GOALを目指す女 ①  「フリー・ファイヤ-」のブリー・ラーソン

 

フリー・ファイヤー(字幕版)
 

「GOALを目指す女」について

 ついにアベンジャーズ「エンドゲーム」が公開されめでたく大団円したのですが、その直前にぶち込まれて公開されたのがキャプテン・マーベル MovieNEX [ブルーレイ+DVD+デジタルコピー+MovieNEXワールド] [Blu-ray]。私は近所のシネコンで観に行きましてスクリーンの前方に何故だか30代くらいの女性が座り、ブリー・ラーソン/キャプテン・マーベルが活躍するや一人熱狂して大仰にリアクションを始めだしたので些か驚きました。いやぁ・・・イマ平日の昼間の上映回だしお嬢さんもわざわざこんなマイナーモードの中でアジって周囲の暇なオッサン&ジイサン達にマウントするのどうなのか?て、戸惑いも覚えたりして。最近は一部この手の「主張するユーザー」が劇場内でちらほら観られるようになり、まあそれも劇場で映画鑑賞する際の楽しみのひとつになれば良いのかもしれませんが。てなことで↑の映画を紹介する際に最初は「HEROになる女」てのを考えました。・・・でも待てよ?私の映画評ブログで「女でもヒーロー」なるシリーズをやって観てきた映画集めてはたして面白いのかしらん?と。だって私はこれまでも映画の登場人物の行動/action, behavior にしか興味の無い人間だったじゃなあい。ヒーローなんて抽象的かつ後付でいくらでも言えちゃう事をテキトーに語るよりも女達がどう動くのかについて語りたいの。だからGOALを目指す女。以前「ぶらぶらする女」って日本映画のシリーズでまとめたんですが、ドラマツルギー/構成のあり方が日本とハリウッドじゃ異なるといおうか、はっきりした目標もなくぶらぶらする女性キャラというのはハリウッド映画ではまずお目にかかりません。それは一体何故なのかここ数年疑問だったので日本映画の「ぶらぶら」に対抗して日本以外映画に登場する「GOAL目指すぜ」の女性キャラについて取り上げるという事にしました。

 ブリー・ラーソンはずうっと「闘う女」

 そう彼女はキャプテンと呼ばれる前から闘う女で。↑の写真でも見る通り武器が似合う女なのが彼女なのだ。そしてルーム スペシャル・プライス [Blu-ray]で主演いきなりオスカーをゲットした時から、何かと闘う事が「母性」へつながるという展開になってしまうのも彼女。闘いに参加するのを許すけど、そこで君は一体何を「守るの?」というのを問いかけられているんだとも言えるのかな。・・・しかしB・ラーソンに向かってひたすらそう問いかける男どものしつこさって異常な気がするんだが、とにかく全篇にわたって紅一点のギャングである彼女に「今何してんの?それどんな意味あるの?君が一番大事してるモノって何?」とずーっと絶妙なタイミングで男どもが話しかけている映画であります。製作がマーチン・スコセッシハイ・ライズ[Blu-ray]を撮ったベン・ヴィートリーが脚本監督しています。で、この映画、銃撃をくらった人間が死ぬのってじつの所案外時間がかかるらしいという点に着目して、ギャング映画でよくあるおきまりの銃撃戦シーンだけでまるまる一本映画出来上がるのでわっ、やってみようよというアイデア先行で企画されたそうです。キャストが完全に決定してから脚本が役者に合わせて練り上げられたそうで、一旦ヒロインに決まったオリビア・ワイルドからラーソンに変更された段階で映画の中のヒロインの役割が変ったというか、彼女じゃなかったらより男性中心の映画という印象がしてたもしれないと思いました。

簡単に状況だけ整理しましょう。

 真夜中の倉庫の内で10人の男女がひたすら撃ち合いをするだけの映画なので。登場人物の構成は3チーム+フリーランス1名に分かれると思ってください。んで、舞台は70年代後半の北米にあるどこかの港町・・・だと推測されますw。(でも製作はほぼイギリスで実質ヨーロッパ資本のハリウッド映画と言って良いんだけどね。)チーム1はIRAのメンバーのクリス(キリアン・マーフィー)とフランク(マイケル・スマイリー)、何せアイルランドから来ているくらいですから10人の中では比較的ラリっていない人達、彼らに銃器の購入の仲介をしてあげるのがジャスティン(B・ラーソン)でクリスはジャスティンの事は好き♡、というのは映画冒頭で抑えておこうw。チーム2は地元のアイルランド系ギャングのバーニーとスティーボ(サム・ライリー)、ティーボはヤク中の危ないDV男です。チーム3はヴァーノン(シャールト・コプリ)を頭とする多国籍の武器商人グループ5人組、元ブラックパンサーのマーティンやアーミー・ハマーが演る伊達男オード、ヴァーノンの右腕ゴードン、そしてアイルランド系で元々港町出身のハリー(ジャック・レナー)。ジャスティンの仕切りによりチーム1のクリスはチーム3のヴァーノンから銃器の購入をし、チーム2のバーニー達が用意した倉庫で取引をしようって集まった。特に銃器の取引については揉める要素がなかったんですが、ヴァーノンの手下のハリーがスティーボの顔を見て「自分の従姉妹をバーでナンパして断られた腹いせに暴行した」野郎だと気がついてブチ切れて二人が大げんかすることになり、そのうち10人全員で銃撃戦勃発というコトにぃ。

女の「堪忍袋の緒が切れる」時を描くのが秀逸

 映画の時代設定は70年代半ばですが「フリー・ファイヤ-」はさすがに21世紀に製作されたアクション映画(そして当初はより蠱惑的なイメージのオリビア・ワイルドがキャスティングされた事からもうかがえるように)でなおかつ悪女が登場するフィルムノワールぽい側面があってもよさそうなモノです。ま、実際に裏切る女とそれでも未練がある男が登場はいたします。しかし脚本にエイミー・ジャンプという女性も加わっているせいか、ノワール的な男女の対立の描き方がやたらドメスティックなんで笑っちゃうになってしまうのですね。延々と続く銃撃戦のきっかけは「血の気の多い」アイルランド系の男達の喧嘩でジャスティン以下、ヴァーノンやクリスには全く関係が無いことに一見巻き込まれているようなのですが、ひたすら忙しないガンファイトの中で潜在的な対立とか各々に溜まっているフラストレーションやら偏見&言いしれぬヘイト/憎悪が露わになってくるのです。特に冒頭の波止場のシーンでは紅一点で(主にクリスによる)羨望のまなざしの中で洗練された女ギャングとして登場するジャスティとそれに面白くない感情を抱くヴァーノンの対立が際立ちます。ジャスティンは首にスカーフを巻きジャケットにジーンズにブーツという地上最強の美女たち! チャーリーズ・エンジェル (シーズン1-3) ソフトシェルDVD BOX 全巻セット(もちろん70年代)のファラ・フォーセットのように決めているのですが、そんな彼女にヴァーノン曰く「相変わらず綺麗だね・・・でも太った?」って挨拶する。その台詞にB・ラーソンのアップが被ると二重三重にも悪意が倍増するよう。彼女決して太ってるわけじゃないし、首も細く長いのだからスカーフでそれを覆っちゃうと「損する」タイプなんですね、ファラ・フォーセットと違って。南アフリカ出身のヴァーノンはとびきりの人種・男女差別主義者で、ことあるごとに他人を威圧する。黒人のマーティンとの間もどこかよそよそしくて互いに信用していない感じ。ジャスティンの裏切りや動悸というのは今の時代の観客にははっきり解るというか、人知れず今の自分のポジションに対してムカついているというのが伝わってきます。暗闇の銃撃戦の間、大騒ぎしている男達のなかで一人無言のまま、目指す獲物っていうかお宝に突進していく彼女。他の男どもはジャスティンが殆ど返事を返さないのに不安になってきて「何処にいるの~答えてよ~君っていつもは優しいじゃんかぁ」みたいな事を言って騒ぎ出すのですが、ソレを聞いたジャスティンがああ!ホントうざい、限界だわ!って芝居をするのに、個人的にもすんごい共感しました。騙されちゃったね、でもいいんだ僕はそれでも君のことがすきだから・・・で終始通すクリスもスゴイ内気で、有る有る、有るよねぇそういうのって、思ったよ(笑)。

 

 

お祓いされる女⑦「寝ても覚めても」の唐田えりか

 

寝ても覚めても

寝ても覚めても

 

 2018年度に男子ウケが最も良かった恋愛映画

 映画製作以前に原作小説に付いていたコピーが「人は顔で恋に落ちるのか?それとも・・」って結構衝撃的な文面だったのを覚えています。映画公開後の現在は「顔が同じだから好きになったのか、好きになったからそっくりに見えるのか」ってのに変更されていますけど(笑)。どう考えてもても大抵の男性観客は怒り出しそうな気がしましたが、フタを開けてみると男性の映画ファンに一層高評価だったでした。でも特徴があってインテリ系の人達ねだいたい。私自身はと言えば原作小説のあらすじ知った段階から「なんだか大昔のキャンディ・キャンディ コミック 全9巻完結セット (キャンディ・キャンディ 講談社コミックスなかよし )を思い出すような」という事ばっかり気にして観に行ったので正直もの凄く驚きました。この映画のヒロイン朝子(唐田えりか)のモデル、私「キャンディ」の主人公キャンディス・ホワイト・アードレーなんじゃないかと思ったくらいです、おまけに彼女をとりまく友達さえ「キャンディ」に出てくる彼女の友達の同世代キャラクター達を彷彿とさせます。映画観た翌日そういう結論に至ったよ。とにかく東出昌大が演る鳥居麦と丸子亮平の二役がまるでクローン人間のようなでありまして、しかもこの東出の芝居を観ながら「キャンディの歴代の彼氏達(アンソニーとティリーとアルバートさん)がまるでキャンディの漫画に登場する順番とは異なって出てくるように思えて仕方ない」という事に衝撃を受けておりました。もはや「キャンディ」の漫画を知らない人間にはさっぱり訳が解らない説明になっています。(笑)が、朝子というヒロインは「顔で恋に落ちる」のではなく「新しい彼氏と幸せになった段階で、直ぐ側に近づいてきている筈の元の彼氏の事は忘れてしまって全く気がつかない」状態に陥ってしまう、そこがキャンディとの一番の共通点であったりするのでした。

朝子にとっての大恋愛(大阪)、亮平にとっての恋愛(東京)

 映画は朝子と麦の衝撃的な出会いから、麦の自由奔放な振る舞いに朝子が振り回され急に麦が朝子を置いて何処かに放浪しに出かけてしまって二人の恋は唐突に終わる、というのが序盤です。それから舞台は東京に移り、関西から東京に赴任してきた丸子亮平(東出昌大)が中心になって進んでいくようになります。んで観客は(朝子の過去を知りながら)亮平が訳ありの朝子に惹かれていく様子に付き合っていく。この映画実質は「男の為の少女漫画チックなメロドラマ」なんですね。亮平の周囲には他にも朝子の東京で出来た友人で亮平を密かに想う鈴木マヤ(山下リオ)亮平の会社の後輩で後にマヤと結婚する串橋(瀬戸康史)が登場します。亮平と朝子が始めて出会った時、朝子は当然のごとく昔の恋人とうり二つの亮平に驚きうろたえてしまい、それが亮平に強い印象を与え、彼女の事が気になっていく。もうこの辺から映画の真の主人公は亮平じゃんかになっていきますが、私にとっちゃこの映画を振り返ると「序盤を過ぎて亮平/キャンディだとアンソニーに相当するキャラクターが中心になっている」みたいに感じてしまってなんだかヘンな気分に陥るのでした。アンソニーってのはキャンディのローティーンの頃の彼氏で、正義感に溢れ周囲の女性達にはモテモテなのに質実堅実な貴公子。でも将来設計としては地主クラスの農家の御曹司で早世してしまってあっさり「キャンディ」の物語からは去ってしまうのですが。亮平の職業は酒造メーカーの営業ですが営業は営業でも酒造りの工程において農家と交渉する仕事の方が元々大好きって設定でそこもアンソニーっぽいです。もしやコレはアンソニーの逆襲なのだろうかっ、と東出昌大観ながらずっと頭の中に渦巻いていました。(笑)

東京の友人、大阪の友達

 んで、朝子の大阪時代、前彼の麦とも共通の知り合いなのが朝子の大学の同級生である島春代(伊藤沙莉)と同じく同級生で麦とも親戚関係にある岡崎(渡辺大知)です。春代と岡崎は映画後半にも登場しますが、彼らの運命の対比があまりにも残酷なので、コレに引っかかりを覚えると観る人が尚更困惑するのと朝子がやらかす後半の変節ぶりへの不信感が一層増すという不気味な効果を与えているのも鑑賞ポイントかもしれません。春代は自分は朝子ほどは可愛くないがその分コミュ力と人を見抜く力にプライドを持って常に堂々としている姿と、対する岡崎の子供っぽいだけではないマザコンぶり(田中美佐子演じる母一人子一人の母子家庭)も大阪部分ではいきいきと描かれているので私自身顛末はかなり寂しい気分になりました。しかしながら一日経ってみると「でもキャンディに登場する男女で一番性格の良い二人(ステアとパティ)は結ばれなかったわぁ、それに岡崎くんはお母さんが一番好きだからアレで良かったのかも・・・と一人で納得してたので、私の中の「寝ても覚めても」=「キャンディ・キャンディ」は止まらないのでありました。

キャンディへの「逆襲」

 原作、脚本、監督自身は「キャンディ」なんて漫画に全く影響受けずに映画製作した可能性が十二分にあるのでw(ただし年齢的に製作サイドはキャンディのアニメ等を子供の頃から知っている層ではあります)、「なかよし」よりは「少女コミック」ぽい少女漫画を連想する観客がいてもよろしいですよ、そりゃあ。ただ余計な事を付け加えると「キャンディ」に代表される70年代少女漫画の中には「女の子が自立しすぎるとオトコ運が悪くなるので適当に切り上げて王子様と結ばれろ」という隠れたメッセージが有りました。だから「なかよし」連載時に読んでいた「キャンディ」の愛読者の大半にとってキャンディって「不良のティリーと分かれた時点で物語は実質終了、後日談で幸せになる」漫画として最後に完結しました。70年代黄金期の少女漫画の中でも「キャンディ」って熱狂的な男性ファンがいる事でも有名なんですが、私顔は同じ系統の美形のまんま熱血優等生からやんちゃな不良青年へ気を移し最終的に年長の金持ちの嫁になろうとしているキャンディに生臭い女の欲望丸出しな姿を見いだしていたので20代に成長した段階ではヒロインとしてのキャンディにちょっと引いておりました。その頃はバブル絶頂期でもありまして、大人になる事と男を選ぶ事ががっちりとリンクする行動になっているのは結構しんどいものだったりしたのです。どんなタイプだろうがどっかで自分自身の「打算」がそこに見え隠れするもので、ソレが頭をよぎって悩み始めると止まらない。だから朝子が麦と再会してああいう行動に出るのは私的にはさほど違和感が無くその後しばらくして岡崎の家に見舞いに行き岡崎の母との会話で勇気を出そうとする朝子の姿にもとりあえずもう大人なんだから自分で落とし前を付けようって感じだったので、まあ良かったかなあと。ティリーと分かれたキャンディが徐々にさばさばしていくのと変わらないようなぁ(笑)。とは言え男性観客からすると麦の再登場してからの展開はブレードランナー 2049 (オリジナルカード付) [AmazonDVDコレクション] [Blu-ray]でのライアン・ゴズリング気分になりそうな程、キツいもんがあっただろうとは思います。麦曰く「お前(亮平)はクローンだから役目終了」てなもんよね。 

キャンディ・キャンディ 全6巻文庫セット

キャンディ・キャンディ 全6巻文庫セット

 

  幼い頃にキャンディが憧れた丘の上の王子様も「だからさあ、彼奴ら(アンソニーとティリー)はクローンでプロトタイプは俺」で再登場に映った読者が特に男子達には多かったのかもしれないわぁ・・・て「寝ても覚めても」観た翌日に思い至りました。彼ら案外ショックを受けていたりして。TVで人気の林先生は「キャンディキャンディ」の漫画がお気に入りなんだそうですが、林先生自身は優等生のアンソニータイプから一発当てたいギャンブラーのティリー、そしてアードレーのオジサンみたいなフツーの金持ちになってバブル時代を駆け抜けたのであって、キャンディ推し以外に男子では推しキャラは存在せず「キャンディが寄ってくるような自分にメタモルフォーゼしていくっ」という戦略に行ったみたいです。でもそんな無茶するキャディファン男子ばかりではないはずなので。「キャンディ」男子読者にとっての推しボーイキャラは一体誰が一位になるのだろうとは気になります・・アンソニーってそんなに重要だったのかと「寝ても覚めても」観て私一人で勝手に唸ったのでした。

 

 

 

 

 

 

 

お祓いされる女⑥ 「スウィート17モンスター」のヘイリー・スタインフェルト

 

 原題の「Edge of Seventeen」のままの方が

 この映画の場合は良かったんじゃないんですかねっ。第一に「スィート17モンスター」じゃ言いずらいし字面が良くないよ。なんでコレなのかな?としばし考えたのですがおそらくタイトル決めた人は主人公のネイディーン(ヘイリー・スタインフェルト)を一種の悪女、それもド天然の・・・に捉えていたのかもしれません。興行収入はそこそこでしたが批評家にはウケてトロント映画祭では観客賞を取りました。今の日本の女子高生からみたらどんな反応なんでしょう・・・となるのは、今どきの日本の十代を取り巻く環境から見ればヒロインの行動は痛いというよりはかなり危なっかしく、よくこんなんでどっかのオジサンや不良男に騙されたりつきまとわれなくて済んでんなあ、と驚く事も多いからです。よく考えたら地雷原を運良くくぐり抜けて少女が大人の女性になっていく物語が存在しているのがハリウッド映画の強みの一つかもしれません。制作者のジェームス・L・ブルックスはオスカー作品賞も手がけたハリウッドでは超有名プロデューサーで脚本監督のケリー・フレモン・クレイグのデビュー作。女性監督ですが彼女を取り巻く三人のイケメンであるネイディーンの兄(ブレイク・ジェンナー)、同級生のアーヴィン・キム(ヘイデン・セットー)、ネイディーンが片思いするニック・モスマン(アレクサンダー・ヤルヴァート)の描き分けが秀逸でした。このおかげでネイディーン担任教師ブルーナー(ウディ・ハレルソン)の親父な個性も活きるのさ。

昔、私の知ってた娘がネイディーンそのまんまだったの

 彼女は17歳ではなかったんだけど、ネイディーンと同じように兄貴が居て彼女の家族仲良くて多少ファザコン気味だった。そのおかげでどうして口を開くといつでも下ネタ全開になるのかだけは謎だったが。ネイディーンも毎日のように親友クリスタ(ヘリー・ルー・リチャードソン)と下ネタトークばっかりしてて学校では当然浮き上がっている。彼女のクラスメート大半に言わせると服装がまずダサいし何より子供っぽいらしい 。ネイディーンのお気に入りのスタジャンは男っぽいというよりまるで小学生の男子がカッコ良い~と喜びそうなワッペンがいっぱいくっついているヤツ。彼女にしたらそれはポップでオシャレなスタジャンなんだけど周囲には伝わらない。ネイディーンは自分では他の平凡の子達とは違う個性的なセンスを持っているという自負があるのでソレを解ってくれそうな(学校でも超然とした雰囲気の)ニックに憧れていて、同じクラスの優等生だけどもやや気弱なオタク気味のアーヴィンと仲良しなのだ。彼女の環境に何か「闇」が生じたとしたら13歳の時に父親が突然死したこと、そして一つ上の兄が親友のクリスタと電撃的に交際を始めたてことさ。

ひたすらに「明るいだけの家族」にだって闇もありゃ危機もある 

 父の死後一家の経済を支えている母(キーラ・セジウィック)はまた自分の新たなパートナー探しにも必死。んである日泊まりがけのデートに行くために家を一晩開ける事になってネイディーンと兄ダリアンと二人で留守番するんだけど、お互いに友人を家に夜遅くまで引き留めて競い合うように飲酒して騒ぐ。んでクリスタと一緒に一晩飲みあかして二日酔いになったネイディーンはクリスタとダリアンが一緒にベットインしているのを目撃して激しいショックを受けてしまう。兄貴の方が学校でも優等生でしかもイケメンなんでとっくに彼女がいてもおかしくはなかったんだけどネイディーンにとっては親友の裏切りだしキモくて受け入れられないのだ。コメディタッチで軽く展開しているように一見みえるけどかなり異様なんだよこの設定。クリスタは「何だか解らないけど彼とそうなってしまったし私は交際を止めない」てネイディーンに告げるしね。以前はネイディーンと一緒に妄想過剰な下ネタトークや兄貴への悪口言っていた彼女は一夜にして自分よりはるかに「大人の女性」になっちまった。その夜以来ネイディーンには完全に居場所がなくなってしまう。

「妄想」から「クリアすべき課題」にシフト

  というわけでネイディーンが一見暇そうな教師のブルーナーにしか相談出来なくなってしまうのが映画の冒頭部分。USの高校では教師と生徒が一対一でカウンセリングするのが普通の事なのかは知らないが、誰も私の話を聞いてくれないので先生にひたすら話してみたという女の子の話は日本でも聞くので偶に居るのだろうこの手の娘。家に帰ってもやることが無いからアーヴィンに電話してみたり、彼の住む豪邸で遊んでみたり夜の遊園地に行ってデートしてみたりする。しかしネイディーンって娘には異性に警戒心がまるっきり無い。何故にこれほどまでに無いのか?家族は母以外に死んだ父と兄貴しか存在せず昔っから自分に危害を加える危険な異性というものを知らないからなんだろうか。でも実際のところネイディーンはどっかで実の兄貴の事は「警戒している」んだよ、無意識のうちにだけどね。ネイディーンは本来思春期ならば当然通る「男親を忌み嫌う」時期の真っ最中なんだけどそれを兄貴へ向けている。ただそれは一個上だけの兄貴当人にはもの凄く負担なんだ、だって自分だって妹以上に内心悶々としてるのだから。でなきゃ妹としょっちゅう一緒にいる幼なじみの女の子とどうしても付き合いたいっ、て思い詰めたりなんかしないよ。この兄貴どうして自分の母親と妹を守る事ばかり気にかけて自分の将来は後回しなのか?って所は気にはなるんだけど・・・(やっぱり女性からみた男性像だからなのかな)でも意外とこの手のタイプの若い男の子は多いとは私も思うんだ。んで、彼らは恵まれていない部分もあるのにあまりソレについては悩まない。彼女やら家族やらを起点にして将来設計する気しかないって分気楽で居られるというのもあるのかなあ?

ネイディーンをとりまく男子

 思春期前期に父親が急死してしまったせいで、かなりのファザコンになってしまったネイディーンの事を気に入る男子は何故か兄貴、というより父親そっくりなタイプだったりするのですよね。自分にちょっかい出してきて甘えて振り回してくれるのが嬉しいってヤツ。アーヴィンて男の子はアジア系のお坊ちゃまで両親共働きで夫婦二人で出張に出かけるのに一人で数日留守番してても大丈夫なくらいに自立している。デカい屋敷に住んでてジャグジー温水プール着いているとか。学校にいるときはオタクのような地味で内気な振る舞いをしてるけど実態は王子さまです、でもネイディーンには「あなたってgentle/おじいさんみたい」と言われちゃう。(字幕では確か年寄りとかジイサンみたいって訳で出てました。今の米国だとホントに十代の男の子へgentleて言うとショックを受けるのかもしれないのですが)ぶっちゃけ真面目な兄貴にも人種が違うだけでそっくり。彼女が片思いしているニックに至っては、実は三人の男どもの中では最もオタク度が高くて内気で子供っぽい。不良ぶってるけど不良でさえない。だから彼女はもの凄い地雷源を知らない間にすり抜けて大人の第一歩を踏み出して映画は終わります。殆ど些細な葛藤で丸く収まるのが奇蹟のよう。しかも兄貴と妹は互いに協力しながら二人とも父親不在の危機を乗り越えていたというのも最後に理解が出来るという。それから父親の代わりを堂々と担うブルーナー先生とかね。まあこんなの今の日本じゃ有り得ないわゎぁぁ・・・って感動したりもしますが、同じような兄貴と妹の家族ドラマでヘレディタリー 継承 [Blu-ray]なんて映画も最近のハリウッド映画のヒット作にはまた有りますから、家族の持つ明るい希望とどす黒い闇との対比と双方距離の「近さ」にもまた私は思いをはせるのでありました。

 

 

 

 

 

2018年に劇場で見た日本以外映画 ③

エースを狙え!を覚えているかい? 

 日本語吹き替え版は既にあるようですが、スティーヴ・ガレルの声は中尾隆盛さまではないのでしょうか?是非お願いしたかったのよっハーヒフヘホ ー。だってこちとらTVアニメ出崎統版の「エースをねらえ!」で育ったんだもん。そこのエピソードの一つにこの映画の男女テニス対決をモデルにしたのがあるのよ。映画は2018年度観たヤツではアイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル[Blu-ray]と並ぶ爽快感がありましたw。ホント言うとどっちも爽やかスポ根ものだったです。まあ私にとっては、ですが。渋め好みの男性むけにもボルグとマッケンロー テニスで世界を動かした男たち (ハーパーコリンズ・ノンフィクション)の映画化の公開がありそっちも観に行きましたが、シニア夫婦でいらっしゃった二人組、奥様だいぶ寝ておられました。

  この映画ヤングなハン・ソロじゃないじゃん、ベビーブーマー向けじゃん。だから最後に寂しくなる映画です。ベビーブーマー世代の夫がかなり観た後にへコんでいて自分との世代の違いを実感しました。「スパイダーマン/スパイダーバース」の監督からL・ハワードに交代したのは当然ちゃ当然だったのでしょうが脚本段階で気がついて宣伝の戦略とかも少し考えた方が良かったような気も。(その辺日本の洋画配給会社の宣伝は良くも悪くも宣伝手法が細か過ぎw)んでL・ハワードの娘さん最近人気がありま 

 して主役のクリス・プラットとの息もぴったりと思いきやもはやこのシリーズはブライス・ダラス・ハワードの人気が引っ張っていると言っても(少なくとも日本のファンの間ではね)過言ではないくらい。ヴィレッジ [DVD]の時には大草原の家のローラみたいな感じで幼かったイメージだったですが前作のジュラシック・ワールド (吹替版)では久しぶりにこんな粋な感じのキャリアウーマン観たわ~って思いました。おかげで「ジャングルで恐竜に襲われてもハイヒール脱がないのかよ」な批判も一部ありましたが、この映画でも都会でのオフィスワークは常にヒールを貫いておりましたw。そしてもう一人旬のハリウッド美女といえば↓のエミリー・プラント。

 何故だか日本でもジワる感じのヒット作になったようです。同じ週に観たスカイライン-奪還- [Blu-ray]とは全くテイスト異なるのですが、製作における戦略に共通点があるといおうかよく考えてみたら同ジャンルw。はたしてどっちも好きっていうお方は多いんですかね。(やっぱり少ないのかな)プーと大人になった僕 MovieNEX [ブルーレイ+DVD+デジタルコピー+MovieNEXワールド] [Blu-ray]はエミリー・プラント版の「メアリー・ポピンズ」と同様の自由主義経済社会におけるワークライフバランスを強く啓蒙するいわゆるディズニー「ど真ん中」映画でした。んで自由主義経済社会における個人にとっての結婚の幸せとは?を説くのがクレイジー・リッチ!ブルーレイ&DVDセット (2枚組) [Blu-ray]なんですが、りっちがリッチよりも立地と素早く変換される日本だとこの幸せのハードルは(いろんな意味で)高いようなぁ。

  んで、公開2週目に息子と一緒に行ったらウチの子以外は高校生以下の観客ゼロで息子自身は思わぬゲイエピソードにやや耐えられず、貧乏強請を始めるのでいろいろ誤解されるからヤメテヨ~になった皆様ご存じでしょうっボヘミアン・ラプソディ (字幕版)

。脚本的にどこが破綻しているかもよく理解できずにフツーに面白かったヴェノム ブルーレイ&DVDセット [Blu-ray]ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生 エクステンデッド版ブルーレイセット (2枚組/日本限定メイキングブックレット付) [Blu-ray]ね、でも私前作劇場で観たのに紹介すっとばしても気がつかないくらいにこのシリーズに興味ない・・・けど息子は大好き♡だから責めないでw。怖いんだけど日本の家族状況の方がより身につまされるのか、感想がどこも家族大変っすよね参考になりますってついなるのがヘレディタリー 継承 [Blu-ray]・・・っとこれが2018年度の秋口にかけて劇場でみたヤツでーす。

 その中のひとつ、セドリック・クラピッシュの映画は今のフランス映画の中では取っつきやすくて好きなタイプです。主人公がいつもちょっとだけ鼻につくような気もしないではないですがw、世代が近いからかな。今回のワイン農園の相続を巡って右往左往する3兄弟の長男についてもやっぱりクラピッシュの映画に出てくる「ちょっとだけナルシスト」の駄目男です、それでも彼なりに苦闘してきた子供時代とヒッピー風を装いつつ要領もそれなりに良くて、でも少し偏屈で頑固という性格が一方で兄弟やパートナー&子供をいつも気にしている故なんだと解ってくるのでまあ最後には応援したくなりました。鑑賞後は爽やかだけど、あっさりした印象の所為なのか「子供が皆可愛かったわね」と感想を延合うシニア女性達に出くわしました。おばあちゃんの映画ファンは面白かったけど何といって良いか解らない映画だと「登場する子供可愛い」の感想で済ませる傾向があるみたいです。

 

 

 

 

2018年に劇場で見た日本以外映画 ②

キム・ミニの声にひたすら魅了され  

それから [DVD]

それから [DVD]

 

  ホン・サンスという監督の名前は聞いていたものの今まで観る機会を逸していたのですが、思わぬスキャンダルが却って日本の映画ファンの関心を引いたのか(ごめん違うかもしれないw)【Amazon.co.jp限定】夜の浜辺でひとり(A4サイズクリアファイル付き) [DVD]正しい日 間違えた日 [DVD]も合わせて3本観ました。しかしながら↑の映画の出来が最も日本人の感性にも合う気が自分でもして一番好きでした。ダテに夏目漱石をモチーフにはしていないのかも。ホン・サンスに限らず韓国の映画作家には海外留学経験者の秀才が目立つイメージがあり、何と無しにその傾向に反発する日本の映画ファンが多いんではないかと邪推してたんですが(笑)、今回私は「それから」を筆頭にキム・ミニの声と韓国語も分かんないのにひたすらに可愛い台詞回しを楽しんでおりました。特に「それから」のラストでタクシーから外の雪景色を眺める彼女の顔は山田五十鈴もかくやの美しさでちょっと興奮してしまいました。

ラブレス [DVD]

ラブレス [DVD]

 

 この映画も何故だか(ネット上で予告編観て気になったらしい)息子に見に行くように命令され、何故?と思いながら観に行ったら劇場は盛況で鑑賞後、こりゃあ日本人好きそうなヤツだわもっと言えば今どきのロシアと日本は市民感情的に似すぎよねぇ・・と些かウンザリした気持ちにもなる。

  ↑の映画も現代新冷戦下のロシア、ヨーロッパが舞台の映画。英国の飲んだくれ女性外交官に「ロシアってさ女の子は皆可愛いのになんで男の方は不細工ばっかなの?」って嘲られても何も言えないロシア中年男が登場し日本のオッサンにも通じるものがあって哀しくなりました。US日本とも#me too 真っ盛りの折に公開されて主役のJ・ローレンスがど緊張しながら宣伝していたのが印象に残ります。ただ個人的には「ラブレス」より「レッド・スパロー」の方が断然好き、#me too 応援します映画だよっ。それからスターリンの葬送狂騒曲 [Blu-ray]旧ソ連&ロシアもの映画を結構観てたね、2018年はこの手のヤツが皆面白かったです。

  マーク・ハミルが圧倒的な存在感で全体を引き締めるホンワカ映画の↑やらD・デイ=ルイスがいつまでも繊細過ぎる少年のようなオッサンファントム・スレッド ブルーレイ+DVDセット [Blu-ray]、同じく同傾向のデッドプール2 3枚組ブルーレイ&DVD [Blu-ray]と男性主人公のハリウッド映画は平常運転かもって気がしました(笑)。その中でも一番ヒーローとして感じが良かったのはやっぱりビューティフル・デイ [Blu-ray]でのホアキン・フェニックスですかねぇ。

エリック・ロメール コレクション 海辺のポーリーヌ [DVD]

エリック・ロメール コレクション 海辺のポーリーヌ [DVD]

 

  2018年にやっと観たリバイバル映画として取り上げるのを忘れとりました。この映画については改めてどこかで書きたいです。それから同じく海洋ものとしてMEG ザ・モンスター ブルーレイ&DVDセット (初回仕様/2枚組/ステッカー付き) [Blu-ray]も親子三人で観に行ってあのJ・ステイサム主演であのヒロ様の熱演があるからって映画全体の面白さの保証は出来ないのだと深く反省しましたぁ・・・。ちなみに観たいって言ったのは夫ですから。

 

 

 

 

 

 

 

2018年に劇場で見た日本以外映画 ①

ここまで来るとようやく駆け足でいけそう

 私の2018年初っぱなはスター・ウォーズ/最後のジェダイ (字幕版)で明けました。年末に観た人も多かったようですがコレは年明けにしといて正解だったみたい。んで2018年で最初に衝撃だったのはやっぱり 

デトロイト(字幕版)

デトロイト(字幕版)

 

 だったかな。オープニングからデトロイトの暴動の話を主要な登場人物のプロフィール紹介を交えながらいつのまにか舞台が「ホテル」に移っていく手際が巧みで好きでしたよ。私と違って分かりずらいと思った方はおそらく出てくる黒人のお兄ちゃん達がほぼ全員カッコ良かったせいなのではないかと思う。(思わずジョン・ボイエガよりアナタがアナタがガードマンになってって言いたくなるような二枚目がいたw)だからアフリカ系の公民権運動家のじいちゃんがこの映画に不快感を示した話になるほどそう思うのかあって。でも人種を越えて「若い世代」がオトナ社会の人種差別の壁にぶつかって苦しむ一夜を描いた映画だから。なるべくきらっきらな若者達が犠牲になる姿を強調したかったの解る気がする、女性の監督だからね。んでダークタワー (オリジナルカード付き) [AmazonDVDコレクション] [Blu-ray]なんかの後からハリウッドものはアカデミー賞がらみが続くようになります。

 だとか、

 ですね。それぞれ感想はいっぱいあるんですが、まず「スリー・ビルボード」のおっかさん(フランシス・マクドーマンド)には娘の敵、私まだ家の近所にいると思うし焦らなくても直ぐに決着つくよ、と言ってあげたいですw。んで「シェイプ・オブ・ウォーター」なんですが(既にいろんなトコで個人的に発言してますが)半漁人がとにかくカッコ良いのでヒロインのサリー・ホーキンスが羨ましいという感想しかなくw。「美女と野獣」の物語に以前から違和感を持っていたというギレルモ・デル・トモ監督とは私意見違うわあとしか言えません。美女と野獣だったらやっぱりディズニーアニメ版の美女と野獣 (吹替版)が一番「映画全体に暴力性が高くて」好き♡な私。それと冒頭のシーンではアラフォー女性が「いつか出会える王子様の為に」女磨きをしている・・・という描写にしか見えなくてぇ。朝方に一発軽く抜いとく方が仕事もはかどるって事が女性の場合あるのかなあ?という些か疑問は沸きました。2018年は「シェイプ・・・」後

 ↑の映画を観て勢いよくパンフレット購入して息子に鑑賞お奨めとプッシュしたまでは良かったのですが、その直後に入院してしまいました。2週間後に退院したら話題作目白押しで出てくる衣装が好きだったスピルバークとCG部分のカップル達が可愛かったスピルバーグペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書 [AmazonDVDコレクション]レディ・プレイヤー1 [Blu-ray]。そしてインド映画のレベルの高さに改めてビビったのがダンガル きっと、つよくなる 〈オリジナル版〉(字幕版)でありました。それから君の名前で僕を呼んで(字幕版)アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル[Blu-ray]を鑑賞、合間に「おっさんずラブ」をTVでちょこちょこ観てました。グレイテスト・ショーマン (字幕版)が近所のシネコンで再上映され春休み息子に連れてけと言われて観ました。USの批評家ウケはともかく日本人にヒットしたのはよく分かるわ・・・って一人知ったかぶりしてたらUSでも大ヒットだったのね。息子はまた大人女性的女優枠ではジェシカ・チャステイン推しなのでモリーズ・ゲーム [Blu-ray]も観に行くように言われました。私以前から韓国の役者さんは演技の感情表現に国民性の違いがあるから今イチ上手い人と上手く無い人の区別がつかん・・・て悩んでましたが、

タクシー運転手 約束は海を越えて [DVD]

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 さすがにソン・ガンホだけは滅茶苦茶上手いというのは私でも解ります。この人が虚脱状態になりながらウドンすすっている姿を見ると光州事件の複雑さが身に迫ってくるようでした。 

 

Vision

Vision

 

  何が危険(ヤバい)かって、↑のような映画見ても一向に退屈に思わないタイプの観客にいつの間にか私自身がなっていたという事実です。森の木々の音や雨の音、風の音、過疎の山村のジイサンが木訥と語る昔話が絶妙な編集で小気味よいリズムを刻むので、もうこれだけで快楽。実を言うとこの映画の前に見たアベンジャーズ/インフィニティ・ウォー MovieNEX [ブルーレイ+DVD+デジタルコピー+MovieNEXワールド] [Blu-ray]では上映中に熟睡してしまい全く内容を掴めなかったので「ドクター・サウスってジョシュ・ブローリンだったの解らなかった」という感想しかないのとエラい違い。


映画『花咲くころ』

 また2018年度の初っぱなは女性監督による女の子映画の秀作が話題になりましたが、私はこの↑の映画とそれからなんと言ってもRAW 少女のめざめ ブルーレイ+DVDセット [Blu-ray]をお奨めします。

 

 

 

 

2018年に劇場で見た日本の実写映画 ③ (で、煙草/ジェンダーに関する映画)

日本の若手の二枚目には「煙草も持たせる」以外にオトナの芝居が無いの?

 って言いたくなるような日本映画が2018年には続けて話題になりました。そのうちの2本は原作小説の作者が女性なのでホントにそれしかないのかもって一瞬落ち込みそうになりますが。とはいえ制作側にはそれなりに戦略の違いがあって日本映画に文句言いたいフェミの観客にはポイントになるかも。(と煽ってみるw)

 

孤狼の血 [Blu-ray]

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 所謂近過去もの映画(実は長年現代劇と時代劇とレトロもの違いは何ぞやという面倒な議論もあり好い加減この手の映画のジャンルが確立されつつあるのは喜ばしい事です)というヤツですし、タイトルにも関わる事なので松坂桃李喫煙者になる経緯がドラマチックに描かれているのも当然ちゃ当然w。主役二人が一番芝居するシーンでどっちも影になっててほぼ画面に出てこないも同然だったり、ラスト近くの「墨塗黒ペン先生による熱血指導日誌」を手に涙する1980年代の共通一次世代の若手刑事だったりする描写はとても気に入りましたっw。もうそれだけで露悪的なピカレスクロマンお腹いっぱいなので、さすがに近未来の「麻雀放浪記」とかは消化できそうにありません。

 

寝ても覚めても [Blu-ray]

寝ても覚めても [Blu-ray]

 

  海外の多くの国での公開が決定しているこの映画、煙草が主人公丸子亮平(東出昌大)の心理状態を表す重要な小道具になっています。映画鑑賞中はそれほど気にならなかったのですが、昨今特に若い女性の嫌煙感の凄さに触れる度に段々と心配になってきました。ソレこそ今どきハリウッド映画で観るスカした女優の喫煙シーン(2018年カンヌ審査員長のC・ブランシェットが演るような)と比べて遜色あるどころかむしろよっぽどマシだろって気が一方でしなくもないのですが、ヒロインの朝子(唐田えりか)の亮平の喫煙習慣についてのろけ混じりに語るエピソード等は結構炎上案件になりそうな予感。そして今現在(2020/01/25)何だか違った意味合いを持って大問題になっちまいました。悪い予感ほど当たるものです。しかしながらハリウッド洋モク系の喫煙シーンにはビジネスの香りしかないのに日本映画JT系煙草にはやたらとジェンダーの香りがするのが私は頭痛いです。日本/JTの場合は明治期から国策で専売公社だったりするもの関係あるんでしょうかw。

 

「SUNNY 強い気持ち・強い愛」Original Sound Track

「SUNNY 強い気持ち・強い愛」Original Sound Track

 

 「一見IQが低い人向けに作っているように見せて中身はIQが結構高い映画」って最近のハリウッド映画等を褒め倒す時に使われるフレーズですが、新作の日本映画についても気楽にそんな事決めつけられますか?IQ高い表現って意外と危険なモノですよ、特に観客にとってより身近でドメスティックな現代劇だと。私的な決めつけで「ジイサンが夫婦や孫連れて見に来て終了後皆で大満足する」映画、ジャンルはともかく比較的IQ高い映画、にしてますが2018年度観たヤツで該当したのが↑とインクレディブル・ファミリー (吹替版)でありました。面白かったんですが感想を言うのが難しく、安室ちゃんど真ん中世代の主婦なんかには導入部なんかは身につまされ過ぎてたようでいた。時々劇場で見かける予告編に至っては「韓国オリジナル版の少なくともあらすじ知っている筈なのにどんな映画なのかサッパリ予想できない」状態に陥ったし。男性の映画通の間では評判は決して良いモノではなかったのに、「チャラく煙草を吸う三浦春馬が登場し始めてから面白くなった・・・すずちゃんすずちゃん」などと連呼する作家(何でこんなコメントするヤツがキング・オブ・アウトローなんだよって思いましたが瓜田純士って一部では有名な人なんですね)がいたりとか・・・私から観てもまるっきりの女性映画なのに出番の少ない男性登場人物の自己主張が強くないか?とは思いました。過去である90年代中頃と2018年との描写の一番大きな違いが「2018年ではリリー・フランキーを含めて男性陣が一切喫煙しない」というのにも意外と「怖さ」を感じたもん。なんだか「俺たちは総て過去を切り捨てて生きてきてるけど、代わりに過去を抱きしめてくれてすずちゃん&篠原涼子有り難う」ってか?しかしそんなんで男の人達大丈夫なのおぉぉ・・・(;゚ロ゚)?と思っちゃう。なんせ自他ともに大根常連組とされていた役者さんが現在大変な事になっておりDVDは販売中止。しかも新井浩文のシーンは全部カット編集した上で再度発売しても元々全く問題ない内容なんで困ってしまいます。そういや映画観た直後にTV出ていた三浦春馬について「彼は二枚目なのにやたら人の良さが出てる」とか突如夫はため息つきながら唐突に言い出して驚いたことがありました。日本映画と日本の観客にとって映画がIQ高い低いとかいう事よりも予想だにしない部分で「闇」が深いってのがより重要なのかもしれません。あと敢えてネタをバラしますとですね、「SUNNY」は隠れ百合映画です。韓国オリジナル版も同様なのかまでは未見なので存じ上げておりません。