時代設定は70年代半ばですが「フリー・ファイヤ-」はさすがに21世紀に製作されたアクション映画(そして当初はより蠱惑的なイメージのオリビア・ワイルドがキャスティングされた事からもうかがえるように)でなおかつ悪女が登場するフィルムノワールぽい側面があってもよさそうなモノです。ま、実際に裏切る女とそれでも未練がある男が登場はいたします。しかし脚本にエイミー・ジャンプという女性も加わっているせいか、ノワール的な男女の対立の描き方がやたらドメスティックなんで笑っちゃうになってしまうのですね。延々と続く銃撃戦のきっかけは「血の気の多い」アイルランド系の男達の喧嘩でジャスティン以下、ヴァーノンやクリスには全く関係が無いことに一見巻き込まれているようなのですが、ひたすら忙しないガンファイトの中で潜在的な対立とか各々に溜まっているフラストレーションやら偏見&言いしれぬヘイト/憎悪が露わになってくるのです。特に冒頭の波止場のシーンでは紅一点で(主にクリスによる)羨望のまなざしの中で洗練された女ギャングとして登場するジャスティとそれに面白くない感情を抱くヴァーノンの対立が際立ちます。ジャスティンは首にスカーフを巻きジャケットにジーンズにブーツという地上最強の美女たち! チャーリーズ・エンジェル (シーズン1-3) ソフトシェルDVD BOX 全巻セット(もちろん70年代)のファラ・フォーセットのように決めているのですが、そんな彼女にヴァーノン曰く「相変わらず綺麗だね・・・でも太った?」って挨拶する。その台詞にB・ラーソンのアップが被ると二重三重にも悪意が倍増するよう。彼女決して太ってるわけじゃないし、首も細く長いのだからスカーフでそれを覆っちゃうと「損する」タイプなんですね、ファラ・フォーセットと違って。南アフリカ出身のヴァーノンはとびきりの人種・男女差別主義者で、ことあるごとに他人を威圧する。黒人のマーティンとの間もどこかよそよそしくて互いに信用していない感じ。ジャスティンの裏切りや動悸というのは今の時代の観客にははっきり解るというか、人知れず今の自分のポジションに対してムカついているというのが伝わってきます。暗闇の銃撃戦の間、大騒ぎしている男達のなかで一人無言のまま、目指す獲物っていうかお宝に突進していく彼女。他の男どもはジャスティンが殆ど返事を返さないのに不安になってきて「何処にいるの~答えてよ~君っていつもは優しいじゃんかぁ」みたいな事を言って騒ぎ出すのですが、ソレを聞いたジャスティンがああ!ホントうざい、限界だわ!って芝居をするのに、個人的にもすんごい共感しました。騙されちゃったね、でもいいんだ僕はそれでも君のことがすきだから・・・で終始通すクリスもスゴイ内気で、有る有る、有るよねぇそういうのって、思ったよ(笑)。

 

 

お祓いされる女⑦「寝ても覚めても」の唐田えりか

 

寝ても覚めても

寝ても覚めても

 

 2018年度に男子ウケが最も良かった恋愛映画

 映画製作以前に原作小説に付いていたコピーが「人は顔で恋に落ちるのか?それとも・・」って結構衝撃的な文面だったのを覚えています。映画公開後の現在は「顔が同じだから好きになったのか、好きになったからそっくりに見えるのか」ってのに変更されていますけど(笑)。どう考えてもても大抵の男性観客は怒り出しそうな気がしましたが、フタを開けてみると男性の映画ファンに一層高評価だったでした。でも特徴があってインテリ系の人達ねだいたい。私自身はと言えば原作小説のあらすじ知った段階から「なんだか大昔のキャンディ・キャンディ コミック 全9巻完結セット (キャンディ・キャンディ 講談社コミックスなかよし )を思い出すような」という事ばっかり気にして観に行ったので正直もの凄く驚きました。この映画のヒロイン朝子(唐田えりか)のモデル、私「キャンディ」の主人公キャンディス・ホワイト・アードレーなんじゃないかと思ったくらいです、おまけに彼女をとりまく友達さえ「キャンディ」に出てくる彼女の友達の同世代キャラクター達を彷彿とさせます。映画観た翌日そういう結論に至ったよ。とにかく東出昌大が演る鳥居麦と丸子亮平の二役がまるでクローン人間のようなでありまして、しかもこの東出の芝居を観ながら「キャンディの歴代の彼氏達(アンソニーとティリーとアルバートさん)がまるでキャンディの漫画に登場する順番とは異なって出てくるように思えて仕方ない」という事に衝撃を受けておりました。もはや「キャンディ」の漫画を知らない人間にはさっぱり訳が解らない説明になっています。(笑)が、朝子というヒロインは「顔で恋に落ちる」のではなく「新しい彼氏と幸せになった段階で、直ぐ側に近づいてきている筈の元の彼氏の事は忘れてしまって全く気がつかない」状態に陥ってしまう、そこがキャンディとの一番の共通点であったりするのでした。

朝子にとっての大恋愛(大阪)、亮平にとっての恋愛(東京)

 映画は朝子と麦の衝撃的な出会いから、麦の自由奔放な振る舞いに朝子が振り回され急に麦が朝子を置いて何処かに放浪しに出かけてしまって二人の恋は唐突に終わる、というのが序盤です。それから舞台は東京に移り、関西から東京に赴任してきた丸子亮平(東出昌大)が中心になって進んでいくようになります。んで観客は(朝子の過去を知りながら)亮平が訳ありの朝子に惹かれていく様子に付き合っていく。この映画実質は「男の為の少女漫画チックなメロドラマ」なんですね。亮平の周囲には他にも朝子の東京で出来た友人で亮平を密かに想う鈴木マヤ(山下リオ)亮平の会社の後輩で後にマヤと結婚する串橋(瀬戸康史)が登場します。亮平と朝子が始めて出会った時、朝子は当然のごとく昔の恋人とうり二つの亮平に驚きうろたえてしまい、それが亮平に強い印象を与え、彼女の事が気になっていく。もうこの辺から映画の真の主人公は亮平じゃんかになっていきますが、私にとっちゃこの映画を振り返ると「序盤を過ぎて亮平/キャンディだとアンソニーに相当するキャラクターが中心になっている」みたいに感じてしまってなんだかヘンな気分に陥るのでした。アンソニーってのはキャンディのローティーンの頃の彼氏で、正義感に溢れ周囲の女性達にはモテモテなのに質実堅実な貴公子。でも将来設計としては地主クラスの農家の御曹司で早世してしまってあっさり「キャンディ」の物語からは去ってしまうのですが。亮平の職業は酒造メーカーの営業ですが営業は営業でも酒造りの工程において農家と交渉する仕事の方が元々大好きって設定でそこもアンソニーっぽいです。もしやコレはアンソニーの逆襲なのだろうかっ、と東出昌大観ながらずっと頭の中に渦巻いていました。(笑)

東京の友人、大阪の友達

 んで、朝子の大阪時代、前彼の麦とも共通の知り合いなのが朝子の大学の同級生である島春代(伊藤沙莉)と同じく同級生で麦とも親戚関係にある岡崎(渡辺大知)です。春代と岡崎は映画後半にも登場しますが、彼らの運命の対比があまりにも残酷なので、コレに引っかかりを覚えると観る人が尚更困惑するのと朝子がやらかす後半の変節ぶりへの不信感が一層増すという不気味な効果を与えているのも鑑賞ポイントかもしれません。春代は自分は朝子ほどは可愛くないがその分コミュ力と人を見抜く力にプライドを持って常に堂々としている姿と、対する岡崎の子供っぽいだけではないマザコンぶり(田中美佐子演じる母一人子一人の母子家庭)も大阪部分ではいきいきと描かれているので私自身顛末はかなり寂しい気分になりました。しかしながら一日経ってみると「でもキャンディに登場する男女で一番性格の良い二人(ステアとパティ)は結ばれなかったわぁ、それに岡崎くんはお母さんが一番好きだからアレで良かったのかも・・・と一人で納得してたので、私の中の「寝ても覚めても」=「キャンディ・キャンディ」は止まらないのでありました。

キャンディへの「逆襲」

 原作、脚本、監督自身は「キャンディ」なんて漫画に全く影響受けずに映画製作した可能性が十二分にあるのでw(ただし年齢的に製作サイドはキャンディのアニメ等を子供の頃から知っている層ではあります)、「なかよし」よりは「少女コミック」ぽい少女漫画を連想する観客がいてもよろしいですよ、そりゃあ。ただ余計な事を付け加えると「キャンディ」に代表される70年代少女漫画の中には「女の子が自立しすぎるとオトコ運が悪くなるので適当に切り上げて王子様と結ばれろ」という隠れたメッセージが有りました。だから「なかよし」連載時に読んでいた「キャンディ」の愛読者の大半にとってキャンディって「不良のティリーと分かれた時点で物語は実質終了、後日談で幸せになる」漫画として最後に完結しました。70年代黄金期の少女漫画の中でも「キャンディ」って熱狂的な男性ファンがいる事でも有名なんですが、私顔は同じ系統の美形のまんま熱血優等生からやんちゃな不良青年へ気を移し最終的に年長の金持ちの嫁になろうとしているキャンディに生臭い女の欲望丸出しな姿を見いだしていたので20代に成長した段階ではヒロインとしてのキャンディにちょっと引いておりました。その頃はバブル絶頂期でもありまして、大人になる事と男を選ぶ事ががっちりとリンクする行動になっているのは結構しんどいものだったりしたのです。どんなタイプだろうがどっかで自分自身の「打算」がそこに見え隠れするもので、ソレが頭をよぎって悩み始めると止まらない。だから朝子が麦と再会してああいう行動に出るのは私的にはさほど違和感が無くその後しばらくして岡崎の家に見舞いに行き岡崎の母との会話で勇気を出そうとする朝子の姿にもとりあえずもう大人なんだから自分で落とし前を付けようって感じだったので、まあ良かったかなあと。ティリーと分かれたキャンディが徐々にさばさばしていくのと変わらないようなぁ(笑)。とは言え男性観客からすると麦の再登場してからの展開はブレードランナー 2049 (オリジナルカード付) [AmazonDVDコレクション] [Blu-ray]でのライアン・ゴズリング気分になりそうな程、キツいもんがあっただろうとは思います。麦曰く「お前(亮平)はクローンだから役目終了」てなもんよね。 

キャンディ・キャンディ 全6巻文庫セット

キャンディ・キャンディ 全6巻文庫セット

 

  幼い頃にキャンディが憧れた丘の上の王子様も「だからさあ、彼奴ら(アンソニーとティリー)はクローンでプロトタイプは俺」で再登場に映った読者が特に男子達には多かったのかもしれないわぁ・・・て「寝ても覚めても」観た翌日に思い至りました。彼ら案外ショックを受けていたりして。TVで人気の林先生は「キャンディキャンディ」の漫画がお気に入りなんだそうですが、林先生自身は優等生のアンソニータイプから一発当てたいギャンブラーのティリー、そしてアードレーのオジサンみたいなフツーの金持ちになってバブル時代を駆け抜けたのであって、キャンディ推し以外に男子では推しキャラは存在せず「キャンディが寄ってくるような自分にメタモルフォーゼしていくっ」という戦略に行ったみたいです。でもそんな無茶するキャディファン男子ばかりではないはずなので。「キャンディ」男子読者にとっての推しボーイキャラは一体誰が一位になるのだろうとは気になります・・アンソニーってそんなに重要だったのかと「寝ても覚めても」観て私一人で勝手に唸ったのでした。

 

 

 

 

 

 

 

お祓いされる女⑥ 「スウィート17モンスター」のヘイリー・スタインフェルト

 

 原題の「Edge of Seventeen」のままの方が

 この映画の場合は良かったんじゃないんですかねっ。第一に「スィート17モンスター」じゃ言いずらいし字面が良くないよ。なんでコレなのかな?としばし考えたのですがおそらくタイトル決めた人は主人公のネイディーン(ヘイリー・スタインフェルト)を一種の悪女、それもド天然の・・・に捉えていたのかもしれません。興行収入はそこそこでしたが批評家にはウケてトロント映画祭では観客賞を取りました。今の日本の女子高生からみたらどんな反応なんでしょう・・・となるのは、今どきの日本の十代を取り巻く環境から見ればヒロインの行動は痛いというよりはかなり危なっかしく、よくこんなんでどっかのオジサンや不良男に騙されたりつきまとわれなくて済んでんなあ、と驚く事も多いからです。よく考えたら地雷原を運良くくぐり抜けて少女が大人の女性になっていく物語が存在しているのがハリウッド映画の強みの一つかもしれません。制作者のジェームス・L・ブルックスはオスカー作品賞も手がけたハリウッドでは超有名プロデューサーで脚本監督のケリー・フレモン・クレイグのデビュー作。女性監督ですが彼女を取り巻く三人のイケメンであるネイディーンの兄(ブレイク・ジェンナー)、同級生のアーヴィン・キム(ヘイデン・セットー)、ネイディーンが片思いするニック・モスマン(アレクサンダー・ヤルヴァート)の描き分けが秀逸でした。このおかげでネイディーン担任教師ブルーナー(ウディ・ハレルソン)の親父な個性も活きるのさ。

昔、私の知ってた娘がネイディーンそのまんまだったの

 彼女は17歳ではなかったんだけど、ネイディーンと同じように兄貴が居て彼女の家族仲良くて多少ファザコン気味だった。そのおかげでどうして口を開くといつでも下ネタ全開になるのかだけは謎だったが。ネイディーンも毎日のように親友クリスタ(ヘリー・ルー・リチャードソン)と下ネタトークばっかりしてて学校では当然浮き上がっている。彼女のクラスメート大半に言わせると服装がまずダサいし何より子供っぽいらしい 。ネイディーンのお気に入りのスタジャンは男っぽいというよりまるで小学生の男子がカッコ良い~と喜びそうなワッペンがいっぱいくっついているヤツ。彼女にしたらそれはポップでオシャレなスタジャンなんだけど周囲には伝わらない。ネイディーンは自分では他の平凡の子達とは違う個性的なセンスを持っているという自負があるのでソレを解ってくれそうな(学校でも超然とした雰囲気の)ニックに憧れていて、同じクラスの優等生だけどもやや気弱なオタク気味のアーヴィンと仲良しなのだ。彼女の環境に何か「闇」が生じたとしたら13歳の時に父親が突然死したこと、そして一つ上の兄が親友のクリスタと電撃的に交際を始めたてことさ。

ひたすらに「明るいだけの家族」にだって闇もありゃ危機もある 

 父の死後一家の経済を支えている母(キーラ・セジウィック)はまた自分の新たなパートナー探しにも必死。んである日泊まりがけのデートに行くために家を一晩開ける事になってネイディーンと兄ダリアンと二人で留守番するんだけど、お互いに友人を家に夜遅くまで引き留めて競い合うように飲酒して騒ぐ。んでクリスタと一緒に一晩飲みあかして二日酔いになったネイディーンはクリスタとダリアンが一緒にベットインしているのを目撃して激しいショックを受けてしまう。兄貴の方が学校でも優等生でしかもイケメンなんでとっくに彼女がいてもおかしくはなかったんだけどネイディーンにとっては親友の裏切りだしキモくて受け入れられないのだ。コメディタッチで軽く展開しているように一見みえるけどかなり異様なんだよこの設定。クリスタは「何だか解らないけど彼とそうなってしまったし私は交際を止めない」てネイディーンに告げるしね。以前はネイディーンと一緒に妄想過剰な下ネタトークや兄貴への悪口言っていた彼女は一夜にして自分よりはるかに「大人の女性」になっちまった。その夜以来ネイディーンには完全に居場所がなくなってしまう。

「妄想」から「クリアすべき課題」にシフト

  というわけでネイディーンが一見暇そうな教師のブルーナーにしか相談出来なくなってしまうのが映画の冒頭部分。USの高校では教師と生徒が一対一でカウンセリングするのが普通の事なのかは知らないが、誰も私の話を聞いてくれないので先生にひたすら話してみたという女の子の話は日本でも聞くので偶に居るのだろうこの手の娘。家に帰ってもやることが無いからアーヴィンに電話してみたり、彼の住む豪邸で遊んでみたり夜の遊園地に行ってデートしてみたりする。しかしネイディーンって娘には異性に警戒心がまるっきり無い。何故にこれほどまでに無いのか?家族は母以外に死んだ父と兄貴しか存在せず昔っから自分に危害を加える危険な異性というものを知らないからなんだろうか。でも実際のところネイディーンはどっかで実の兄貴の事は「警戒している」んだよ、無意識のうちにだけどね。ネイディーンは本来思春期ならば当然通る「男親を忌み嫌う」時期の真っ最中なんだけどそれを兄貴へ向けている。ただそれは一個上だけの兄貴当人にはもの凄く負担なんだ、だって自分だって妹以上に内心悶々としてるのだから。でなきゃ妹としょっちゅう一緒にいる幼なじみの女の子とどうしても付き合いたいっ、て思い詰めたりなんかしないよ。この兄貴どうして自分の母親と妹を守る事ばかり気にかけて自分の将来は後回しなのか?って所は気にはなるんだけど・・・(やっぱり女性からみた男性像だからなのかな)でも意外とこの手のタイプの若い男の子は多いとは私も思うんだ。んで、彼らは恵まれていない部分もあるのにあまりソレについては悩まない。彼女やら家族やらを起点にして将来設計する気しかないって分気楽で居られるというのもあるのかなあ?

ネイディーンをとりまく男子

 思春期前期に父親が急死してしまったせいで、かなりのファザコンになってしまったネイディーンの事を気に入る男子は何故か兄貴、というより父親そっくりなタイプだったりするのですよね。自分にちょっかい出してきて甘えて振り回してくれるのが嬉しいってヤツ。アーヴィンて男の子はアジア系のお坊ちゃまで両親共働きで夫婦二人で出張に出かけるのに一人で数日留守番してても大丈夫なくらいに自立している。デカい屋敷に住んでてジャグジー温水プール着いているとか。学校にいるときはオタクのような地味で内気な振る舞いをしてるけど実態は王子さまです、でもネイディーンには「あなたってgentle/おじいさんみたい」と言われちゃう。(字幕では確か年寄りとかジイサンみたいって訳で出てました。今の米国だとホントに十代の男の子へgentleて言うとショックを受けるのかもしれないのですが)ぶっちゃけ真面目な兄貴にも人種が違うだけでそっくり。彼女が片思いしているニックに至っては、実は三人の男どもの中では最もオタク度が高くて内気で子供っぽい。不良ぶってるけど不良でさえない。だから彼女はもの凄い地雷源を知らない間にすり抜けて大人の第一歩を踏み出して映画は終わります。殆ど些細な葛藤で丸く収まるのが奇蹟のよう。しかも兄貴と妹は互いに協力しながら二人とも父親不在の危機を乗り越えていたというのも最後に理解が出来るという。それから父親の代わりを堂々と担うブルーナー先生とかね。まあこんなの今の日本じゃ有り得ないわゎぁぁ・・・って感動したりもしますが、同じような兄貴と妹の家族ドラマでヘレディタリー 継承 [Blu-ray]なんて映画も最近のハリウッド映画のヒット作にはまた有りますから、家族の持つ明るい希望とどす黒い闇との対比と双方距離の「近さ」にもまた私は思いをはせるのでありました。

 

 

 

 

 

2018年に劇場で見た日本以外映画 ③

エースを狙え!を覚えているかい? 

 日本語吹き替え版は既にあるようですが、スティーヴ・ガレルの声は中尾隆盛さまではないのでしょうか?是非お願いしたかったのよっハーヒフヘホ ー。だってこちとらTVアニメ出崎統版の「エースをねらえ!」で育ったんだもん。そこのエピソードの一つにこの映画の男女テニス対決をモデルにしたのがあるのよ。映画は2018年度観たヤツではアイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル[Blu-ray]と並ぶ爽快感がありましたw。ホント言うとどっちも爽やかスポ根ものだったです。まあ私にとっては、ですが。渋め好みの男性むけにもボルグとマッケンロー テニスで世界を動かした男たち (ハーパーコリンズ・ノンフィクション)の映画化の公開がありそっちも観に行きましたが、シニア夫婦でいらっしゃった二人組、奥様だいぶ寝ておられました。

  この映画ヤングなハン・ソロじゃないじゃん、ベビーブーマー向けじゃん。だから最後に寂しくなる映画です。ベビーブーマー世代の夫がかなり観た後にへコんでいて自分との世代の違いを実感しました。「スパイダーマン/スパイダーバース」の監督からL・ハワードに交代したのは当然ちゃ当然だったのでしょうが脚本段階で気がついて宣伝の戦略とかも少し考えた方が良かったような気も。(その辺日本の洋画配給会社の宣伝は良くも悪くも宣伝手法が細か過ぎw)んでL・ハワードの娘さん最近人気がありま 

 して主役のクリス・プラットとの息もぴったりと思いきやもはやこのシリーズはブライス・ダラス・ハワードの人気が引っ張っていると言っても(少なくとも日本のファンの間ではね)過言ではないくらい。ヴィレッジ [DVD]の時には大草原の家のローラみたいな感じで幼かったイメージだったですが前作のジュラシック・ワールド (吹替版)では久しぶりにこんな粋な感じのキャリアウーマン観たわ~って思いました。おかげで「ジャングルで恐竜に襲われてもハイヒール脱がないのかよ」な批判も一部ありましたが、この映画でも都会でのオフィスワークは常にヒールを貫いておりましたw。そしてもう一人旬のハリウッド美女といえば↓のエミリー・プラント。

 何故だか日本でもジワる感じのヒット作になったようです。同じ週に観たスカイライン-奪還- [Blu-ray]とは全くテイスト異なるのですが、製作における戦略に共通点があるといおうかよく考えてみたら同ジャンルw。はたしてどっちも好きっていうお方は多いんですかね。(やっぱり少ないのかな)プーと大人になった僕 MovieNEX [ブルーレイ+DVD+デジタルコピー+MovieNEXワールド] [Blu-ray]はエミリー・プラント版の「メアリー・ポピンズ」と同様の自由主義経済社会におけるワークライフバランスを強く啓蒙するいわゆるディズニー「ど真ん中」映画でした。んで自由主義経済社会における個人にとっての結婚の幸せとは?を説くのがクレイジー・リッチ!ブルーレイ&DVDセット (2枚組) [Blu-ray]なんですが、りっちがリッチよりも立地と素早く変換される日本だとこの幸せのハードルは(いろんな意味で)高いようなぁ。

  んで、公開2週目に息子と一緒に行ったらウチの子以外は高校生以下の観客ゼロで息子自身は思わぬゲイエピソードにやや耐えられず、貧乏強請を始めるのでいろいろ誤解されるからヤメテヨ~になった皆様ご存じでしょうっボヘミアン・ラプソディ (字幕版)

。脚本的にどこが破綻しているかもよく理解できずにフツーに面白かったヴェノム ブルーレイ&DVDセット [Blu-ray]ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生 エクステンデッド版ブルーレイセット (2枚組/日本限定メイキングブックレット付) [Blu-ray]ね、でも私前作劇場で観たのに紹介すっとばしても気がつかないくらいにこのシリーズに興味ない・・・けど息子は大好き♡だから責めないでw。怖いんだけど日本の家族状況の方がより身につまされるのか、感想がどこも家族大変っすよね参考になりますってついなるのがヘレディタリー 継承 [Blu-ray]・・・っとこれが2018年度の秋口にかけて劇場でみたヤツでーす。

 その中のひとつ、セドリック・クラピッシュの映画は今のフランス映画の中では取っつきやすくて好きなタイプです。主人公がいつもちょっとだけ鼻につくような気もしないではないですがw、世代が近いからかな。今回のワイン農園の相続を巡って右往左往する3兄弟の長男についてもやっぱりクラピッシュの映画に出てくる「ちょっとだけナルシスト」の駄目男です、それでも彼なりに苦闘してきた子供時代とヒッピー風を装いつつ要領もそれなりに良くて、でも少し偏屈で頑固という性格が一方で兄弟やパートナー&子供をいつも気にしている故なんだと解ってくるのでまあ最後には応援したくなりました。鑑賞後は爽やかだけど、あっさりした印象の所為なのか「子供が皆可愛かったわね」と感想を延合うシニア女性達に出くわしました。おばあちゃんの映画ファンは面白かったけど何といって良いか解らない映画だと「登場する子供可愛い」の感想で済ませる傾向があるみたいです。

 

 

 

 

2018年に劇場で見た日本以外映画 ②

キム・ミニの声にひたすら魅了され  

それから [DVD]

それから [DVD]

 

  ホン・サンスという監督の名前は聞いていたものの今まで観る機会を逸していたのですが、思わぬスキャンダルが却って日本の映画ファンの関心を引いたのか(ごめん違うかもしれないw)【Amazon.co.jp限定】夜の浜辺でひとり(A4サイズクリアファイル付き) [DVD]正しい日 間違えた日 [DVD]も合わせて3本観ました。しかしながら↑の映画の出来が最も日本人の感性にも合う気が自分でもして一番好きでした。ダテに夏目漱石をモチーフにはしていないのかも。ホン・サンスに限らず韓国の映画作家には海外留学経験者の秀才が目立つイメージがあり、何と無しにその傾向に反発する日本の映画ファンが多いんではないかと邪推してたんですが(笑)、今回私は「それから」を筆頭にキム・ミニの声と韓国語も分かんないのにひたすらに可愛い台詞回しを楽しんでおりました。特に「それから」のラストでタクシーから外の雪景色を眺める彼女の顔は山田五十鈴もかくやの美しさでちょっと興奮してしまいました。

ラブレス [DVD]

ラブレス [DVD]

 

 この映画も何故だか(ネット上で予告編観て気になったらしい)息子に見に行くように命令され、何故?と思いながら観に行ったら劇場は盛況で鑑賞後、こりゃあ日本人好きそうなヤツだわもっと言えば今どきのロシアと日本は市民感情的に似すぎよねぇ・・と些かウンザリした気持ちにもなる。

  ↑の映画も現代新冷戦下のロシア、ヨーロッパが舞台の映画。英国の飲んだくれ女性外交官に「ロシアってさ女の子は皆可愛いのになんで男の方は不細工ばっかなの?」って嘲られても何も言えないロシア中年男が登場し日本のオッサンにも通じるものがあって哀しくなりました。US日本とも#me too 真っ盛りの折に公開されて主役のJ・ローレンスがど緊張しながら宣伝していたのが印象に残ります。ただ個人的には「ラブレス」より「レッド・スパロー」の方が断然好き、#me too 応援します映画だよっ。それからスターリンの葬送狂騒曲 [Blu-ray]旧ソ連&ロシアもの映画を結構観てたね、2018年はこの手のヤツが皆面白かったです。

  マーク・ハミルが圧倒的な存在感で全体を引き締めるホンワカ映画の↑やらD・デイ=ルイスがいつまでも繊細過ぎる少年のようなオッサンファントム・スレッド ブルーレイ+DVDセット [Blu-ray]、同じく同傾向のデッドプール2 3枚組ブルーレイ&DVD [Blu-ray]と男性主人公のハリウッド映画は平常運転かもって気がしました(笑)。その中でも一番ヒーローとして感じが良かったのはやっぱりビューティフル・デイ [Blu-ray]でのホアキン・フェニックスですかねぇ。

エリック・ロメール コレクション 海辺のポーリーヌ [DVD]

エリック・ロメール コレクション 海辺のポーリーヌ [DVD]

 

  2018年にやっと観たリバイバル映画として取り上げるのを忘れとりました。この映画については改めてどこかで書きたいです。それから同じく海洋ものとしてMEG ザ・モンスター ブルーレイ&DVDセット (初回仕様/2枚組/ステッカー付き) [Blu-ray]も親子三人で観に行ってあのJ・ステイサム主演であのヒロ様の熱演があるからって映画全体の面白さの保証は出来ないのだと深く反省しましたぁ・・・。ちなみに観たいって言ったのは夫ですから。